品川正治さん講演会 その4
 
■世界が注目する日本国憲法
 もう一つ、この九条二項に関しましての世界が今後どう考えるかということを考えますと、例えば、今度民主党の代表になりました小沢さんは日本改造計画の中で軍を持つけども国連軍として参加する軍を持つのだと、それは世界に対する貢献だという言い方をされております。しかし国連軍というのが国際法上一番難しい問題なんです。国連軍が規定されたのは、1945年日本の終戦の年の6月なんです。原爆がなかったときなんです。8月に日本は広島長崎で一瞬のうちに二十四万の市民の命を奪われたわけなんです。国連軍はその前に作られているんです。
 そうすると国連軍は核武装するのかという問題が起こるわけなんです。今国連の常任理事国の5カ国は核を持っております。それ以外にイスラエル、パキスタン、インドが核を持っております。イスラエルというのはパレスチナ問題の発祥の地といってもいいくらいの地域です。インドとパキスタンは独立以来カシミヤ地区をめぐって争いを繰り返している国なんです。そうすると国連軍は核を持っている地域には介入しないのか。できないのか。そういうダブルスタンダードがあるのかという問題を、一言どこかの国が言い出したら、国連軍というものの国際法的な問題は非常に複雑な論議を呼ぶことは当然なんです。
 

 核を持つ地域に関しては、核武装せざるを得ない。いや、やられる前に先制攻撃をしないといけないという、そんな理屈でもし国連軍が世界の紛争に介入するとすると、ど偉い問題になります。それとも、これは絶対あっちゃ困る問題なんですけども、もし先進国で広島長崎のような目に合った場合、その国の世論がどうなるかというのは、二度と戦争しないという世論に変わることは必然的です。

 そういう意味では21世紀の問題として見る限り、遅かれ早かれ日本の九条二項というのは、これ以上のものはないという話になってくる可能性がある。

 それはいま日本しか持っていない。それを離せといわれている。これが今の現状なんです。私は戦争体験という格好で自分の戦争体験をお話ししましたが、戦争というのは一体何か。
 私は孫娘を、両親を亡くしましたから、育てて居る訳なんですけれども、自分の戦争体験だけでは話は通じません。なぜなぜなぜの連発になります。したがって私自身としては先ほど言った戦争を起こすのも人間なら戦争をくい止め、それを起こさせないように努力できるのも人間だということ、これは通じます。
 もう一つもっと論理的に説明せざるをを得ないので、私は戦争というものを、3つの大きな意味で特徴づけております。
 ひとつは戦争というは勝つためという「価値」があらゆるものに優先する。それを人間として承認できるかどうか、普段自由だとか人権だとか言っております。しかしいったん戦争という状態になれば、その話は勝ってからだという形になってしまいます。年配の方はご存じでしょうが、欲しがりません勝つまではというのが戦争中のわれわれの合言葉でした。勝つことが最高の価値になる。もっとも大切な命の価値さえ勝つためには敵の命はもちろんのこと自国の国民の命も犠牲にせざるを得ないというのが戦争の状況なのです。
 2つ目の問題は戦争というのはあらゆるものを動員するというのが戦争です。戦力を投入するのは当たり前のことです。労働力も動員します。年配の女性の方は、全部女子挺身隊だったのです。家庭の主婦である前に女子挺身隊として軍需産業を支えたわけのです。あらゆるものを動員する。学問も動員するのです。大量殺人兵器というのがどんどん生まれてくるのも、科学を動員し医学を動員し、生理学を動員し、そういう結果そういう形になっている。
 もう一つの問題は、戦争になれば戦争を指導する部門が最高の権力者になるわけなんです。勝つためには他の勢力とは全く均衡が崩れるような形で戦争指導部門がその国の指導部門になるわけです。
 この3つが戦争というものを定義した場合忘れちゃならないことなんです。
国家総動員体制の集会の様子。全てを戦争に向けさせる体制が社会船体にできます。国民同士で監視し、自由な意見がいえない社会。体制批判も許されません。