草悦流生け花から見た社会について
 今週のゲストは、生け花草悦流家元の猪野伸一さんです。今日のテーマは「草悦流生け花から見た社会について 」でお話をお聞きします。
猪野さんはフラワーショップ花樹を経営されるかたわら、家元活動や所属する華道協和会の活動もされご多忙な毎日です。
猪野さんはもともとは高知市役所の職員でした。家元を継承されることに対しては違和感がなかったのでしょうか?
 遥か昔のことになりましたが、市役所を退職する時のことを思い出しました。市の仕事が出来なくなる寂しさは確かにありました。よき先輩、同僚に恵まれていい仕事をさせていただいておりましたので、そういう面では寂しい思いをしました。
 花の仕事をすることには違和感はありませんでした。私はやはり家元制度の中にいる人間でした。誰かが継がなくてはなりません。その時点で継ぐものは私が最適任であったということでした。
現代社会は余裕のない社会です。先日の尼崎でのJR列車の転覆脱線事故も時間的な余裕のなさが招いたのではないでしょうか?今こそ生け花を活ける時の「精神的余裕」が日本人に必  要なのですはないのでしょうか?
 ビジネスの世界ではやはり一分一秒が勝負をわけてしまいます。そういう中でも人間は余裕というものが必要ではないでしょうか。こういう風に思います。
 1日に1回は無理でも、1週間に1回は、茶の湯をいただくとか。そういったことで俗世間を離れ、悩みを離れて時間を現代の日本人に是非持っていただきたいと思います。
猪野さんは高知市役所に17年在職されていました。退職され草悦流家元を継承されて17 年。ご出身の高知市役所は「公金横領」など仕事のありかたが問題になっています。外から  見られていまして、市役所はどういうところが問題なのでしょうか?

収録の様子です。猪野伸一さんは、ご多忙の中駆けつけていただきました。専門的な華道界の言葉を平易に説明いただきました。

少しは花の世界について理解が出来たのではないでしょうか。

私の社会的生活の出発点でありました職場ですので、大変心配していますし、これからどうなるのかと思っています。
 市役所職員と言いますのは、市役所に入庁しますと4月1日に市長から辞令をいただきます。その時に、「私たちは憲法第何条にのっとり・・全体の奉仕者として職務に専念することを誓います。こういう宣誓書をします。
 まず「全体の奉仕者」という観点を今一度肝に銘じて仕事をしていっていただきたいです。


 もう一つ大事な視点は「タックス・ペイヤー」「タックス・イーター」という言葉がありますが、まさに市役所の仕事は「タックス・ペイヤー」たる市民が、今の世の中では貴重な税金を「血税といってもいいですが」支払っているものを原資として仕事をしています。
 市職員1人1人の生活もその税で成り立っています。どうか今後は「タックス・ペイヤー」たる市民の痛みもわかった上で日々の職務に励んでいただきたいと思います。

 それともう1点あります。次々と高知市役所の不祥事が出ています。これに対する関連することなんですが、私が思いますのは「こういう危機の時にはすべてを包み隠さずさらけだす」ことが肝要であると思います。
 問題点があれば市長以下全職員がそのことについて検討し、自らの力によって改悪をしていく視点を植えつけていかなければ、必ず近い将来に不祥事が起こります。いずれにしましても市民に愛され、信頼される市役所になっていただきたいと思います。

(写真は高知市役所本庁舎)

高知市役所本庁舎
 草悦流と草悦流も所属されている華道協和会について伺います。大きな団体で社会的な影響もあると 思われます。最近取り組まれている課題は何でしょうか?おかまいない範囲でご披露下さい。

 私どもの草悦流でございますが,創流は昭和22年でございました。現代花を活ける流派です。基本的な生け花の修得に努め、流派の活動を行っています。
 また華道協和高知県会についてですが、私どもの華道協和会は法人格を持っています。社団法人華道協和会と申します。おそらく高知県下では最大の会員数を持っている団体であると思っています。


 社団法人でありますので、様々な社会的な貢献をしています。チャリティ華展でありますとか。阪神大震災の時にはそれに関する華展を行い寄付などもしました。
 春と秋には高知市文化ぷらざかるぽーとで、高知県下23流派が400活けぐらいの生け花を毎年出品しています。どうか足を伸ばして展示会を見に来てください。

葉道協和会会員による視察旅行(1990年花の万博)
高知市城西公園で開催されていました花フェスタ
講話をされる猪野伸一さん
* 生け花の写真はすべて猪野伸一さんから提供いただきました。
7月番組に戻ります