憲法改正は必要なのか?
 今週のゲストは参議議員の平野貞夫さんです。今日のテーマは「憲法改正は必要なのか?」でお話しを伺います。
 かつての時代は日本国憲法の改正論議はタブー視された時代もありました。しかし現代は与野党の国会議員の多数が、「なんらかの形での憲法改正は必要」であると主張しています。しかし実際に憲法改正ともなりますと、国会議員の3分の2以上の賛成と、国民投票で過半数の賛成が必要だと学校時代に社会科で習いました。
常に問題となるのは「第9条」です。現在自衛隊がイラクへ派遣されて「復興支援活   動」をしています。またイラク暫定政府発足後に、多国籍軍への参加も政府は検討し  ているとのことでしたが、これは憲法で禁止されている「集団的自衛権」の行使では  ないのでしょうか?
 憲法の問題は私のライフワークでもあります。まず9条をどう考えるかということを申し上げます。日本の今までの発展は、国際社会の恩恵を受けたこと、9条があったからだと思います。9条の精神。原理は大事にして発展させなければいけないと思います。
 しかし世界の様子も随分変わっています。だから変わった世界の様子に、「9条の精神」をどう生かすか。そういう意味での新しい9条。9条を補完する作業がいると思います。

 イラクなんかの問題は、そういうきちんとした憲法の新しい憲法をつくる。あるいは憲法の運営における新しい判断。基本的に自衛隊を海外に出す場合は、他の国の誤解のないように「原理をつくって」。「原理原則」をつくって行うべきであって、「なし崩し的に」「アメリカの言いなりに」なる。
 一連の有事立法がそうですね。それが一番、「戦前の日本が歩いた道」なのですね。だから私は今の小泉政権のたりかたは危ないと思っています。

今一度自衛隊のありかたについて、国民的な議論と合意形成が必要です。
 平野さんは「憲法の解釈栄え、国滅ぶ」ということを発言されていました。それは
憲法の拡大解釈でいくことが、日本を危なくしていくことなのでしょうか?
 拡大解釈が危ないというより、拡大解釈すらしないでしょ。嘘ついてやるわけでしょう。ようするに、アフガニスタンやイラクに自衛隊を派遣することは、その原理は、アメリカとの集団的自衛権という原理なくしてはやれないことなのですね。ところが集団的自衛権ではない。と嘘ついてやっているわけでしょう。
 それが悪いんですよ。今までの政府の解釈をやめて、「これは集団的自衛権なんだ。」というのならまだましですよ。でもそれを言いますと自民党のなかでもパンクしますし、公明が怒って連立が外れる。そのような事情があるから嘘つくんでしょう。嘘つかれたら国際社会はどうなるのですか?そういうところをびしっとしろと、やるならば言っているのです。
 ちゃんとした憲法論議をして、国際的にも通用する原理・原則で、日本は対外活動をすればいい。というのが平野さんの主張なのでしょうか?
 そうでないと派遣される自衛隊はどうなりますか?正当防衛じゃないとピストル撃っちゃいけないと言うのでしょう。死ねということですよ。現地で紛争が起こったら。
 ですから、国連の決定に基づいて、日本の国会が、「よし」と言う時には、行くべきでしょう。その時には各国と同じことをしなければ、これは派遣される人が死にに行くようなものです。それはけっして侵略を手伝ったり、略奪を手伝ったりすることが、あってはいけませんよ。
ルワンダでのPKO活動
そのあたりの議論はメディアでも出てきませんね。おかしいですね。
 おかしいですよ。私はそればっかり喋っていますけれども。
 なんだか「サンデーモーニング」ですかあのへんのバラエティ系の番組でも取り上げませんね。あの番組なんかに出てくる人は、政府のお追従の学者なんでしょうか?
 あのなかに友人がいますが、ふらふらしていますよ。
 憲法改正するなり、論憲するなり、護憲するなるにしろ、もっと論争を私たちも聞きたいと思います。あまりそんなにならずに、「前座」の段階で白黒つけて終りのような。
 私は最初無所属で出てきて、自民党に入りました。考え方は「タカ派」ですね。でも論理の立てかたが違うのですね。
 実際アフガニスタンへの米英軍の空爆に対して、反対集会が高知でもありました。その時平野さんもスピーチされていたようなのですが。
 橋本龍太郎首相とクリントン大統領が、「新ガイドライン」を平成8年ごろこしらえました。96年ごろでしょうか。あれ以降、有事立法をこしらえていくんです。とどのつまりは武力事態法ですけどね。全部違憲です。私から言わせれば。
 憲法の見直しをするか、見直しが出来なかったら、「安全保障基本法」をこしらえて、日本の自衛隊のありようについての原理を出さないと駄目なのです。それをやらずになし崩しに、今は日米安保で、イラクまで行っているのですからね。絶対に「満州事変」や「支那事変」のような事態になりますよ。
 出て行くのは簡単ですが、撤退するのは難しいですね。軍隊は。
 行けば利権が生じますしね。もうひとつは、攻撃されたら「自衛権の行使」になりますね。だからわたしは、国連の枠内でしか、自衛隊を日本の外へ出してはいけないといっているわけです。
 私は91年の湾岸戦争の時に、法案をつくったり、3党合意をしたり、「ドラフト」を全部こしらえました。専門家なんですよ。高知では全くそういう評価を受けませんけれども。
 国会議員でもN01ですよ。
 来年自民党は2005年に結党50周年を迎えます。具体的な憲法改正草案を出すと言っています。一方民主党も「基本的人権に配慮した憲法改正論議をする」と積極的に憲法論議 えおしよとしています。共産党と、社民党は論議自体に反対しています。国会での論  戦は盛んになるのでしょうか?
 盛んになると思います。ただ私は国会議員のなかでは、一番その必要性を論じてきました政治家です。自民党の今やっている憲法改正案は,ひじょうに問題がありますね。
 私は率直に申しまして、小渕総理がなくなって、森政権が出来た時、クレーダー的な談合で、憲法に違反したつくり方をしたんですね。自民党のボス達が。
 自民党のああいう体質がある限り、私は今は憲法改正をすべきではないと思います。恐ろしいですよ。あそこに参画した人達、オーソライズした自民党の国会議員全員が憲法の本質がわかっていない。恐ろしいですよ。自由民主党の存在がある限り、憲法をいじってはいかん。
 逆ラジカルな意見になっていますよ。核武装も出来るような再軍備をしようとしていますよ。また国家主義をひじょうに強めて、市民権や基本的人権を狭めようと言う動きなんですよ。
 自民党の憲法改正草案はそういう感じの話が出てくるのですね。平野さんたち民主党の憲法改正案は、基本的人権に配慮したものがでてくるのでしょうか?
 基本的人権と一言で言いますがね、このあいだまとめたものは、憲法改正案ではなくて、
新しく憲法を作る場合の基本方針なんですよ。条文の改正はまだ考えてはいません。
 ただ基本方針は、自由党でこしうらえたものです。私が中心になってつくったものが組み入れられています。今経済・社会が大きく変化しています。これは「重化学資本主義」から「情報資本主義」に大きく変わりました。
 情報化社会の人権問題。情報化社会の安全保障問題。人間のあり方、教育のありかたは、かつての「大量生産ー大量消費」の時代とは、異なりますね。人権の価値観、国のありかた、地方のありかたも違います。
 そういう新しい発想も入れようというのが、民主党の憲法改正案です。
 確かにそうですね。テロにしましても、サイバーテロなんかは今までありませんでしたね。イラクの犯行グループなども、メディアやパソコンやインターネットを利用していますし。テロのありかたも変わっていますね
 遺伝科学などによりましても、人間の尊厳なんかも全然変わってきますからね。
 時代にあった原理をつくろうということですね。
 新しい情報社会のルールをこしらえようということですね。
 国民投票に行くだけの議論は熟成するのでしょうか?
 私のライフワークのひとつです。国会職員時代も疑問に思っていました。国民投票法がないということは、憲法制定憲を持っている国民が、権限を行使す権利がないことですね。欠陥ですね。今憲法議連がつくっている国民投票法案は、私が自由党時代に中心になってこしらえたものを元にしています。

 私は今回議員をやめますが、一つの目的は達成したと思います。今第3次産業革命のさなかであると思います。だから混乱しています。だからサイバーテロにしても、「9.11」テロも、イラク人質事件も。要するに「情報化社会」に対するルールも倫理も出来ていない。
 それをどうつくるのかが問題であります。情報社会の倫理性を確立すべきなのです。社会保障のありかたなども根底から変わるのですから。
 基礎的社会保障を国が保障した後に、競争する社会が望ましいと思います。