都市計画について
 
今週のゲストは、高知県都市計画課の豊後彰彦さん、須崎商工会議所の松田健さんです。今日のテーマは「都市計画について」です。都市計画と言われましても、多くの市民には普段は関係ありません。道路計画で立ち退きになったり、区画整理されたりしますと、関心が高まります。
 私は「都市計画は、社会開発事業である」と思います。「どういう都市に住みたいか」という住民の意志により都市計画は計画されるものだと思います。従来は行政主導でしたが、そのありかたは今後変化するのでしょうか?
松田 私も「どういう町に住みたいか」という考え方には同意します。須崎でも「桐間都市区画整理事業」を展開中です。高速道路近辺の40ヘクタールが対象地区です。そこの区画整理事業と、20年前に済んだ「緑町・西崎区画整理事業」を結ぶ弧線橋という結ぶ橋の工事がありました。その橋の担当を豊後さんがされていました。「みんなでまちをどうするか」。大きな市街地が須崎市に2つ出来ることに対する市民の期待度は大きいものがありました。地元新聞の記事でも大きく「須崎の最後の砦」と表現されていましたから。
 ところがその橋に対して周辺の人達は理解をしていませんでした。公共がこしらえようとするだけで、周辺住民のコンセンサスは得られてはいない。豊後さんにみんなが関係した「ワークショップ」を提案いただき「改めて見直そうではないか」となりました。
 10回以上ワークショップを開いていただきました。良い方向へ向かっていっています。
ワークショップの開催は良く聞きますが、冷静な議論になりましたか?県と住民が対立するとか、そういうことはなったのでしょうか?
豊後 当然意見の違いはありました。100人いれば、100通りの意見がありますから。
私などの感覚からしますと、計画が発表され図面になりますとここが道路になりますと説明があります。住民ヒアリングもその道路とアクセスしますか、しないことにしますかという小さな事例のヒアリングに終わりますね。どうしてここの地区へ道路がくるのだろうと言う理由はわかりませんね。
豊後 どこに道路をつくり、どこへ町意をつくるのかという段階で住民に参加していただくのが原則です。私が仕事して関わった時には、既に都市計画決定をされていました。その根本をどうのこうのは動かすことができません。地元の反対意見は強かったですね。1担当として本気でやってみようと決意しました。手法としてワークショップというのがあるからやってみようと思いました。
ワークショップばやりですが、うまく行く場合と、うまくいかない場合がありますね。
豊後 「意思決定過程に。自分が参加することによる受容的な合意」したということが、ワークショップの目的であると思います。
意思決定の合意形成段階に、自分が参加したことが、大事であると思いますね。
豊後 それがワークショップの本質なんですね。
しかしそれが曲解されていまして、「みんなの意見を聞いたから、これで行きます」と強引に行政が持って行く事例が多いように思いますね。
豊後 それは偽者のワークショップだと思いますね。
そうですね、偽者です。
松田 とにかく専門用語や、プロ用の用語は使用をやめて、専門用語をおんちゃんや、おばちゃんらあにわかる言葉で説明する。「こんな形がええかよ。こんな色はええかよ」と言って「わしはこの色がえい」と合意形成が得られたら、反対者も満足しますね。
だいたい「わしはそのはなしを聞いちゃあせざった」と言うことで反対運動が形成される場合がありますので。「なぜわしに声掛けざったぜよ。あいつに言っておいてからに」という事例が多いです。後で言わんとこの場で言わないといかん。というルールが必要でしょうね。
豊後 なかなか発言できん人もおります。後であれはいかんと他所の場で言われる人もいます。それをうまくワークショップの場で発言いただく。それも技法ではないかと思います。

ワークショップの話は住民参加の段階があります。形式的住民参加。形式的参加機会増大(懐柔策)とありますね。そのうえに「パートナーシップ」があります。

これは高い壁で難しいと思いますね。情報公開というのは、「意思決定の過程、議論の過程もすべて原則公開」なのですね。

県の人はそれをわかっていない人が多い。情報公開の裁量権は部署長にはありません。全然情報公開のわかっていない人が多いのですね。必要以上に公開を恐れる。「自分も隠し事はない。全部裸になるから、みんなも裸になろう」といえば良いと思いますね。

 
豊後 誠心誠意取り組むことですね。以前にも申し上げましたが、ワーショップは技術ではありません。「意思決定の過程に参加したことによる受容的な合意」をワークショップの本質であると思います。参加すること大事であると思います。しかしすべて成功したわけではありません。自分自身が怖がったり、大勢の人に声をもっとかければ良かったと反省しています。一番最初には土木用語説明から入りました。「ピア」とか、つい使ってしまいます。ピアと言うのは橋の橋脚です。専門用語をつかわず説明しました。
 それから大事な事があります。「ごめんなさい。既に決まっていて動かせない計画部分はこうです。」と率直に説明して理解を求めます。橋脚の位置なんかは、関係機関と協議して動かせません。ただ橋の色とか形はみなさんで決めていただけます。と「出来ること。出来ないこと」を説明しましてスタートしました。

それは松田さんもワークショップに参加されどうでしたか?
松田 楽しかったです。土木用語であったり、作業分野、出来ること、出来ないことも説明いただいたから、地元の人も参加しやすかったです。(ワークショップ)で旗もつぜ、マジック持つぜの作業ですすめました。近所の人同士だと話しやすいです。県庁の人と向かい合うといえない事も、おんちゃんどうし、おばさんどうしだと言いやすい。みんなで橋の色まで決めて楽しいものでした。住民参加で公共工事をいただいたということは須崎市民は嬉しかったと思います。
その場で出尽くしたらいいのですが、あとから実はわしはこう思うとか言われたら、合意形成は難しいでしょうね。
豊後 会の後に不満が残らないように。場作り手法には工夫いたしました。
そのあたりは大変であったと思います。事務局方の許容量があるからでしょう。
豊後 ワークショップも「設計」をします。2時間なら2時間の。それは随分苦労しました。自分なりに工夫はしましたが・・。
時間制約もあって大変であったと思います。先ほどの話で「ここからここまでは計画決定されているからいじれない。でもここから先は自由に議論してみんなで決めましょう。」と言うのは良い喋り方だと思いました。
豊後 意見が一致しないのはあたりまえですね。橋のすぐ近くの人と、町おこしをされている少し離れた住民の人の議論は、わたしも司会を忘れて聞き惚れていました。
そこで議論を出し尽くしてから合意が出来れば、地域をあげて事業には協力すると思います。
豊後 その後の経過は今は担当を離れていますので、細かいことまでは把握はしていません。今のところ反対が持ち上がったような話は聞いていませんので、うまく行っているのではないかと思います。