中心市街地に未来はあるか?
 
 今週のゲストは高知県特別職知事秘書の今城逸雄さんです。今日のテーマは「中心市街地に未来はあるか?」です。
 どの地方都市も疲弊し、空洞化し、住民の過疎化、高齢化が進んでいます。これは行政にしては大変効率の悪いことであり、財政を逼迫させる要因でもあります。
今城さんは商工会議所時代に「エスコーターズ」を着想され、定着させました。高知女子大生の意識や、商店街の皆さんの意識には変化がありましたか?

 商店街の活性化に取り組む場合、今まは行政と商業者だけが商店街の事を考えることでやってきました。商業者が発言しますと、それは商店街、商業者のエゴではないか、と言う話になりますね。そういう傾向を変えたいと思いまして、まちづくりに多様な人を入れる。ネットワークを広げる。そういうことをやって行きたいなと思いました。


 それで始めたのが、エスコーターズでした。、高知女子大学は高知市中心商店街のすぐ近くにあるのにあまり商店街とは交流がありませんでした。それなりに学生がいるのに交流がありませんでした。 そこでエスコーターズというグループが出来たら、お互い交流も進むだろうし、学生と商店街との関係だけではなくて、福祉の分野とか、いろんなところに人が入ってくれる。関心を持っていただくきっかけになるのではないか。そういう思いで始めました。

今城逸雄さん
 彼女達がまちへ来ていただいている人たちからお話を聞き、それを商店街の人たちに伝えます。自然な形でまちに対する要望が集まります。それを商店街の方達が実現化していこうと。その意味で大きいと思います。
 福祉の分野では、エスコーターズは初めて商店街の人たちと一緒になり、車椅子の体験をしました。そのときに、危ないところ、側溝のグレーチングの目が粗いとか。それに気付いてエスコーターズを始めて1年ぐらいで、車椅子の前輪が嵌るグレーチングは商店街ではなくなりました。
 実際のまちづくりの「課題」の解決策にエスコーターズの活動が役立った事は良く理解できました。
商工会議所が窓口になりTMO事業をされています。「チャレンジショップ」の事業なのでしょうが、成功事例はあるのでしょうか?
 TMOと言うのは中心市街地の活性化を進める為のひとつの組織です。チャレンジショップとは一つの戦術なんですね。
 「中心市街地活性化法」(中心市街地における市街地の整備改善および商業等の活性化の一体的推進に関する法律 平成10年7月施行)が出来ました時に、有利な補助金とかを国の方が宣伝しました。それに乗っかってハード事業を行ったところはだいたいその後こけていますね。
 ソフト事業でやったところは良くて、高知もそうですが、全国的に注目されるところが多いです。
高知女子大生のエコスターズと今城逸雄さん。中心商店街の清掃活動やお店の案内などもされています。
 と言うことは箱物をこしらえたり、ショッピングセンターをこしらえたところはすべてちゃがまった(駄目になった)ということでしょうか?

 補助金につられたところは苦戦していますね。
 TMOは本来は地主の利益の為の「土地の有効利用促進」のための政策誘導手段ではなかったのでしょうか?
 高知市中心街の地主も少数です。その皆さんとの協力関係はどうなのでしょうか?
 地主の為の施策というのは少し違うのではないかと思います。商店街と言うのは、まちに来る人たちの共有財産だと思います。地主もその場を提供する立場ですね。
 もともと中心市街地の活性化ということで、TMOが出来ましたのは、外圧ですね。小売業の規制緩和で、大店法(大規模小売店舗法)が改正され2000年に大規模小売店立地法と改正都市計画法と中心市街地活性法という3つの法律を「まちづくり3法」と言います。みなでまちを活性化しようということで出来ました法律です。
 しかしその後どうなるかと言いますと、大型店が出店しやすくなり、深夜営業の規制も緩和されて、生活環境の悪化や青少年への悪影響も社会問題になりました。今また「まちづくり3法」と「は見直しがされています。
地方都市の全国各地で商店街は空洞化しています。「シャっター通り」になっています。
 「まちづくり3法」は来年改正され施行されるのでしょうか?
 そうです。1万平米以上の店舗には規制がかかることになります。
 全国で中心市街地再開発で成功している事例はありますか?
 やはり下がったとはいえ土地価格の高値が再開発の障害にあるのではないでしょうか?
 再開発と言いますと、今きらびやかなのは東京の六本木ヒルズなどですね。ああいう開発は地方では難しいでしょう。
 高知市でも最近槌音が少し聞こえ始めました。(西武百貨店跡の再開発など)。成功事例と言いますと、面白いなと思うのは滋賀県長浜市の黒壁ですね。、ガラス館などを中心にまちづくりをしています。
 黒壁が面白いのは「箱物」ではなくて、文化を長浜にこしらえましたことです。こしらえる前は通行量は人が数人と犬が1匹しか通らなかった商店街が、今は年間200万人以上の観光客が来ており大きな成功事例となっています。
 ただ観光客というのは日常の人ではないので、地元の人がどれくらい来るのかのほうが大事ですね。
 土地価格ですが安い方が再開発はしやすいと思います。しかし安くなったということはそれだけ、その商店街のポテンシャルが低下しているということですので、そういったことも考えなければなりません。
 以前講演を聞いたことがあります。講師は日本政策投資銀行の人でした。
「市街地をコンパクトに縮小して、歩いて用事を足せるまちにします。そうすれば高齢者ばかりの市街地でも市街地としての活力は維持できるはずです。」と言われました。そのあたりはどう思われますか?
 そうですね「コンパクトシティ」というのは海外から入ってきた思想ですね。日本の場合は自治体や国の財政が弱くなり人口も減少しています。コンパクトシティに一番早く反応したのは雪国ですね。今年は大雪でした。
 青森などは雪の除雪費用だけで何10億円も負担しなければなりません。街が郊外に広がれば除雪費用もどんどん増えてきますね。なかなかそれは対応できません。 それでいろんな施設を中心市街地に持ってこようとしています。
 高齢者の問題もありますが、郊外のあるまちは車で移動しなければなりませんね。郊外型量販店などは「閉ざされたまち」なので、それが本当に街なのか?怪しいものですね。
 外との交流が生まれないとまちの活力もまた生まれないと思いますね。高齢者だけの触れ合いではなくて、若い人たちも入っていろんな世代の触れ合いが必要ですね。パフォーマンスもしたりする。それが街の魅力かなと思いますね。

高知市中心商店街のはりまや橋商店街ではいろいろな住民参加型の行事が開催されています。

 高知駅前再開発について。以前ZEPPを誘致するということで前特別秘書の川竹さんも動かれていました。それも含め駅前再開発はどうなっているのでしょうか?

 ZEPPというのはスタンディング型のライブハウスのようなものですね。今その話は動きはないようです。高知駅前再開発の動きはありますので、そこでホールがどうなるのかもあると思います。
 これはこれから協議中ということなのでしょうか?

 そうですね。県民のみなさんがホールが欲しいということでしたら声を私たちにどんどをいただければと思います。
 *「中心市街地活性化法」というのはアメリカなどの圧力もあり、従来ありました「大規模小売店法」の規制緩和とセットになっていまして、郊外型のイオンのような大規模量販店の進出を許す代わりに、商店街の小売業者などに有利な補助と融資制度がセットになった「飴」を与えた政策です。
 共同店舗事業などは殆どは破綻しました。規制を緩和した結果、中心市街地の空洞化はより進展しました。それで政府はまた軌道修正し、「まちづくり三法」を来年施行、郊外型大型店舗の規制をかけることになりました。
 

中心市街地再開発で有名な米国ボルティモア。

イナハーバー。再開発当時は土地代はゼロに近かったと聞いています。