木質バイオマス地域循環計画とは? その2  
 
西村 今月の「けんちゃんの今すぐ実行まちづくり」のゲストはNPO土佐の森救援隊で間伐作業をされている中嶋健造lさんです。
 前回に引き続き今日は「木質バイオマス地域循環計画とは? その2 」についてお話をお聞きします。

 全国にも木質バイオマス地域循環システム構築をめざす実験プラントがいくつかあるなかで、高知県仁淀川町がうまく稼動しているという話でした。
 零細な規模の林業家、山林所有者や間伐ボランティアの人達が山林に倒木している切捨て間伐の木を小さく切って、トラックに積み込んで運搬して、木質バイオマスのプラントまで持って来ているように聞きました。
 個人林業主や山林所有者、間伐ボランティの人達が山林から林地残材を搬出運搬することは、専門家に寄ればとても難しいだろうから量も少ないだろうと言われていたそうですね。
 それがとても順調に推移しているようですがそのあたりの経過はいかがなものでしょうか?

木質バイオマス地域循環システムのプラント(佐川町)
中嶋 もともと仁淀川町のしくみも大規模に施業している企業や団地化したような間伐施業している森林組合という2つの組織で林地残材http://wbi.main.jp/web/8/8.htmの8割から9割を拠出する計画でありました。残りの1割から2割を小規模林業者、個人山林主、間伐ボランティなどに拠出していただければよいという当初の計画でありました。

 いざ事業を開始しますとやはり企業体になっているところは、人件費やいろんなコストがかっていますので、なかなか林地残材を山から出すことがしんどかったり、まとまった量が出せなかったりしました。

 それに比べまして、我々は特定の企業や森林組合だけではなく、山から林地残材を収集運搬するのはのは地域住民全員が対象ですよと言い続けて着ました。誰でもいいから山林所有者の方。山林所有者でなくても林地残材を出せる方に呼びかけました。

 その推進策を実際に実行してみました。するとそうした小規模な林業家、山林所有者、個人の人達、間伐ボランティアの人達が当初の予想を上回る林地残材を収集運搬し始めました。登録されている方だけで40人を超えるようになりました。

 この木質バイオマス地域循環システムが順調に稼動するためには、月に160トンかた170とトンの林地残材が必要です。そうすれば100%稼動になります。今年1月はそのうちのなんと150トンを個人の方だけが収集運搬されたのです。

(プラントには林地残材が山と積まれています。)

 沢山の林地残材を出す方がいますと、安定供給にもつながります。林地残材を個人の収集運搬する方が増えたために「これはこのシステムうまくいくのではないか。」と関係者が皆思い始めました。

 
西村 仁淀川町の木質バイオマス地域循環システムの実験プラントでは当初は林地残材を持ってきてくれる人達がいるいのだろうか。心配していたところが、中嶋さんたちが予測したとおりに、個人林業主や山林所有者、間伐ボランティの人達がどんどん林地残材を収集運搬してくれるようになったのですね。

 こういう事例が成功事例になれば、高知県下の他の自治体や他の地域、あるいは企業などでも応用が可能なシステムではないのでしょうか?

 
中嶋  実施しているうちにこの木質地域循環型システムは、林業をなさっている人達だけでなく、女性や子供達であっても林地残材を収集運搬できるのではないか。そう考えるようになりました。
 なぜかといいますと林地残材は短く切りまして運びます。1度子供達に収集運搬の作業をやってもらいました。

 そしたら小学4年生のグループでたくさん山へ来てくれましたが、3トンほど林地残材を集めてて運搬することが出来ました。

 そして今仁淀川町のしくみがほぼ完成に近づいています。中山間地に住んでいる人がいれば、山を所有されている人がいれば、どの地域で実践しても成功すると思います。そう確信するようになりました。

林地残材を集める作業は子供達にも可能です。高齢者でも可能です。
西村 「木質バイオマス地域循環計画」は現在高知県では、仁淀川町が先駆的事例でしょうか。また関心を示している自治体はあるのでしょうか?そのあたりの反響はどうなのでしょうか?

 東洋町での木質バイオマス地域循環システムの説明会

中嶋 現在仁淀川町への視察が急増しています。嬉しい悲鳴だそうです。あっちこっちから問い合わせもあるようです。
 我々ははこうした小規模な搬出の仕組み(林地残材を山から収集運搬する)を考案しました。直接私のところへも連絡が来たりします。是非見に行きたい。どのようになっているのかと。そのような連絡が最近は頻繁に入るように成りました。
 
西村 高知県下の自治体でも関心あるところが増えているのではないでしょうか?
 
中嶋 自治体では東のほうの東洋町です。昨年核廃棄物を拒絶しました。自然系のエネルギーで自給をすることに強い関心を示されています。(実際に3月18日に東洋町の職員の方は仁淀川町に視察に来られました。)
木質バイオマス・ペレットを使用したいちごハウス(左)
木質バイオマス・プラントを眺めています。
西村 確かにこれほど石油価格が燃料であれ、原料であれ、石油関連製品であれ上がってきますと、いろいろ皆考えるようにりますね。地球環境がどうした。温暖化がどうしたとか。
 高知県は県の面積の82%以上が森林です。どの自治体、市町村でも木質バイオマス地域循環計画は導入できますね。それは可能ですね。

 その場合導入可能な「必要十分条件」は何でしょうか?そのあたりはいかがでしょうか?

 
中嶋 まず森林がないといけません。またこの林地残材を遠くから運んでくると言うことになりますと運搬時のCO2の排出も気になるところでよろしくないです。
 近場で「自給する」という形になります。最終利用するエネルギー(熱源・電気)の利用先が必要です。電気ないし熱ですね。

 熱の場合は木質ペレットにするので運搬は可能です。やはり地元で熱源を利用できるところがあればいいですね。電気利用する施設があればいいですね。

 それとその地域に林業が多少あって、山林所有者がそこそこおればいいのです。高知県はたぶんどこでも木質バイオマス地域循環システムの導入は可能であると思います。

 
西村 これは大きな話になりますが「エネルギー革命」になりますね。昔は高知県は森林県で日本1の木炭の産地でした。当時はエネルギーの「地産地消」が可能でした。
 今の時代は石油は遠く中東から運んでこないといけません。原子力発電とて原料のウラン鉱石は外国から運んでこないといけません。

 発電設備は火力も原子力も海の近くに立地し、送電コストもかかる。それが今のエネルギーとか発電の現状ですね。そうではなくて「エネルギーの地産地消」というようなことも聞こえますがそういうことになりますね。

 
中嶋 昔は木をフルにエネルギー利用していましたね。(薪であるとか木炭であるとか。)
 今はエネルギーに木を使わないのは石油のほうが安くなったからですね。最近は石油が高騰しまして、逆に木を使えるようになりした。

 ただ木は限界のある資源です。使い切ることはできません。ある程度ですが活用可能です。昔のクリーンなエネルギーがもう一度今の時代に蘇ると。そういう時代にとうとうなったのだと。喜んでいます。

 
西村 そうしますと昔話の桃太郎の話でしたでしょうか。「おじいさんは山へ芝刈りに行きました。」というところがありますね。木切れを拾って薪にして燃料として使用していた時代が日本にはありました。

 燃やしたところで木ですのでダイオキシンは出ませんね。燃やせば灰が出来ます。その灰も木を燃やしてできたものですから、有機農業にも活用できそうですし。

 
中嶋  木質バイオマス地域循環システムでは林地残材を活用します。木質ペレット化して燃料化させますが、それはピュアな木を燃やしますですので全然有害ではありません。灰も有効利用できます。
 この仕組みでは捨てるものはありません。損する人はいません。本当の循環システムになりますし。いいことづくめです。
 
西村 燃料にするためにむやみに森林を伐採して(皆伐)して、かえって山が荒廃してしまうのではないか。禿山になるのではないかとも心配されるひとが一部にいます、その心配はないのでしょうか?
間伐も激しく無計画にしますと禿山になってしまいます。
間伐跡が崩落しています。
中嶋 その可能性はあると思います。故に行政側が歯止めをかけないと行けないと思います。限度がどこなのか。調査をしないといけないと思います。
 林地残材がどれ位あって、どのたりまで収集運搬が可能なのか。

 この事業は全山皆伐(全山伐採)してまでやる事業ではありません。それは行き過ぎです。そこの歯止めの仕組みはなんとかしないといけないと思います。
 循環利用というのはそのなかで活用する。限度のなかで活用すべきものであるからです。

 
西村 だから「地域循環型」というのは、「再生可能な資源として」森林を再生し、活用するための事業です。
 
中嶋 個人の人が林地残材を収集運搬しますとお金になります。全部伐採しますと、それで「終わって」しまいます。長年にわたり収入を得たいと言うことでありましたら、今林業界では「長伐期施業」というものを提唱しています。

 100年伐期、120年伐期とか非常に長いスパンで山を管理していく。そういう観点で山を管理しますととてもいい森林保全・水源涵養になります。

仁淀川の水量の豊富さと清水は山の豊かさがあってこそ。豊かな森林資源が、豊かな水資源を確保できるのです。

(写真は仁淀川)