浦戸湾の価値について
 今週のゲストは、高知大学理学部自然環境科学課教授の町田吉彦さんです。今日のテーマは「浦戸湾の価値について」でお話を伺います。
 五台山山頂から高知市中心部を眺めますと、市街は海と川に挟まれた都市であることが良くわかります。しかし普段私たちは浦戸湾を意識したことはありません。高い防潮堤で囲まれ、河川は埋め立てられ、暗渠になっている部分も多いからです。
 町田さんは「浦戸湾は貴重な生物資源の宝庫である」と言われています。どのような生き物が浦戸湾に生息しているのでしょうか?
代表的なものは、アカメでしょう。それから高知で言うエガニ、トゲノコギリガザミ。わたしは浦戸湾のシンボルだと思いますね。
 

アカメ。高知県と宮崎県が主な生息地とされています。

(写真は町田吉彦さん提供)


 ニロギなども浦戸湾でよく採れるのではないでしょうか。

 そうですね、8月の中ごろなどよく採れますね。

和名ヒラニロギ。高知県での地方名はニロギ。浦戸湾でよく採れます。

(写真は町田吉彦さん提供)

かつては高知パルプの廃液と家庭排水によって汚染されていた浦戸湾 。高知パルプの撤退と下水道整備などにより、自然環境はかなり改善されてように思われます。それは観察されていまして、どのように思われますか?
 実は私が高知大学の学生の頃が浦戸湾が一番汚い頃でした。浦戸湾なんか近づくまいと思っていました。
 実は浦戸湾の価値に気がついたのは、つい3年前です。そのときに初めて「浦戸湾はこんなに綺麗になっていたのか」ということに気がつきました。
 そこから本格的に調査をしだしたわけです。

 町田さんが高知大学の学生だった頃は、1970年前後ですね。
その頃、江ノ口川は真っ黒ではなかったでしょうか?メタンガスが発生したりして「西日本1汚い川」と呼ばれていましたね。 今はサテイになっている高知パルプがなくなってから、きれいになってきたのでしょうか。
 そうですね。
  今でも護岸や小型船舶で浦戸湾で釣りをされる人は大勢います。浦戸 湾には魚類はたくさん生息しているのでしょうか?アカメとエガニ以外にもたくさんいるのでしょうか?
 昔は浦戸湾には200種類はいたと言われています。私たちが調査しはじめてから、100種類は軽く超えると思います。

 100種類の魚類は今でも観察できるということですね。
エガニ
チワラウツボ(写真はいずれも町田吉彦さん提供)
できます。
国分川の洪水対策で浚渫した土砂を、浦戸湾の横浜地区へ埋め立て、親水空間をこしらえる計画があるやに聞きました。この計画に浦戸湾を守る会などの市民団体は反対しています。反対している理由はどのようなところにあったのでしょうか?
 親水空間といえば耳障りはいいのですが、そういうものは浦戸湾には必要ないからですね。浦戸湾の東側などは全部埋め立てられています。
 ひじょうに貴重な自然が残っている地区をなぜ埋め立てるのかそれを思います。

 自然が残っていることは横浜地区の玉島地区なのでしょうか?

少し古い写真ですが、浦戸湾の全景です。左手が自然が残っている地域です。貴重な干潟があります。

ここを洪水対策で河川を浚渫した砂で埋め立て「親水護岸」(?)を形成するという計画がありました。

そうなれば貴重な干潟は死滅してしまうでしょう。


 そうですね。その対岸の地域などは自然が多く残っています。
 あそこに希少な生き物がいることがわかりました。なぜそこを「埋めたる」のかということですね。
 泥地にたくさん生き物がいるのですね。泥地が汚いと言って砂を撒きますと、生き物にとって環境は良くないのです。砂浜には生き物はいませんね。

 泥地が特性の浦戸湾ですね。海水浴をしたければ、外海の手結へいくか、仁淀川へ行けばいいのですね。
 地形的にも水が濁るのが特性の浦戸湾ですね。エガニは一番のえさはアサリです。砂地になればアサリはいませんね。泥地ですからアサリが多い。ひじょうに単純なことなのです。
町田さんは、浦戸湾に生息するアカメを高知市の魚に、エガ二を高知市のカニに指定し宣伝されたらどうかと提案されています。「観光資源」としても貴重な存在なのでしょうか?
 アカメは日本にしかいない魚です。高知県と宮崎県が残っている最後である。このことを利用しないことはないと思います。
 1メートルのアカメがでっかい水槽で泳ぐ。これを県外の観光客に見せます。エガニになりますと重さが2キロから3キロあります。水槽に入れて泳がせる。見せるだけの価値は十分にあります。
 100種類以上の生き物が浦戸湾で確認されているのであれば、水槽に入れて高知市の中心街に「浦戸湾水族館」をつくるだけで、大きな価値がありますね。
 誰でも知っているうなぎ。浦戸湾たくさんいます。これが浦戸湾にいることを市民の皆さんが知りません。それからツガニ。浦戸湾が産卵場なのですね。
 季節を変えて展示する。それだけでも面白いと思いますね。
 水族館と言いますと、どうしてもペンギンとか白熊とかいるかとか、か回遊の外国の動物のイメージがありますね。
 町田さんの構想の「まちかど水族館」のような先例はありますか?

米国メリーランド州ボルチモア市中心のイナ・ハーバー。

三角形の建物が水族館です。大阪の海遊館はここと同じコンサルタントが設計しています。

街の集客装置として水族館は効果があるようです。

 多分ないと思います。動物園も貴重な外国の動物を展示しますね。水族館も同じですね。そんなことをする必要性は全くありません。足元の自然をもういっぺん見直すこと大事ですね。
 浦戸湾にこんな凄いカニがいるのだ。それ自体を皆さんが知らない。そこから自然を考えていくこと。それが大事だと私は思います。
 浦戸湾を砂で埋め立てることに反対されている理由は、「あるべきものが、そこにある。」のが大事で、人工的な環境をこしらえ、環境的に負荷をかけることは、間違っていると言うことなのでしょうか。
 泥地には泥地の生き物がいます。浦戸湾はもともと砂地ではありません。なぜこの貴重な泥地を守らないのか。それが私の一番大きな反対の理由ですね。
トビハゼ    泥の中で生息しています。 キチヌ(いずれも写真は町田吉彦さん提供)
 泥は汚いから排除して、砂地にして、子供たちを泳がしたら良いと言う意見は、「乱暴な意見」なのですね。
 私はそう思います。浦戸湾の濁りは永久になくならないと思います。
 もともと濁っていて、泥のなかで生き物が生息してきた浦戸湾。人工的に「子供が泳げる砂浜」をこしらえようとしても、そもそもが無理であるということですね。
そういうことです。
 浦戸湾は「生物資源の宝庫」だと言われていますが、泥の中に希少な生き物がたくさんいるということですね。
 泥地特有の生き物がいると言うことですね。それを見直していただきたいと思います。