相互理解を促進するために

今週のゲストは、在日本朝鮮人総聯合会高知県本部常任委員会委員長の黄英信(ファン・ヨンシン)さんです。今日のテーマは「相互理解を促進するために」でお話を伺います。
 最近の日本は断片的な朝鮮半島の情報ばかりが入り、歴史をベースにした相互理解が促進されているとは言えない状況になっているのではないでしょうか?


 朝鮮半島の人達が「反日」を言われるほど、日本に関心があります。 当の日本人はつい最近まで関心はありませんでした。これについて どう思われますか?

 朝鮮人が「反日的」とか、朝鮮学校で「反日教育」をしているとか言う人がいますが、そんなことはありません。朝鮮と日本の歴史を正確に語り、教え、伝えているだけです。共通の歴史認識の上に真の友好親善を進めたいというのが、私たちの願いです。
 朝鮮の歴史を語るとき、日本を除いて語ることは出来ません。それを正しく教えている。その教育であります。反日を目的にしているのではありません。


 それは歴史の教訓から学び、再び国を奪われ、亡国の民の歴史をくり返さないためにも朝鮮民族として必要なことなのです。
 ただ過去の侵略と他民族支配の歴史を正当化し、歪曲し美化しようとする人達を到底私たちは許せません。今後も日本の国民とは広範に善隣友好を進めて行こうと思っています。

講演される黄英信さん。相互交流が大切です。

(写真は黄英信さん 提供)

 日本人はアジアの人達に対し「変な優越感」があるようです。この 要因はなんであると思われますか?
 福沢諭吉が提唱した「脱亜入欧論」。明治以来今日まで国家政策でも教育でも一貫してこの思想が支配してきました。
 今でもこの考え方は国民のなかに根強く残っています。
 そして第二次大戦に敗戦するまで、アジア諸国を侵略、支配をする過程で徹底的に日本国民に何ら根拠のない「優越感」を植え付けました。逆にアジア諸国民を「劣等民族」として、蔑視と差別の意識をもたらせたのです。

 第二次大戦後には経済力の発展を後ろ盾にして、思想的には本質的に戦前と変わらない政治や教育がなされたところに原因があるのではないかと思います。
 その結果「正しい歴史を理解できない」人達が増え、その民族差別の意識が「温存」されてきた言えると思います。

 最近中国と韓国の間で、古代国家高句麗王朝の問題で対立しています
。この問題についてどう思われますか?
 私もこの問題ではまだあまり勉強していませんので、明確な返答になるのかわかりません。ただ言えることは、1000年にわたって存続した高句麗は厳然た主権国家です。
 高句麗の歴史は朝鮮民族の歴史でもあります。これは歴史学会や文献でも解明されてきています。朝鮮側だけでなく、中国側の古文献とかでも、きちんと認められています。
 それが急遽2年前中国で東北プロジェクトが出来ました。そのときから「高句麗ー中国地方政権論」が出てきました。ひじょうに不自然な意図で出てきました。唐突でありました。
 歴史を歪曲してはならないと思います。今中国は日本の歴史教科書問題でいろいろ言っていますが、中国自身がそれをやってはいけないと思います。

 それで先日も南北の歴史学者が集まり、「高句麗の歴史を自分達の民族歴史として守っていく」とお互いに誓い合いました。

 最近でこそ「国籍条項」が撤廃され、地方公務員への道も開け ました。職業選択上の制約などはあったのでしょうか?

税制の勉強会を開催している商工会の様子。

(写真は黄英信さん提供)

 ありましたね。昔は就職試験の申請も受け付けないという状況でした。大企業はもちろん中小企業もそうでした。その次は申請は受け付けても履歴書で排除される、書類審査で排除されてきました。
 今は大分緩和されました。就職の窓を開く企業などは増えて来ています。まだまだ幅は狭いです。

 したがってわれわれの若い世代も自営業を起こすか、家業を継ぐかまた司法書士とか税理士とか資格を取得する人が増えています。
 一部大企業に就職している者もいますが少数です。国籍条項が撤廃されたからと言って、就職問題への影響はさほど見られないのが状況です。

 
 豊臣秀吉が2度にわたり朝鮮半島を戦乱に巻き込みましたが、江戸時代は朝鮮通信使が日本を訪れ、平和友好の時代が長く続きました。朝鮮通信使の業績はどのようなところで残っているのでしょうか?
 当時日本は鎖国をしていましたので、朝鮮通信使からもたらされた諸外国の情報は日本にとっては大変重要であったと思います。
 朝鮮と日本との歴史において、「暗い時代」と言いますのは、豊臣秀吉の時代と、明治以降の時代から今日にいたるまでの時代です。長い歴史においてはひじょうに短い期間です。
 足利政府の時代も交流がありました。徳川幕府の時代は朝鮮通信使を招請いたしました。約200年の間に12回来日しています。そこには朝鮮のトップクラスの人達が来日し、日本の関係者と交流をしています。
 いわゆる歴史、文化、仏教文化、陶磁器をはじめとする美術、芸術などの交流を通じて日本に対する影響は大きかったと思われます。
 在日の皆様の立場について。朝鮮半島と日本列島との「架け橋」 の役割を果たされていると思います。未来志向の日朝関係はどう
あるべきだと思われますか?
 先に触れましたように朝鮮総聯は、各階の日本の広範な日本国民との相互理解を深め友好連帯を強化することを基本課題の一つに定めて、今日まで49年間の努力を続けて来ました。
 お互いの歴史や時々の問題をもって、学習会、講演会、座談会、交流会などを開催してきました。友好親善を深める懇親会や朝鮮料理講習会、金剛山歌劇団や、広島、大阪の歌舞団の公演活動もおこないました。日本の学校との交流や、日本の人達の朝鮮訪問活動の支援もしてまいりました。

村山富市元首相を講師に迎えての講演会の様子です。

(黄英信さんより写真提供いただきました。)

 未来に向けては大事なことは、「互いに真実、事実を知ること」です。特に歴史、それも近代における日本と朝鮮半島、日本とアジアの歴史、侵略と支配の歴史,戦争の歴史をです。
 またその時々の色々な情勢や状況も多面的に知ることが大切です。

また異民族、異文化を認め合い、尊重しあう気持ちや、相手の立場相手の痛みを感じ合う気持ちをお互い共有することだと思います。

 朝日両国政府が抱える過去の加害者責任を直視して、その解決に向けて互いに誠実な対応をするなかで、「日朝ピョンヤン宣言」の1日も早い実現ものぞまれます。

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