大災害時の救援体制について
 今週のゲストは高知市消防局警防課の神岡俊輔さんです。今日のテーマは「大災害時の救援体制について」でお話を伺います。
 この半世紀の間に高知市は大規模な水害に4度、地震に1度襲われています。実体験した市民も多く、防災意識は高いのではないでしょうか?市民としてやれること、協力することとともに、救援体制の話も伺います。
 今度の南海地震は東南海地震と同時に発生するも言われています。東海、名古屋、大阪なども広範囲に被害が出るでしょう。
一般論として「3日間の食料と水は市民で確保。4日目から救助体制が確立する」ように言われています。そう思い込んでいますけれども、現実問題としてそうなのでしょうか?救助隊は四国へ来たくても来れないのではないでしょうか?
阪神・淡路大震災での自衛隊の救援活動
自衛隊との合同訓練もされています。
 そうですね。3日間というのは阪神・淡路大震災の教訓から出た話であると思います。
南海地震を想定をしますと現実的ではありません。次の南海地震は、2分間にも及ぶ長い激しい揺れと、8メートル以上の津波が襲ってきます。そうすると山間部を走る国道32号、33号は土砂崩れ、がけ崩れで寸断されます。海沿いを走る国道55号、56号、高速道路も一部弱い地盤(蛇紋岩)を通る地域もありますので、通行できなくなる可能性もあります。
 高知新港も津波でやられます。陸海とも交通手段がなくなります。

 したがって3日間の食料では不足する可能性があります。10日間、あるいは2週間単位で考えておく必要があります。長期になると食料もそうですが、飲み水の確保が困難になります。ペットボトルで量を確保しようとすれば、非常に大変です。
 「簡易浄水器」の用意をお奨めします。1万5000円くらいの機種で、プールやお風呂、川の水など、約700リットルの浄水能力を持ったものがあります。1人1日3リットルとして4人家族だと、2ヶ月は持つ計算になります。長年ペットボトルの水を管理するよりは効率的ではないかと思います。

 救援については、今年の4月から「緊急消防援助隊」という組織が法的な整備が終り、具体的に動き始めました。
 緊急消防援助隊は、全国の自治体消防15万人のなかから選抜された救助、救出、消化、救急搬送などの精鋭部隊で、現在2210部隊、約3万1千人が登録されています。
 これは地震・台風、水害、などの災害が発生した場合、知事が消防庁に派遣依頼を行い、消防庁からの指示であらかじめ登録した近隣県に部隊を編成させ、速やかに災害現場へ救援活動に向かうものです。

 先の7月13日に発生した新潟県と福島県の水害に対しは、発生日の20時45分に新潟県が消防庁に応援要請し、6時間後である翌日の14日深夜2時には、山形県部隊が新潟県中ノ島町の罹災地に到着し、活動を始めました。
 その後、富山、群馬、長野、石川、東京などの部隊が次々と到着し、孤立した住民の救助活動を始めました。これは緊急消防援助隊としては初めての活動になりました。
 平成20年までに、おおむね3000隊規模にすることを目標としています。
 

98水害の場合も全く情報がなく、私も車で外出していました。情報ネットワークの確保はどうなっているのえしょうか?
 今のところ市民の皆さんによるこうした情報の収集はラジオ・テレビなどのマスコミに頼らざるを得ません。行政の出す避難勧告も、テレビ、ラジオなどで流されますので異常気象時には,テレビ、ラジオからの情報に注意してください。

 消防車、広報車.防災無線のスピーカーなどでお知らせしますが、やはりマスコミ情報が速報性や同時性で優れています。大雨などの異常気象時には車に乗っているときは、カーステレオではなく、ラジオ放送にチャンネルを合わせておいてください。

 アメリカの災害社会学者の調査によりと、アメリカ南部に上陸したハリケーンの通過後に実施したアンケートで、ハリケーンに対する最初の情報源はテレビだと答えた人は55%、ラジオと答えた人は33%と、放送メディアから最初の情報を得た人々が圧倒的でした。気象台や行政機関から情報を得た人は1%未満でした。

 次いで情報を伝達するメディアとしてなにを信頼したかという質問に対しては、テレビが61%、ラジオが30%で、両方をあわせると9割を超えています。放送メディアがいかに一般の市民から信頼されていることがよくわかります。

的確な情報、罹災情報の入手が、生死を分けるかもしれません。
 テレビの速報性はわかります。
 地震などでもテレビなどより、yahooニュースのほうが早いようです。インターネットや携帯電話による災害情報のニュース、災害時の連絡用掲示板(BBS)などの開設は想定されているのでしょうか?
 今のところそういう予定はありません。
 一般的には、日頃からテレビ、新聞、インターネットなどを通して、マスコミ情報を得る頻度の高い人々ほど、避難行動を早めに始めることができます。また一つの情報より複数のメディア情報をクロスチェックすることにより、情報の信頼性はより確実なものになり、早めの避難行動になります。

 危険を感じたら、多くの情報チャンネルをチェックし、行政からの避難勧告を待つのではなく、自分の判断で避難することも場合によっては必要でしょう。その際には必ず、消防や市役所にこれから避難することをご連絡下さい。119番でもかまいません。その連絡をいたければ安全な避難場所を開設します。

 消防と警察、自治体との防災訓練はよく見聞します。自衛隊との訓練などはされてい るのでしょうか?
 不定期ですが訓練はしています。昨年9月には南海地震を想定し、高知新港や種崎海岸を利用して住民の避難訓練や、救出訓練を実施しました。
 大地震のときなど、救助犬が活躍しているのを見ました。海外の例がおおいのですが、高知にも救助犬はいるのでしょうか?
 います。いますけれども被災地に向かう費用や、その他の経費はすべて自前ですので。経済的な負担が大きいと聞いています。今のところ公的な助成や身分の取り扱い、怪我をした時の補償などはなにも決まっていません。
 避難道路は誰が、どのようにして決めるのでしょうか?98水害の時は、多くの避難
道路は水没し使用できませんでした。むしろ河川の堤防は水没せず使用できました。高知市は河川の多い街です。河川の堤防を避難道路、緊急用道路に指定すべきではないでしょうか?
 そうですね。万が一堤防が切れたり、水が水する状況になりますと、かえって危険になります。指定は困難だと思います。