現在大学事情
 
今週は土佐女子短期大学講師の伊藤一統さんにゲストで来ていただいています。今日のテーマは「現代大学事情」というテーマでお話を伺います。少子化や不況の波は大学というところも直撃しています。かなり変化があるように聞いていますが、そのあたりはどうでしょうか?
少子化というものが18歳人口を主要なターゲットにしてきた大学にとっては大きな問題です。戦後あまりなかった大学の閉鎖ということが最近出てきています。これからは「大学の淘汰」ということが起こってくるでしょう。
淘汰」というと、統廃合とか倒産などということが起こってくるということでしょうか?
統廃合」というケースは今までも少なくありませんでしたが、これからは学校法人自体が消滅して閉鎖されるという事態が起こってきかねないということです。
不況ということで大学の価値をどう表していくのか、就職率といったものへの大学側へのプレッシャーがあるのではないでしょうか?
就職率というものは学生の進路保証ということで大学にとっては大事な要素。就職率は 各大学にとって志願者募集のための重要な宣伝材料であったりもする。そのため、学生たちのスキルアップを図り、大学の中に専門学校ばりのセンターなどを設置する大学も少なくありません。
大学生の学力不足というのもよく聞く話で、補習などが行われているとききますが、現実はどうでしょうか。
「行われている」どころではなく、多くの大学であたりまえになっています。ただ、これは一般にいわれるように学力が低下したといういうことではなく、進学率が上がったことによる相対的なものであるともいえます。かつては大学・短大などの高等教育機関に進学をしているという現状もありますから。
進学者層が変わったことに対する大学側の対応はどうなのでしょうか?
大学大衆化の中で、「学習の仕方」を教えなければならないという現状まで出てきています。
学習の仕方を教えないといけないということはどういうことなのでしょうか。かなり勉強して大学に入っているはずですが?
「勉強」という言葉を考えてみないといけないでしょうが、学校教育の中での「正解」を追い求める形式の勉強になれてきたので、括弧抜きの問題形式、すなわち「正解」があきらかなものに対応することには適用力があるようです。しかし「理解する」「考える」ということが苦手なことが目につきます。すぐに「正解」を求めたがり、自分で考えない、考えようとしない学生が増えているように思います。
それは中・高の教育ではカバーできないことなのでしょうか?
本来はそうではないと思いますが、大学受験へのプレッシャーが強いのが現状といえるでしょう。
最近の学生は小論文や作文といったものが得意ではないようにきいたことがありますが?
文章を書くことが嫌いだからだといわれますが、個人的には、それ以前の問題だと思います。理解力、論理的な思考力の問題でしょう。
ということは読書量などは落ちているのでしょうか?
落ちていることもありますが、一概には言えません。読んでいる学生もいます。ただ、ある種の活字離れが進んでいるようには思います。
大衆化ということによる弊害の部分をご指摘お聞かせいただいたわけですが、よくなった部分はないのでしょうか?
進学率が向上し、高等教育を受ける人口が増えたことはよいことです。国連などでは将来的に大学の授業料を全部タダにしてみんなの教育機会を保障しようとまでいっていますので、これを実現する方向に動いていることはいいことですね。
高等教育が大衆化してマイナス面があげられることが多いが、大学へ行く人が増えたということは評価されるわけですね。
そうですね。ただ、問題としては、高等教育の中身まで低下してしまうのではないかということは懸念されることであります。