棚田の価値について
 今週のゲストは、中嶋健造さんです。中嶋さんは会社に勤務される傍ら、いの町成山にて、棚田をこしらえています。
 今日のテーマは「棚田の価値について」でお話をお聞きします。かつては日本各地に見られた棚田。最近ではあまり見かけなくなりました。中嶋さんたちのグループは、その棚田をもっと広めようと活動をされています。
 棚田のある風景にはやすらぎを感じます。景観面でも美しい風景のようです。
 山の環境保全などに棚田の効用があるようなのですが、具体的にはどのような効用があるのでしょうか?
 棚田に稲が出来る風景を見ましたら「気持ちが荒れる」と言う人はいませんね。
 秋に穂が実って、その脇に彼岸花、高知ではシーレーと言っています。赤い花が黄金色の脇にある風景を見ていますと、自分なんかは興奮してしまいますね。
 山の保全。水利面などに棚田は効果があるのでしょうか?防災面ではどうなのでしょうか?洪水調整機能があるのでしょうか?

 棚田が沢山あれば水を沢山貯めることができます。
 最初田んぼを作りはじめて、棚田に通い始めてだんだんとわかってきたことがありました。今棚田をつくっているところは自分が子供の頃よく遊んだところです。


 その棚田の間を流れている谷がありまして、子供の頃はこの谷が冬でも水をたたえていました。今は冬になりますと水が枯れてしまいます。何故だろうかと思っていました。


 どうもそれは棚田のようです。この地区は成山(なるやま)小野(この)と言うのですが、じぶんがっみた感じですが、昔あった棚田の75%くらい今は放棄されています。荒地になっています。水を貯める機能が少なくなりまして、その影響で冬に水が谷に枯れるのでしょう。


 ということで水源を涵養する役割が森林と共に棚田には相当あるのではないかと思いました。ゆっくりと水を棚田は流します。棚田が荒れますと表面を水が流れて早く川へ流れ込んでしまいます。谷の水を枯らさない水源涵養の機能が棚田にはありました。

(いの町成山の棚田の風景)

 いの町成山と言えば、いつも大雨が降るところで有名です。大雨が降りましても棚田は大丈夫なのでしょうか? 日本の森林は農業者がこしらえてきたように言われています。水田と棚田がそのシンボルでした。棚田や水田は「ダム機能」があるのでしょうか?また地下水の供給源になっているのでしょうか?
 本当の大雨では崩落の可能性はあるでしょう。でもそこそこの雨では被害が起きたという話は聞きません。かなり防災面でも棚田は効果があるのではないでしょうか。
 棚田に水を溜まるとじわじわと地下にしみ込むか、ゆっくりと谷に出ていくようです。一気に大雨が降りましても流れ込みません。下流域にとってはダムの機能があるようですね。
 長野県の事例を聞いてきました。そこには集落の上に棚田があります。そこなどは、上の棚田から水が地中にしみこみ、しみ込んだ水を下の集落で飲み水として使っています。そういう凄い文化もありました。
田起こし前の棚田の様子。一面蓮華が咲いています。
草取りをする傍らで田植えの風景。不耕起農法そのものです。
   
 いの町成山の棚田では、どのようなものが栽培されているのでしょうか?
それは特色のある農産物なのでしょうか?

 最初になぜ成山なのかということですが、実は米が美味しいところです。美味しい米をつくりたいなというところがありました。作り始めてから調べてしました。すると成山地区の背後に蛇紋岩がありました。超塩基性の岩です。ここを通る水はマグネシウムやカルシウムが豊富です。これが非常にお米を美味しくしています。
 佐川の有機農家が友人にいます。彼が穂が出てからマグネシウムを入れていました。そうすると米がおししくなるからだとのことです。成山が美味しいのが蛇紋岩のおかげであったのいですね。


 それからいろいろと調べますと全国には「蛇紋岩米」というのが何箇所かで販売されています。10キロで8000円とか9000円とかするようです。それだけ美味しくて評価の高い米ができると言うことですね。
 もうひとつですが、「あらきもち」というもち米ですが、これは在来種です。昔からあった臭いのする餅米です。非常に美味しかったです。伝統的なものと地質とを上手く利用したものがいの町の成山にはありますね。

 中嶋さんが棚田に関わられて見えてきたものはなにでしょうか?またそれを広めようという意図はどのようなところにあるのでしょうか?
 やはり里山文化ですね。田んぼをつくるために水を引くこと。育てるためにいろんなことをします。みんなで協力もします。本当に地元の方が生活する場、成山という小さなエリア野中で、サイクルしながら、ものをこしらえ食べて、生活をしています。そこには調べれば調べるほど、面白い文化がありまして、人が居なくなり過疎化が進んでいます。
 それにより「文化」が消滅してきています。なんとか残したい。環境保全機能があり、修験涵養の機能のある棚田を、町から来て遊びでもいいからつくりに来て少しでも貢献できないか。そういうのがあってやっています。
棚田をつくる仲間達。成川順さん(左から2人目)もいます。
 何人のグループで活動されているのでしょうか?
 今年で3年目です。約30人ほどです。今年もだいたい同じぐらいの人数で活動しています。それに地元の農家の方がにお世話になっています。結構楽しく活動しています。

 

元気もの交流会での棚田活動の様子です  

                 

http://genkimono.net/
 http://genkimono.net/
* 写真は中嶋健造さんに提供いただきました。