キャリアコンサルタント協会の設立趣旨と経過
 
今週のゲストは、「キャリアコンサルタント協会」の 溝渕義雄(理事長)さん、 山本隆弘(理事)さんにお話をうかがいます。テーマは、「キャリアコンサルタント協会の設立趣旨と経緯」についてです。

おはようございます。それでは設立の趣旨についてお話をさせていただきます。
終身雇用制という言葉をきいたことがあるでしょうか。これまでは、一度会社に入りさえすれば、定年に達するまで雇用が守られてきました。また年齢とともに昇進して賃金も上昇し生活は保障されてきました。

昔、植木等が「♪サラリーマンは〜気楽な稼業ときたも〜んだっ♪」というセリフで一世を風靡したように、会社は、従業員を"手厚く手厚く"守ってくれていました。ちょっと例えが古かったでしょうか。

山本隆弘さん 溝渕義雄さん
いやー私はわかりますよ。でも、そうですねー、若い人達にはちょっと古かったかも…この放送を聴いている人は若い人が多いもんで…
ははー!すいません!。朝からあまり難しい話しをしてもいかんと思いまして(土佐弁がついついでてしまう)!…けど、ですね、激しい国際競争や長引く不況で、会社は定年まで従業員を雇うことがちょっと難しくなってきたわけです。
こうした中、労働者側である個人一人ひとりも危機感を持ち、何らかの対応を迫られてきたのです。
確かに最近の若者は、希望の会社に就職できても、その会社で一生やるという意識を持った人は少ないように感じますね。やはり先ほど溝渕さんが言われたような世の中の変化に若者もかなり影響を受けているということでしょうか。
 
はい、若者も影響を受けていますし、また中高年の方や女性労働者にも大きな影響を与えていると思いますよ。
これだけの不況のもと、あちらこちらで企業が倒産し、またリストラの嵐が吹き荒れる中、「働く」ということは、特定の会社に一生雇われるということではなくなってきたのです。つまり特定の会社に入ることだけを目指し、その会社にしがみつくことしか考えられなかった時代と違い、現在はどのような会社を選び、またどのような仕事をするか、どの年齢で転職を考えるかなど、選択の幅が大きく広がってきました。
確かに、選択の幅が広がってきたことは良いことだと思いますが、逆に「何をどう選択するか」がとても難しいようにも感じますが…。
はい、そこで私達の出番となったわけです。私達、キャリアコンサルタント協会は、働く方にとって、よりよい選択をするための「援助者」としてお役に立ちたいと考えています。
「よりよい選択をするための援助者としてお役に立ちたい」ということですが、具体的にはどういうことでしょうか。今度は、理事の山本さんにお話をいただきます。
はい、これからは自らのキャリア、つまり経歴を見つめ直し、将来のキャリアデザインを自らの手で描いていくことが求められます。キャリアデザインとは、どういう経歴をこれから身につけていくかという意味です。そのために私達は、その方の適性、職業能力を客観的に分析し、本人にフィードバックして自己理解を促します。場合によっては心理検査、適性テストも行います。
 
本人にフィードバックして自己理解を促すということですが、もう少し詳しく説明してもらえますか。

はい、わかりました。ご本人が今までやってきた仕事内容を洗い出してみます。
実際には、紙の上に一つひとつ文字にして書き出してみるのですが、この作業は慣れてないとけっこう難しいもので、私達もサポートいたします。

この作業を「キャリアの棚卸」と呼んでいます。ご本人の職業能力を把握する上で欠かすこ
とのできない大事な作業です。これにより、自分自身をきちんと見つめ直すことができるのです。

それを自己理解と呼んでいるわけですね。
 

はい、その通りです。このプロセスはとても大切でして、例えば、洋服を店で購入するとしても、ご自分の色や柄の好み、そしてサイズなどもしっかり把握していないと、せっかく気に入ったつもりで購入しても、その後一度も着なかったという体験をしたことがあるのではないでしょうか。自分の好みやサイズをしっかり把握していれば、こんなもったいない事をせずに済んだはずです。

新たな職業を選択する場合もまったく同じで、自己理解なしに、新たな職業を選択しても、その仕事は長続きしない場合が多いのです。そんな残念な結果を招きたくないのです。私達にとっても、それはとても悲しいことです。

なるほど、自己理解の大切さがよくわかりました。では、次へと話しをすすめていただけますか。
はい、次に労働市場や企業情報の提供を通して仕事理解をサポートいたします。職業に関する情報はたくさんありますから、そのなかから本人に必要な情報を選択して提供するわけです。
仕事に関する情報はたくさんあるということですが、具体的にどういうことですか。
はい、ある職業に就きたいと思っても、そのためには特別な資格が必要なのかどうか、どれだけ責任の重い仕事なのか、賃金はどれくらいか、企業からの求人は多くあるのかどうかなど、ご本人が志望する職業に関しての必要な情報です。私達は、仕事理解につながる必要な情報を、ご本人に提供させていただきます。

よくわかりました。
その後、啓発的経験として職業訓練やボランティアの体験を提案したりもします。啓発的経験とは言葉としては難しいのですが、要は、実際に体験を通して実感してみようということです。これによって、ご本人も、向き不向きがおのずとわかると思います。そして最終的には、その方にあった仕事を見つけ転職希望者には企業を紹介します。

転職先企業の紹介までしてもらえるのですか!。
そうです。また履歴書や職務経歴書の書き方、面接の仕方までアドバイスいたします。とても実践的、具体的内容となっております。
それは助かりますね。私も履歴書や職務経歴書の書き方に苦労した経験があります。特に職務経歴書の書き方には苦労しました。こうした援助はとてもありがたいですね。
はい。私達は、こうしたきめ細かなアドバイスもいたしますが、決して押し付けはいたしません。あくまでも選択するのはご本人であり、そこに価値があるのです。ご本人が理解し納得された上での選択ですから、そこには他人からの押し付けは一切ありません。そんな価値ある選択のサポーターとしてお役に立ちたいのです。
自分で選択するところにポイントがあるのですね。
そうです。自分のキャリアは自分でデザインし、自分の意志で創っていけるのです。人間には、本来それだけの能力が備わっています。自分の内なる能力に気づいていただきたいのです。たんに「良い仕事が見つかった」という結果そのものに、一喜一憂するだけではなく、本来備わっている自分の能力に気づき、自らがその能力をつかって選択したというプロセスそのものに喜びを感じていただきたいのです。私達の喜びも、そこにあるのです。
大変よくわかりました。それでは、最後に溝渕さんからお話をいただきます。

私の方から、もう一つ大切なことを付け加えておきます。私達は、たんに就職のお世話をするだけではありません。仕事をしていても「不安」や「悩み」を抱え、精神状態がきわめて不安定な方が数多くいらっしゃいます。そのような方に対してのメンタルケアにも取組んでいきます。この種の相談は増える一方でして、最近は予期しないリストラや職場でのいじめなどに遭遇している労働者が多く、本人および家族にとっては、とても深刻な問題となっております。

この場合、本人は家族にも打ち明けてないケースが多いと思います。このような方に対して、やれ「キャリアプラン」だの「キャリアデザイン」だの言ったところで、心が疲労しきっている段階では、本人はプレッシャーを感じるばかりで、より精神的に追い込まれてしまいます。このような方に対しては、心のケア、つまりメンタルヘルスを行う必要があります。

最後にもう一点、ライフプランの設計や見直しについても相談が多く、この分野においても専門家が対応いたします。就職、退職、結婚、出産というように、人生の節目において、まず頭をよぎるのは、「どれくらいの費用がかかるのだろうか」というように、お金に関する悩みではないでしょうか。将来のキャリアプランを立てるにしても、経済的な見通しが立った上でのことです。金銭的な見通しを抜きにしての、キャリアプランを立てたところで、実際に実行できなければ意味がありません

お金に関するライフプランの設計と職業に関するキャリア設計をドッキングさせてのコンサルタントは、全国的に見ても目新しい試みだけに、今後力を注いでいきたいと思っております。

以上、キャリアコンサルタント協会設立の趣旨と必要性について大まかでありますがご理解いただけたかと思います。なお、メンタルヘルスとライフプランについては、後日、当協会の担当者からさらに具体的な話しをさせていただきます。

ありがとうございました。本日は初日ということでキャリアコンサルタント協会発足の趣旨説明とキャリアコンサルティングの必要性についてお話いただきました。溝渕さん、山本さん、ありがとうございました。