高知における人材育成のあり方について
 今週のゲストは高知大学人文学部助教授の石筒覚さんです。今日のテーマは「 高知における人材育成のあり方について」です。高知大学人文学部3回生の広末かおりさん、1回生の橋本若知(あきな)さんにも来ていただきました。今日のテーマは「高知における人材育成のあり方について」です。これまで若者をとりまくさまざまな環境の変化について考えてきました
 「社会が求める人材」について、どのように考えていますか?
石筒 私たちは、社会が求める人材も変化してきていると考えています。以前は、与えられた課題に対する理解力や実行力がある人が好まれました。つまり、ある問題に対して1つの答えをきちんと出すことのできる人。教育現場やシステムもこれに対応して、こういった能力のある人を訓練して社会に輩出してきました。しかし、今、みなさんの置かれている現状は、これとはほど遠いのではないでしょうか。
 つまり、問題に対する答えは以前とは違うし、答えは1つではないし。。。」今は、与えられた課題に対する理解力や実行力ではなく、「課題そのものを自ら発見する能力」と「問題解決能」力が要求されています。以前は、問題は与えられてきたのですが、今は、「その問題そのものが何かを認識することから始まります。」そして、答えも1つではないし、その答えもどこかにころがっているわけではありません。自分で「解答法」や「解決法」を見つけなければなりません。大学はこうした変化に対応しなくてはならないと思います。
はりまや橋サロン(金曜日は活気があります)
高知工科大学のパソコンルーム
 問題解決能力と言うのは普遍的なテーマだと思います。高知大学としてどのような取り組みやセールスポイントが考えられますか。
石筒 最近高知大学を取り巻く環境も厳しくなってきました。高知大学で学ぶことのメリットの1つは、規模が小さい。人が少ない、つまり、少人数教育ができることです。
 これは最大で最高のセールスポイントでもあります。これまで教育現場も、多くの場合、大量生産型の教育を行うことがよく見られました。これはいわば「量」の教育です。大都市の規模の大きい私立大学は今も同じです。時代が変化しても、このシステムは経営上なかなか変えられないと思います。
 これまでは、大量生産型教育は社会ニーズにそれなりに対応して来たかもしれませんが、時代が変わってきて、高知大学の長所、少人数教育のメリット、つまり「質」の教育のメリットが発揮できるようになりました。先ほど話をした「課題そのものを自ら発見する能力」や「問題解決能力」は、じつはケースバイケースでの対応が主になります。
 これは学生一人一人を丁寧に見ていないと駄目ということです。さいわい、高知大学は、もともと大量生産型ではありませんでしたので、質を重視する教育システムは行いやすい環境にあります。
 広末さんに伺います。将来やりたいことを展望しながら学生生活を過ごされ、就労活動もされようとしておられます。そのあたり大学に期待するもの、今後自分の生き方について何かあれば聞かせてください。

広末 わたしもそうでしたが、大学へ入って将来何になりたいかは漠然としていまして、決まっていませんでした。

やはり講義や課外活動のなかで、学生と先生が何かをやることで、自分からなにか考える機会になりました。一方的な講義だけで学生生活を終わるのではなく、学生と先生が一緒に考えたりとかすることが一番重要ではないかと思います。

広末かおりさん
橋本さんの場合は入学したばかりですが、そのあたりはどう考えますか?
橋本 わたしはやりたいことがあって高知大学へ来ました。何かその夢を支えてくれたらいいなと思います。 橋本若知さん
 学生さんから「決意表明」がされました。サポートする大学側の立場は石筒さんとしてはどうなのでしょうか?
石筒 さきほど話をしました「課題そのものを発見する」「問題解決能力」はケースバイケースの対応をしなければなりません。皆を一同に集めて「こうだ」と言う具合にはいかないのです。これは学生1人1人を丁寧に見ていかないと駄目です。もともと「大量生産型」の大学ではありませんので、こういった質を重視する教育システムは行いやすかったのです。やはり各個人がいろんなニーズを持っていますので、我々なりに出来ることをしていけませんと、それこそ生き残れないと思っています。
高知大学の従来の印象は、地元経済界との結びつきは薄いようでした。これからはそうではなくなるのでしょうか?
石筒 そうではなくなるというよりも、薄いということは高知大学の存在が危うくなります。これまで以上に積極的に地域や経済界と関わる必要があります。
 地域にとっても高知大学がなくなれば大変な打撃になるのは事実です。大学のほうにも話しを持って来ていただいて、こういうことをしてみたいとか、こんな学生いないかなど、もっといろいろと活用してもらえばと思っています。
国立大学も法人化し、財政面での環境は厳しくなるようですが。

石筒 財政的には、厳しくなると思います。これは他の地方大学も同じ状況ですし、地方の自治体も近い状況だと思います。ただ、財政が厳しいからといって、教育の質を落としていったら、それはもう終りです。


 厳しいのは企業も行政も一緒なのですから、いろいろ知恵を絞って、人材育成のあり方を模索しないと いけないでしょう。私自身は、いろいろと変われるいいチャンスであると考えています。

石筒覚さん
 
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