県民参加のまちづくりについて
今週のゲストは、前高知市長松尾徹人さんです。今日のテーマは「県民参加のまちづくり」についてです。「まちづくり」という言葉は、最近では市町村が合併問題で頻繁に使用されます。しかし、首長や地方議会の思惑と住民の思惑に食い違いが起こり、地方議会の決定を住民投票で覆る例なども起こっています。
 県民参加のまちづくりについて、お話を伺います。以前に松尾さんはアメリカのポートランド市の「1000人委員会」の実例を話されていました。ポートランド市では、1970年代はじめに自動車専用道路の拡充計画が打ち出されましたが、市民から渋滞や大気汚染などを懸念する反対意見があがり、市民運動を受けたダウンタウン計画(1972年)では、「自動車依存型都市から、環境に優しい公共交通依存型都市」へ方向転換が図られました。その役割をはたしたのでしょうか?高知におきましても同様の問題があったよう思われますがどうお考えなのでしょうか?
ポートランドの1000人委員会の例を挙げていただきました。もう30年前の話ですが、市民の発意とやりかたで、都市づくりが行われたことは今から思っても画期的なことであります。やはり時代の流れがあると思います。かつては「行政主導型」の進め方が主流でした。市民が目覚めていない時代はそうでした。
 それから市民参加,狭義の市民参加ですが、行政が主体ですが、市民の声も聞くという参加方式がありました。それに加えて「市民参画」という段階次にが来ると思います。計画する段階から市民の参加があることですね。一緒には入ってきていただく。市民協同といいますか、別の言葉で言いますと「パートナーシップ」といいます。行政と市民が対等の立場でまちづくりを進めて行く段階がありますね。
 ポートランドの1000人委員会の場合は、「市民主導」で行政に提案する段階にまで至っていたと思います。そういうことは高知市の行政のもとでも目指されるべきだということで、私も発言いたしました。「行政サイドから市民サイド」へシフトしていくことが、本来の地方自治の姿であると私は思います。住民自治という言葉がありますが、「自らのことは、自ら行う」ことを行政としては目指すべきであると思います。


高知県下で、先行しているまちづくりの事例はありますか?高知市などでは、コミュニティ計画や、まちづくりワークショップなども実施されていましたが?最近ではNPOなどの関与した事例などがあったのでしょうか。そのあたりはどのように考えられていますのでしょうか?
ワークショップの様子
高知広域都市計画マスタープラン(県)
高知のコミュニティ計画は全国的にも注目されていました。市民と行政が地域を一緒に歩いて行きまして、地域の課題を見つけます。そして計画を策定します。策定するだけでなく解決のためにそれを実行します。行政と一緒になってやるもの。行政がやるもの。市民が自らやるものという仕分けをしながら、まちづくりを市民と行政の「パートナーシップ」でやっていこうというのが、コミュニティ計画の策定であり、推進ですね。
いろんな施設や制度や、計画をこしらえる場合に、市民の皆さんに集まっていただいて「ワークシップ」で最初の段階から作り上げていこうということを高知市でも行ってまいりました。
例えば街中にある公園をリニュアルする場合に、「どんな公園にしましょう?」いう場合に行政側が原案をつくるのではなくて、市民と一緒になりまして、ああでもない、こうでもないという議論を進めていくというやり方をいたします。市民も参加することによりまして、出来上がったあとも施設を大切にしていただくことになります。そういう効果もあったと思います。
私は「行政プロセスの構造改革」と名付けました。行政の進め方が今一番大事な時代になっていると思いますね。
weblogを体験される松尾徹人さん
はりまや橋サロンでのweblog体験サロン
まちづくりは、有権者である大人たちと市役所との「地区対話集会」になりがちです。有権者でない子供たちとのまちづくりの事例などありましたら、ご紹介ください。ワークショップは本来そのようなものであると思いますので。
 そうですね高知市内の上町に第4小学校があります。そこは坂本龍馬が生まれたところでもあります。そこの子供たちがまちづくりに関心を持って活動をしていました。そのなかでの具体的な事例があります。城西振興市場と言いまして、通称「闇市」というのがありました。そこは道路ですので、道路に戻すために城西振興市場を廃止いたしました。
 廃止に際して随分いろんな議論がありました。子供たちも昔の市場の雰囲気が懐かしい。なんとかその市場の雰囲気を残して欲しいとの要望がありました。具体的に子供たちから提案がありましたのは、からくり時計を作って欲しいというものでした。しかもそのからくり時計の出てくる人形には、当時城西振興市場で売られていました魚とか、野菜とかに乗っかっている龍馬とか乙女ねいやんなどのアイデアでした。城西振興市場の雰囲気を残したからくり時計を作ってほしいと言う提案が具体的にありました。
 これを税金でこしらえることには議論があろうかと思われました。宝くじ協会から補助をいただき、そのからくり時計が出来上がりました。実際に城西振興市場の跡地に子供たちの発想のとうりに、出来上がっています。からくり人形が動く時の音楽も子供たちがこしらえた創作の龍馬の歌です。歌声も子供たちが吹き込んでいます。大変良い例がありました。
 それ以外にこの第4小学校では龍馬マップというものをこしらえています。龍馬が生まれた町なんですが、龍馬に関連した史跡が残っています。それをマップにして是非観光客に使っていただきたいという提案までいただきました。
 枡形川がそこの地域の川があります。最近水が綺麗になりました。メダカを泳がすのか、鯉を泳がすのかという議論も、子供たち同士でしました。結局めだかと鯉を「棲み分け」して泳がせば良いという具体的な提案を子供たちからいただきました。
 大変地域の方も含めて大きな議論をしまして、大変活性化した事例のひとつです。
私も昔、高知青年会議所時代ですが、高知市民憲章の児童による図画コンクールがありました。
高知市城西振興市場跡のからくり時計。由来の説明もプレートになっています。
今でもやっています。
その時子供たちの図画の作品は、殆どが自然共生型でした。街中の河川で魚採りをし、川で泳ぎ、木がありまして蝉取りをしています。未来型の科学都市ではなく、自然共生型の都市のあるべき姿が描かれています。10年前も今も変わっていないと思いますが。
そうですね。自然に対する憧れもありでしょう。街中で生活しているが故であると思います。
子供たちが参画されたまちづくりの紹介を詳しくいただきました。それが県民参加のまちづくりであると思います。
まさに子供たちも含めたまちづくりになることが理想です。またその子供たちが大人になれば、まちづくりの活動家として育っていくのが理想であると思います。