時代の変化と世代間ギャップ
 今週のゲストは高知大学人文学部助教授の石筒覚さんです。今日のテーマは「時代の変化と世代間ギャップ」です。高知大学人文学部3回生の広末かおりさん、1回生の橋本若知(あきな)さんにも来ていただきました。
 石筒さんは人文学部社会経済学科、経済政策を担当されています。専門分野は「マレーシア」です。
 最近は「時代が変わった」と言われます。石筒さんは、高知大学で経済政策を担当されています。経済学においても、いろいろな変化を扱ってこられたと思います。
経済の面からは「時代の変化」をどのようにお考えになりますか。
石筒  みなさんもご存知のように、「バブルとその崩壊」が、1つの分岐点となっています。ちょうどその時期に、日本経済や産業が転換点を迎えただけでなく、社会的にも、ベルリンの壁の崩壊と冷戦の終結や少子高齢社会の到来など、変化の基になる出来事が起こりました。
こうした変化に私たちは否が応でも対応していかなければならないのですが、なかなか簡単にはいかないのも事実です。
先日、地元紙の取材に、高知工科大学の近くの「高知テクノパーク」について石筒さんは「事後支援が重要」「企業誘致の前に人の誘致」と言われています。これも時代の変化と関係があるのでしょうか。
石筒 じつは、工業団地の開発は、言ってみれば、「前の時代の手法」です。高度経済成長期に、産業を効率的に発展させていくための手段でした。企業を1箇所に集め、遅れているインフラを集中的に整備することで、企業や産業の成長を促していたと言えます。
 この発想で、今、工業団地を整備して企業を誘致しようとすると、たいていは失敗します。時代は変わってきているのです。
 あえて、生き残り策を探すとすれば、これまでと逆のことや、していなかったことをする。思いつかなかったことをする。
 つまり、徹底的にアフターケアを行政が行うとか、企業を誘致しないといけないのに、
まずは、「企業でなく人が来てくれるだけで十分です」、とかです。信頼関係が重要なのは今も昔も変わりません。ただ「、昔は、金銭的に優遇してくれれば、それなりに信頼されたのが、今は、お金ではなくて、人の方を信頼するようになっている」ように感じます。

社会の変化は想像以上です。親子の世代間格差は、「日本語を話す外国人同士」の会話であると思うことです。

お互いの異なる文化を尊重するところから対話が始まります。

石筒覚さん
 時代の変化を先ほどの説明で感じることが出来ました。今日のテーマである「世代間ギャップ」というものもあります。若者はどうでしょうか。時代の変化と関係がありますか?
石筒「今の若いものは・・」は、昔からありました。団塊の世代や新人類と呼ばれた世代もその上の方からすると、何を考えているか分からなかったでしょう。その当時も言われていました。
今、10代・20代前半のお子さんをお持ちの方も、同じ考えを持たれているのではないでしょうか。
 ただ、今のことに関しては、多少、原因が推測できます。今年入学した大学生は、80年代半ばの生まれです。そうすると、小学校に入るくらいにバブルが崩壊しています。実際には、20代前半くらいまでの人たちは、気がついたら、バブルが崩壊していました。 しかし、周りの大人が景気が悪い悪いと言っている割りには、みんな結構豊かなんです。
彼らにとっては、「景気が悪いことも、豊かなことも普通なんです。」30代より上の世代は
多かれ少なかれ、経済成長を体験しました。その過程で、景気が良くなることや、給与が上がるとか、豊かになっていくことを、肌で感じました。そして、それは良いことであると認識しています。
しかし、今の若者は、こうした実感はありません。これがギャップに繋がっているのですね。意見の対立などになっていると思います。
35年前から30年前の大学生はこういう自己表現手段が得意でありました。今の学生の親の世代ですね。
 
親と子の世代間ギャップに悩む人も多いようですが。わたしも実はそうです。大学生の息子がいますがあまり話しをしたことがありません。何を彼が考えているのかわかりませんし、こちらの考えも伝わっているのかもわかりません。
就職その他もどうするのだろう。と思っています。しかしこちらもアドバイスするノウハウもないし、コネクションもありません。そのあたり学生さんも含めてどうなのでしょうか?
石筒 よくそういう相談を学生からも受けます。「うちの親がわかってくれないんだ。」とか「親の言っていることがよく理解できません。」という話しを聞きます。
 よく保護者の方に、こういいます。同じ家に住んでいた親と子だから、言葉が通じると思っていると問題が起きます。さきほども「バブルの後先」など経済成長の体験の有無は、単なる世代の違いとは違います。
 言ってみれば、中国人と日本人くらいの隔たりがあると考えたほうがいいかもしれません。つまり、同じ顔をしてアジアの近くに住んでいるが、文化や言語は違います。同じ場所で中国人が中国語を話して、日本人が日本語を話して会話したら、全く通じません。
 世代間ギャップもそれぐらいの違いがあるのですね。世代間ギャップに悩む親子の間の会話にも同じことが言えるかもしれません。同じ日本語を話しているので、通じると思いがちですが、じつは、相手の文化を理解し、共通のことばで話そうとする努力をしないと溝はなかなか埋まりません。互いに自分の文化の押しつけあって、世界では民族問題が起きたりしますが、家庭内でも同じようなことが起きているかもしれません。
 広末さんに伺いますが、お宅の家庭でも「世代間ギャップ」は感じられますか?

広末 

 普段の会話ではあまり感じることはありません。3回生になりましたので、就職について父親と話しますと、安定志向、公務員志向の話しをします。

 自分は企業を目指したいのですけれども、「理想と現実は違う」と言われますね。

橋本さんは入学されたばかりなのですが、どうなのでしょうか?
橋本 大学を選択する時に少し感じました。わたしは勉強をしたいけれども、親は大学なんか行かなくても良いと言われて、ギャップを感じたことがありました。
そのあたりをどうまとめたら良いのでしょうか?
石筒 同じ日本語を話しているから通じると思い込む。一番重要なのは互いの「文化を理解し、共通の言葉で話そうとする。」努力をしませんとなかなか「溝」は埋まりません。
 文化ではないですけれども「世代間ギャップ」はあります。生まれた環境が違います。文化もかなり違います。それを「押し付け」あって「わかれ、わかれ」といっても世界では民族問題が起こります。
 家族でも同じです。
今イラクで起こっていることが、家庭内でも起こっているのでしょうか?
石筒 まず最初に互いにおかれた環境をきちんと理解する。その上で、お互いの主張をし、考えることをします。そういうことが重要であると思います。