魅力ある雇用の創出とは?
 今週のゲストは、高知労働局職業安定部長の石井久さんです。今日のテーマは「魅力ある雇用の創出とは?」というテーマでお話を伺います。
 高知県は「有効求人倍率」の低い県です。それだけ企業の活力が弱いということではないでしょうか。高齢化先進県でもあり、県土の82%が山林の県でもあり、海山川の環境に恵まれた県でもあります。
厚生労働省の職業安定局のホームページには「魅力ある雇用の創出」のために、「新規・成長分野雇用創出トータルプロジェクト」を実施されるように表現されていました。具体的にはどういう施策なのでしょうか?
 事業概要としては平成12年度より実施されまして、新規・成長分野人材サービスセンターを全国6ヶ所(札幌・宮城・愛知・大阪・福岡等)に設置するとともに、その他の地方に置いても、官民の各機関・団体と連携をとりまして、ベンチャー企業を含めた新規・成長分野の企業の創業支援や事業展開の支援を行いながら、それら分野への人材の円滑な労働移動の促進、雇用管理の支援など、新規・成長分野の事業所はもとより求職者に対しまして総合的な支援を行うというものでした。(ホームページにあるのは、メンテナンスが遅れており最新情報ではないのです。)
 平成16年度におきましては、地域雇用機会増大促進支援事業、通称をプラス事業と言っています。簡単に言いますと、地域の自主性を活かした雇用創出の促進ということであります。高知では、この支援事業にかかわってまず西土佐村さんが提案されました、地場産品の販路拡大施策との連携のもとに、雇用対策を拡充することで地域振興の推進と雇用創出を図るための事業が認められました。次いで、大方町さんが提案されました、ITを活用しての雇用対策も認められました。

 それでは、地域再生にかかわっての厚生労働省としての来年度(平成17年度)の雇用施策ですが、地域におけます雇用創造に自発的に取り組む市町村さんと連携した施策ということで「地域雇用創造支援事業」というものを立ち上げました。
 従来からの施策と2本柱で地域の実情に応じた雇用対策を推進していくこととしています。こうしたことによって、それぞれの地域の産業構造などに応じた、よりきめ細やかな支援が可能となり、地域の自主性・創意工夫を活かした地域雇用対策が可能となると考えています。
 このあたりのところは、厚生労働省のホームページに最新の情報が掲載されておりますので、ご覧いただきたいと存じます。

 「創業や異業種への進出を行う中小企業が労働者を雇い入れた場合に助成金を支給するなどの様々な支援を行う」とありますが、申請の手続きはどのようなものなのでしょうか?簡便なのでしょうか?
 中小企業労働力確保法に基づく中小企業基盤人材確保助成金助成金他4助成金がありますが、各々の助成金よって助成内容、申請の期限が異なっております。
 また、当該支援措置をうけるためには、改善計画といたしまして、労働時間の短縮とか職場環境の改善、福利厚生の充実。さらには、募集・採用の改善、教育訓練の充実など、雇用管理の改善について取り組むこととしています。
 その場合は、計画書を作成いただきまして、都道府県知事の認定を受ける必要があります。なお、詳細につきましては、この業務の取扱機関でございます『独立行政法人 雇用能力開発機構高知センター』までお問い合わせいただきますようお願いいたします。
 観点を少し変えた質問をさせていただきます。日本経済新聞2005年1月11日号にて慶応大教授の國領二郎さんがは、「高齢化や環境問題など世界が今後直面する課題の解決方法を見つけ、対応策を提供する側に回れば、日本は21世紀の先導役になることができる。そのため、世界で最先端にあるネットワーク環境を利用し、散在する情報共有・結集できる社会の構築を急ぐ必要がある」(日本経済新聞1月11日版、國領二郎 慶応大学教授)と言っています。
 國領教授は「地域を基盤に、新たな価値創造を」と言われています。全国での実例はご存じないでしょうか?高知であれば、炭を活用して山間部と都市部のネットワークができそうだと思いますが・・・。(はりまや橋サロンがそうです。)
はりまや橋商店街で開催されました「第3回番組出演者交流会」の様子です。正真正銘の異業種交流です。
 私もその日本経済新聞の記事を読みました。國領先生のお話を読みましたら、なんか大きな気持ちになりました。ユビキタスネットワークを活用することによって、高齢化への対応にも役立つし、「地域を基盤に、新たな価値創造を」ということに、私もそう思います。

 現在、地域再生推進のためのプログラムに基づきまして、地方から申請され、認定された地域再生計画は250件あるとのことです。例えば、高知県では大方町の『「知」のネットワークが生む地域の活力』、愛媛県では松山市の『「坂の上の雲」のまち再生改革』、などの計画が認定されているようです。詳細は関係するホームページをご覧いただきたいと存じます。

 高知県では、一次産業をベースにした「産業起こし」が唱えられています。観光も含めてです。二次産業の大半を占める土木産業からのそれらの「産業」は受け皿になると思われますか?
 既に高知県におきましても、東山建設様のように農業分野への参入を始めた建設業もおります。「厳しい時期だからこそ事業縮小ではなく、攻めの姿勢で雇用確保を」という積極的なお考えのもと、そもそも農業進出しやすい人的面などの周辺環境があったからではと思っています。しかし、軌道に乗るまではたいへんなことと察します。

 このように、異業種への進出は素人である私でさえ、いろいろとたいへんなことではと思いますが、当事者であります企業の皆さん方が一番たいへんなことと思います。経営者の方には、事業の拡大といいますか転換という要素が強いわけですので、これまで以上の実行力と決断力、そして実践力が求められるのではと思います。
 受け皿になるかどうかは、そうした事業がなんとか継続し、軌道に乗ったと判断できうる状況になった時、はじめて言えるのではと思います。

 高知県同様に失業者の多い沖縄県などでは「コールセンター」を県が力を入れて誘致をしました。高知県では、県の特性からみてどのような業種、業態の企業を誘致、育成すれば良いと考えますか?先ほどは農業へ進出されたお話をうかがいましたけれども。
 海があり、川があり、山がある、そして、そこで生活する人がいる、その人たちが引き継いできたゆるぎない歴史があり、他にはない独特の文化がここにはあると思います。
 こうしたことを高知の特性とするならば、まさに自然を大事にした観光産業は、そのトップにあげられるかと思います。
 しかし、大規模なリゾート開発のようなものを描いているものではありません。規模は小さくても、心よりおもてなしをし、そのことがいくつになっても思い出され、リピーターになって還ってくる。それも一人ではなく、仲間や家族を連れて。
 スケールが小さいかもしれませんが、高知の観光産業はそういうところを目指していく挑戦者がいてもいいのではと思っています。
 また、農・林・水のそれぞれの業態においても、将来性があるのではないでしょうか?トマト栽培で業績の上がっているところを参考にされて、他の商品野菜にチャレンジするとか。林業で言えば、台風などの多い高知の県土を守るということを基本にしながら、間伐だけにとどまらず、伐採した木材を有効に使ってのさまざまな事業が展開できないかどうか。
 さらには水産業では海洋深層水を使っての商品開発にそれこそ産学官共同でいっそうの研究を行い、高知の特産として売り出すなどがあろうかと思います。