介護まちかど相談所について

 今週のゲストは薬剤師の川添哲嗣さんです。今日のテーマは「介護まちかど相談所について」お話しを伺います。
 (社)高知県薬剤師会は「介護お助けハンドブック」を作成し、介護サービス利用者に各種の情報提供をわかりやすくされています。また薬剤師会加盟の各地の薬局がその「まちかど相談所」になっています。
川添さんが、「介護まちかど相談所」を設置しようとした、きっかけや、「思い」は どうしたところからなのでしょうか?
 先ずは二つの現状が浮き彫りになったからです。ひとつは介護保険制度自体が難しくて、何をどこに相談していいものやらわからず困っている人たちが多いということ。 もうひとつは介護サービスを利用する中で不満を持った場合、相談したけれど解決せず困っている人、あるいはそれをどこに相談していいのかすらわからず困っている人たちが多い。
という二つの現状です。

 あるアンケート調査によりますと、
(介護サービスを受けている人の20%がなんらかの不満があるものの、そのうち大半が解決していない。しかも解決していない理由としてどこに言っていいのかわからず我慢しているというのです)
これらを解決するにはまず身近な相談所が必要です。ならば地域の人たちが普段から健康相談や調剤でよく利用する顔馴染みの薬局は、気軽に相談できる場所としてはうってつけじゃないかと思ったわけですね。薬局ですべての解決所になろうというのではありません。質問や苦情を聞いたら、それがどこに相談すれば解決するのかをお伝えしていく役目が主です。つまり橋渡し役ですね。それが「介護まちかど相談所」の主な目的です。

 
薬剤師さんと、他の介護サービスを提供されている機関(医療機関・行政など)とは「介護まちかど相談所」を設置されてから、より関係は深くなりましたか?
   
川添哲嗣さん はい。県下各地でいい連携がうまれてきています。もっともっと連携を取って行きたいとも思っています。
我々が薬局で相談を受けたことをどこに紹介するか、どこにつなげるかをきちんと把握していくことが私たちの課題でもあります。
例えば住宅改修をすることを希望している方がいた場合、介護のノウハウのある工務店を紹介したくても今ひとつわからないですよね。そんな時、そういう情報を持っているところの一つに福祉住環境ネットワークがあるわけですから先ずはそこにつないで、そこがまたしっかりした具体的相談を利用者の方としてくれればいいわけです。

 医療、介護、福祉とさまざまな職種がネットワークを作り連携しようとしているわけですから、この動きは縦割りの行政を横でつなぐものとして、今後大きな力になっていくと思いますよ。 かつ、行政主導の事業ではありませんから、薬局側もやらされているという感覚がまったくなく、行政も他職種も含めた地域医療・地域介護チームのようで、みんなでやっている感じで楽しいし、やりがいがありますね。

介護まちかど相談所を設置されたのはいつ頃からですか?
 2年前からですね。2年前の11月ごろでした。その頃スタートしました。
 もちこまれた相談は年間どれ位あったのでしょうか?
 実は初年度は15件しかありませんでした。2年目からが聞き取りをしていったこともありますが、87件ありました。

介護まちがど相談所の看板

研修を受けられた薬剤師が相談を受付ています。

「介護まちかど相談室」に市民から持ち込まれる相談内容はどのような事例が多いのでしょうか?おかまいない範囲にてご紹介下さい。介護に関するどのような相談事を、もよりの薬局へ持ち込んでいいのでしょうか?
相談窓口や、助言を適切に後日受けることが出来るのでしょうか?
 「介護保険のサービスを受けるにはどうしたら良いのでしょうか?」「おむつなど使い方はどうでしょう?」「お薬の管理の手伝いをして欲しいのです。」という相談内容がありました。

 また自立判定をされてしまった場合、介護保険のサービスが使えない。ヘルパーサービスなんか受けられないのと言う質問内容もありました。こういうふうにいろんな質問があろうかと思っています。
 
 自分が不満に思っていることも相談してください。介護サービスを受けてこういう点が不満だったとか。
 いろんな人に話しを聞いて気づきました。不満があるけれども「我慢」をしている人が意外と多いです。昨年高知県下一円の薬局の、まちかど介護相談所で介護サービスを受けている人267人に聞きました。そのうちサービスに不満がある人が51人。約20%です。
 更に51人のうち35人は解決せずに、困っているというのです。結構な数です。解決しない理由のひとつに、「不満を漏らせば、介護サービスをうけられなくなるから困る。だからじっと我慢する。」というのもありました。
 これは相談先が介護サービス事業者だけと思っている人が多いからかもしれません。実際や市町村役場や国保連合会でも相談窓口がありますから、活用してください。

 後日相談を受けれるかという質問に関しましては、だいたいのことはお伝えします。
お薬やオムツに関する相談は、薬局であらかた対応します。苦情相談や介護相談に関わることは、他職種の方々や行政に繋いでいくのが私たちの役目です。
 薬局側が勉強不足で、不適切なアドバイスが現時点であるかもしれません。そこのところは毎年研修を薬剤師会も重ねていますので、
少しだけ長い目で見てください。

介護まちかど相談所での、相談の様子です。
薬の服用相談などについて。私も訪問介護の研修で難しいと思いましたのは、介護者  の処方されている薬の確認です。壁のカレンダーに薬を貼り付けたりしていましたが。
管理は難しいのではないでしょうか?
 確かに加齢とともに物忘れや痴呆症状が出てきた場合、極端に飲み忘れとのみ間違いが増えてきます。そういう方には機械を使って、薬を朝昼晩それぞれの袋に入れ、場合によっては日付まで書き込み、カレンダーにテープでくっつけて一目瞭然でわかるようにします。しかし、それでも忘れる人はいます。痴呆の場合日付の感覚すらなくなることも多いからです。この場合は薬剤師ばかりでなく、家族、ヘルパー、お弁当宅配業者、訪問看護、そして医師など訪問する人が交代で声かけをしていくと忘れることが減ることもあります。要は各職種がばらばらにではなく、連携を取ろうとすることが大切なんですね。
 ただし、ここで要注意!薬の管理に関して、本当は自分である程度出来るのに、危なっかしいからといって第三者が本人から取り上げてしまうケースが時折見受けられます。一度薬管理をしなくなると高齢者の方はもはや自分で管理することはできなくなります。第三者が手出しをしすぎると残存能力を奪ってしまうことになりかねません。ここのところはよく考えて管理のお手伝いをしないといけません。
介護相談お助けハンドブックに「お薬が介護状態に影響することを知っておきましょう。」とあります。どのようなトラブル事例が多いのでしょう?

介護お助けハンドブックでは、薬の影響などわかりやすく解説されています。

詳しくは自分の薬を持参し、介護まちかど相談所の薬剤師に相談してください。

 痛いというから痛み止めを使えばいい、という安易な考えで漫然と痛み止めを飲み続けるとどうなりますか?胃炎、胃潰瘍を招く確立が急増しますよね。さらに薬を飲むときの水の量が少なかったらよけいそういうことが起こりやすくなります。胃潰瘍になると当然食欲ダウン、体力ダウン、力がないから介護度は増すばかり・・・という悪循環です。闇雲に飲むのではなく、痛くない日は痛み止めは飲まない、というくらいのほうがいい。
先生が出してくれているからといって、痛みが改善しているにもかかわらず飲み続けることが体を蝕むことだってある。

 利尿剤:体にたまった余分な水分を尿とともに抜くことが主な目的の薬。うっ血性心不全の方はのむことが多い。服用すると尿の回数が多くなるので、日中の服用指示が出ることがほとんど。もし間違えて夕方のんでしまうと、夜中にトイレに度々行かねばならず大変。また、血圧も多少下がるので、ふらつき転倒、骨折で寝たきりなんてことになるともっと大変。慎重を期す必要が大いにある。


 また、脱水にも注意。利尿剤を使うが水分摂取はほとんどしないと言う方の場合、脱水で体が動かなくなる。
適度な水分補給は必要。

施設や在宅での薬の服用に関して、川添さんが感じている問題点や
実際にあったトラブルについて、おかまいない範囲で紹介いただけませんでしょうか?
 在宅で薬を飲まれている方の一番の問題点は、飲んでいる薬で起こる副作用です。副作用のうちでも一番こまるのはふらついて転倒してしまうことです。例えば安定剤飲んだ人。
 肩凝りなどで、筋肉をほぐす薬を飲んだ人は足元がふらつく場合があります。転倒して骨折してしまいますと、寝たきりになる可能性があります。そういう薬の問題点を知った上で、飲んでいただきたいです。その場合はきちんと相談を薬剤師としてください。
 「わかっているから今日ははやく薬をくれ」と言うのではなく、この薬の副作用は何だろうと質問をしてください。質問には薬剤師がきちんと答えますので。薬のことをわかったうえで飲んでいただきたいのです。
 飲み合わせでも問題が起こることがあります。