高知県レッドデータブック(動物編)について
 今週のゲストは、高知大学理学部自然環境科学課教授の町田吉彦さんです。今日のテーマは「 高知県レッドデータブック(動物編)について」でお話を伺います。
 発行は高知県文化環境部環境保全課となっています。先に植物編が発刊されており、「高知県の絶滅のおそれのある野生動物」を対象に編集されています。2002年に発刊されています。
ヤイロチョウなども掲載されています。解説書によりますと、絶滅種12種、絶滅危惧1A類62種、1B類55種、絶滅危惧U類99種が掲載されているとあります。たとえばどのような動物がそうなのでしょうか?
 1A類と言いますのは、トップクラスの危ない動物です。獣でいきますとツキノワグマ。カワウソもリストアップされています。鳥ですと、猛禽類のオオタカ。クマタカとか。
 日高村の産業廃棄物施設の建設予定地でも、猛禽類が発見されたと報道されていましたが。
 
 オオタカですね。それは素晴らしい自然が残っていると言うことですね。計画を見直そうというのは「世間の常識」であると思います。
 県とすれば誰も住んでいなくて、土地の人達も賛同した計画であるだけに、それが見つかったということですね。

 そうです。そこでもう一度計画を見直しが必要ですね。それが今の時代ですよね。

収録の様子です。町田さんは足元の生き物の大切さ、浦戸湾の大切さを淡々と説明いただきました。

ホームページにて紹介させていただきましたその生き物たちの写真を使用させていただきました。本当に「あんなところに」と思う場所にたくさんの生き物がいるものです。驚きでした。


  町田さんも編集委員として参加されています。調査や編集は大変な作業であったと思います。どのような苦労があったのでしょうか?
 実際の事前調査期間は5年間でした。5年間で高知県の自然をまとめるなんていうのは不可能です。これより前の20年から30年前のデータがあってはじめて出来たのです。それだけ価値のあるものです。
 この「高知県レッドデータブック(動物編)」発刊の社会的意義はどのようなところにありますか?また発刊によって、高知県の開発や工事には自然環境への配慮が以前より出るようになったと言えるのでしょうか?

 そうですね。環境省の指導で,各自治体がこしらえるようになっているのですね。今の現在の自然環境がどうなっているかそれを知るのがひとつの大きな目的ですね。
 私の関係では河川や道路工事の場合は、ひじょうに神経をとがらせた調査をしていることは事実です。
 ということは場合によっては計画自体を見直すこともあるのだということでしょうか?
 そうです。国土交通省も環境省も言っています。そういうもの(レッドデータブック掲載の動物)が出た場合は、「十分に検討しなさい。場合によっては計画を中止しなさい」というところまで来ています。
 国の方針として出ています。
 それは文章化して出されているのでしょうか?
 「環の国づくり会議」という閣僚も入った検討会でその方針は出されています。自然再生がこれからの時代ですね。

 *「21世紀『環の国』づくり会議」(以下「会議」という。)は、平成13年2月16日付け内閣総理大臣決裁により開催が決定されたものであり、「地球の世紀」たる21世紀において、「大量生産・大量消費・大量廃棄」の社会から「持続可能な簡素で質を重視する」社会への転換を図り、地球と共生する『環の国』日本を実現するため、『環の国』の基本的あり方や実現へ向けての施策を検討することを目的とするものです。

 会議は、内閣総理大臣が主宰し、全閣僚及び10名の有識者(別記)により構成されています。

 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/wanokuni/

 ムツゴロウが絶滅した有明海の干拓事業などは、今の時代はありえないということなのでしょうか?
 ありえませんね。5年前は考えられないことでした。諸先輩たちがこしらえた計画だからという理由で強行突破していましたが、今はそれはなくなりました。 町田吉彦さん
 最近国土交通省や環境省など中央省庁が、環境に配慮した方針を誰されていることはわかりました。具体的にはどうなのでしょうか?
 内閣総理大臣が閣僚と専門家を集めて、「環の国づくり会議」を開催しました。これからの事業については「自然再生事業」をしなさいと言っています。
 今までの事業には、自然に近い環境を作るのではない。ということをはっきり打ち出しています。
 自然に近い工法と言えば、「近自然工法」が有名ですが。
 そうではなくて「自然を再生する」ことです。こういう事業をしなさい。その過程で絶滅危惧種が出てきたら、工事を再検討しなさい。場合によっては中止。と言うことを国の方針にしています。
 絶滅危惧類が発見されたときの措置はどうなっているのでしょうか?
法律の整備などもされているのでしょうか?県条例はどうなっていますか?
ごみの浮かんだ新堀川。シオマネキはこの場所で産卵し生息しています。
 県条例は制定されていません。「希少種保護条例」を検討中であると思います。
 工事前に詳細な環境の事前調査をしているコンサルタントの対応はどうなのでしょうか?その調査内容は県民に「情報公開」されているのでしょうか?

 工事が終わったあとは公開されるでしょうが、それまでは契約条項など守秘義務があり、公開されません。
 問題点は事業規模によって環境アセスメント法案に引っかかるかどうかです。 

 小規模な事業の場合は環境アセスメントをしなくていい。小規模の場合は埋め立てがされます。浦戸湾の埋め立て工事計画がそうでした。小規模ですが、あれを10回しますと浦戸湾の西側は全部埋まります。

 高知市にも 高知県レッドデータブックに掲載されている希少動物がいるのでしょうか?
 高知市のど真ん中に、アカメがいます。チワラスボというハゼの仲間もいます。シロウオもそうですね。
 河川でいきますとアカザという魚もいます。カマキリというのもいます。身近なものではメダカ。これは準絶滅危惧種です。高知市内にいます。
高知市にも絶滅希少種の生き物がたくさんいるのですね。
なんといっても驚きはアカメが生息していること。しかもこんな都市部の海でと町田さんは言われています。
 人口33万人の都市に、これだけ希少種がいることは信じられないことだと思います。