木質バイオマス地域循環計画とは? その1 
 
西村 4月から新番組「けんちゃんのいますぐ実行まちづくり」をスタートします。
 この番組は高知で活躍している実践的なまちづくりをされている人をゲストにお招きし、高知市の1市民である「けんちゃんがとことん聞くというものです。

「話しの話し」や「まちづくりごっこ」では満足しません。高知をおもしろく、活き活きとした街に変えようとする意欲のある人に出演をお願いしています。

 番組1回目の「けんちゃんの今すぐ実行高知のまちづくり」のゲストは中嶋健造lさんです。中嶋さんは以前「けんちゃんのどこでもコミュニティ」時代にも出演いただきました。その時は棚田や田舎暮らしやグリーツーリズムのお話が中心でした。

 中嶋健造さんはコンサルタント会社に勤務されていまして、全国各地のまちおこしの事例にも詳しい人です。ご自身は休日にはNPO土佐の森救援隊の隊員として高知の森林を涵養するために間伐ボランティアとして活動されています。

 今日は「木質バイオマス地域循環計画とは?その1」お話をお聞きします。
 中嶋さんは間伐をされていて思いつき、実行されていた事業のように聞きました。木質バイオマス地域循環システム。聞き慣れない言葉です。そのあたりはどうなのでしょうか?

中嶋健造さん。コンサルタント会社勤務。週末は間伐ボランティア、棚田での活動、焼畑など徹底した「ロハス」な生活を堪能されています。

今回の「木質バイオマス地域循環システム」もその活動の中から山や地域を観察されていて自然に生まれたとのこと。

その着想を仁淀川町に提案。行政を動かしました。既成の発想や組織にとらわれなく仁淀川町の関係者も動かれたので、実務的で説得力のある木質バイオマス地域循環システムになったのです。

中嶋 まず木質バイオマス地域循環システムですが、どういうしくみなのか簡単に説明させていただきます。
 今まで山に捨てていました残材。用材(建築用,建材用にならない木の部分)にならないような材。あるいは切り捨て間伐材。そうした(やっかいもの)ものを「エネルギー転換」させます。電気や熱エネルギーとして活用する。そういうシステムです。
 
西村 わたしも間伐作業体験を昨年1度しました。自宅のある地元の二葉町自主防災会間伐体験事業で物部の山中へ行きました。

 チェーンソーを使用して木を切り倒します。間伐した木はどんと倒れます。その倒れた木は持ち帰るのではなくそのまま放置。ほたくり(そのまま放置する)です。木質バイオマス地域循環システムはその「ほたくり」の木、倒木を利用するということなのでしょうか?

二葉町自主防災会での間伐体験作業。切り倒されそのまま(切捨て間伐)をしました。
中嶋 そうですね。現在高知県では「切り捨て間伐」というやりかたの間伐作業が多いです。それはひょじょうにもったいないですね。
 それから用材(木材)を出した後に残る材も山にそのまま捨て置いています。この材木も使えるのであれば使いたい。こうした(いままで現地に打ち捨てられたいた木材)も活用されるしくみである。

 それでその目的は、1つは今世界中で深刻な問題になっている「地球温暖化」対策として最大活用できるのではないかと言うことです。
 現在投機もあるのでしょう。重油や石油などの化石燃料が高騰しています。その対策にもなります。
 それからいままでやっかいものとして山に放置され捨ててあった材(木材)が燃料になる。それはひょっとすると山に居住されている人達の雇用にもつながるのではないか。
 あるいは山間地の産業の1つが出来るのではないか。そのようなことでこの木質バイオマス地域循環システムが最近大変注目されて来ているのです。

中嶋健造さんたちは間伐された木を山中に放置せずなんとか運搬しようと知恵をしぼりました。
西村 ということは先ほどの話しですが、製材の時発生する木のくず。それから木材を建材として使用する場合は使える木の部分は意外に少ないですね。切り落とされてそれらは捨てています。
 それらを活用した木質バイオマスという事例は聞いたことがあります。中嶋さんの提唱されている木質バイオマス地域循環システムは、それだけではない仕組みなのですね。
 間伐作業で切り倒された商品価値のない木を、最大活用するということなのですね。
 
中嶋 製材過程で発生する端材などを活用することは既にしくみになっています。問題は大量に山間部に捨ててある切捨て間伐材や端材です。この材が活用できる。
 ではどうしてそれがわかっていながら活用することが広まらなかったのか?
 原因は燃料として石油の代替にならないといけないのですが、石油より高ければ広まりませんね。残材ですから安く供給されないといけない。材材を山間部から出してこようとすると、林業の主要な担い手である森林組合などがその作業をしますと高いコストがかかります。そこがネックでありました。
 山に放置されている材木を集め、運搬する収集運搬するしくみが「コストの壁」がありシステムとして成り立ちませんでした。
(原木さえ運んでプラントまで来れば破砕し、チップ化しますので熱源や発電、木質ペレット製造のシステムは企業の技術開発でほぼ確立されています。後の利用は出来ます。1番の問題は中山間部の森林からいかに林地残材(切捨て間伐材や端材)をきちんと定量集め、安定供給できるのか。川上の部分が1番の問題であり、従来の木質バイオマスのしくみはそこがなおざりで高コスト体質。事業主体が常に補助金を搬出業者(主体は森林組合)に拠出続けないと維持できないしくみでありました。)
西村 木質バイオマス地域循環システムの概略的なお話は聞きました。今ひとつわからないのは、間伐します、木が倒れます。多くはほたくり(放置)されます。理由は商品価値のない(用材として価値のない)木を山から運び出したところでコスト倒れになるからですね。
 中嶋さんたちは間伐した木を小さく切って、トラックに積み込んで運んでいって、エネルギー資源や発電資源に転換するしくみをこしらえられました。具体的な話をお聞きしますと仁淀川町でうまく稼動しているやに聞きました。
 そのあたりのしくみをお話ください。
 
中嶋  仁淀川町がバイオマスエネルギー地域システム化実験事業というものを、経済産業省の外郭団体NEDOの補助事業を受けました。実験事業ですね。
 木質バイオマスの事業というのは「林地残材」を燃料にする事業は全国どこも成功事例がありません。国が実験事業をして「成功に導きなさい」ということで全国7箇所で実験事業をしています。

 その1つが仁淀川町です。小規模な林業現場からどうやって林地残材を搬出してくるのか。そのしくみ、無理なくできるしくみを土佐の森救援隊に対して、仁淀川町からシステム化の依頼がありました。それを受けました。

 
 
西村 さきほど言葉がわからなかったのですが「林地残材」という言葉を使われていますね。これはどういう字を書いて、意味はなんでしょうか?

中嶋 「林地」に「残った」「材」と書きます。
 
西村 」の「」面に「」った「」木だから、林地残材なのでしょうか?
中嶋 通常の林業では用材用(多くは建築用)として木を森から搬出します。木は切り倒しますと、根っこに近いところから伐採します。根っこにちかい部位は曲がっています。
 用材にならないので1メートルくらいは切り捨てられます。そこから上が用材になります。後先のほうですね。こちらも細くなっていますので、切捨てられますね。
 用材にならない根元の部分と、先の部分。これが「林地残材」です。(今までは大量に森林に放置されていました。)
 
西村 なるほどそれが林地残材ですね。野菜で言えば葉っぱも切り落とし、根っこも切り落とす。大根なんかも料理に使うのはそのなかの部位だけですね。材木もそうなのですね。
 中嶋さんたちの構想は「全部活用しよう」ということなのですね。
 
中嶋 それで結構です。
 
西村 それを仁淀川町ではそのようにして活用して上手く行っているのでしょうか?
 
中嶋 実は林業界では用材(建築用材)を山から出して来ても下手したら赤字になるという状況なのですね。それで言うなれば商品価値すらない「ざっとした」(そ雑な)材を、高性能林業機械を使って(グラップル等)出してきますと、当然コストがかかりますね。」(機械の焼却費用もかかりますし)
 林地残材ですので購入する側はなるべく安く購入したい。その安価費用以内で搬出出来るのかと言いますときわめて困難でしょう。だから林地残材の収集運搬が全国なかなかうまく行かなかったということです。

 けれどもわれわれは出せる人達がじつはたくさんいるのではないかと思いました。土佐の森救援隊はボランティアで間伐作業をしています。人件費がかかりません。林地残材を運ぶことが出来ます。

 しかしボランティだけではなかなかきちんとした量の林地残材を出せません。土佐の森救援隊では個人の山林所有者の人達が参加いただいています。山を所有しているが林業技術がない。将来は林業をしてみたい。山を活用したいという人達が土佐の森救援隊に体験として作業に来られています。結構数は多いのです。

 それで自分達は彼らと話をしましたら、どうもこうした「個人林業家の卵の人たちは自分で林地残材を山から出せるのではないか。」とそう思いました。

 では本当にそう思う人たちが仁淀川町に存在しているのかどうか調査してみたらどうだろうか。そういうところから最初取り組んでみました。

 やっているうちにかなりいるのではないかと感触を掴みました。

西村  確かに知り合いのなかにも個人で相続したりして多くの山林を所有されている人達がいます。昔はうらやましい存在でしたでしょうが、今は皆さん困っておられます。そうした人たちはみじかにいるものです。

 二葉町自主防災会の間伐ボランティアで行った山は香美市物部でした。確か民有林でした。好きに伐採して間伐してくれ、」切り倒しでもかまんき。とうことでした。
 さきほどの知り合いの山林所有者も「ほたくり」(放置)されていまして、山に手を入れたい(間伐したいが)がその経費がないし。山は荒れ放題。その人達が集り、やるきになればなんとかなるものでしょうか?

 
中嶋 それはわたしも感じていました。
 仁淀川町が町内の全所帯すべてに調査をしました。うち3分の1の人達が山林を所有しています。その山林主の人達が「山をなんとかしたい。」と言っています。山からの木の搬出も過去はかなりしていたそうです。
 「今後林業技術をきちんと教わったらたら材の搬出をしたいですか?」と聞きました。かなり多数の山林主の人達が「搬出したい」と回答いただきました。

 ボランティアに参加してもいいと言われる人もいました。調査で山をなんとかしたいという思いの人達が想像以上にいることがわかりました。

 

 

 それを専門家の人たちに報告いたしました。すると「そんな殊勝な個人がいるわけがない。個人で林地残材を山から出すのは無理どろう。」という反応でした。


 土佐の森救援隊として活動していますと、こうした個人林業家のひとたちや山林所有者の人たちはやる気があると思いました。仁淀川町での調査どうりなのか実証したいので「ぜひ林地残材の搬出の実験をお願いしよう」と取り組みが始った次第です。

(グラフ青表示が個人からの搬出)