「女性」を強調する報道の実態は? その2
 
 今週のゲストは高知女子大学学生の西森美菜子さんです。西森さんは大学にて「言語とジェンダー」を研究されています。
 今日のテーマは「女性を強調する報道の実態は? その2」でお話しをお聞きします。西森さんは卒論でもテーマとして報道のありかたを取り上げられています。新聞各紙を読み比べ、分析もされています。
高知新聞、朝日新聞、毎日新聞を15日間読んで調査されたと聞きました。その女性表現についてお聞きします。
 そのなかで「女性冠詞」「男性冠詞」という表現がありますが、それはどのような言葉なのでしょうか?
 おもに、職業などの上につけられ、例えば「女性教師」のように、「女性…」「女…」「女子…」と、前に付けてあらわされることばです。男性冠詞も同様です。「男性・・・・」「男。・・・」と同様です。性別冠詞と言います。
 皇室報道で、女性の皇位継承が議論されています。この問題について西森さんは個人的にどのうように考えられますか?私などは、イギリス王室のように女性にも皇位継承権があってもおかしくないとは思いますが・・・
皇室報道でも「女性冠詞」は頻繁に使用されているようです。
 はい私も、女性に皇位継承権があってもいいと思います。今回のような事態が起きないと、皇位継承権は、日本でも議論すらされずに、誰も危機感や疑問を表に出すことなく、男性の皇位継承が続いていたと思います。
 観点を変えた質問をさせていただきます。
最近「負け犬」という言葉が流行りました。30歳代で、仕事は出来るが未婚で、子どももいない女性のことのようです。ただネーミングしたのは女性作家でした。この言葉についてはどう思いますか?
 女性の場合は、カテゴリーの分け方が複雑です。子どものあるなし。お金持ちかどうかとか。教育があるとかないとか。細かいようです。男性の場合は、経済力があるかないか。の分類ぐらいですのに。
 そうですね。私が思いますには、「負け犬」という言葉は、決してほめ言葉でもないし、言われてうれしいものでもないと思います。しかし、実際に30歳で未婚、子供なしの女性が増えてきているようで、「負け犬といわれたくなければ、早く結婚しなさい」とのうらの声が聞こえてきそうです。
 しかし、そんなことよりは、「負け犬」というカテゴリーを作ることで、世間的に認知され、負け犬に当たる人たちは、他にもいるようで自分だけではないと仲間意識みたいなのができ、生きるのが楽になるようです。しかし、30歳未婚子供なし、は男性でもあるだろうに、女性だけに使われるということに疑問を持ちますね。
 逆に「勝ち犬」というのはいるのでしょうか?
 聞いたことはありませんね。言いませんね。あえて言うのならセレブという言葉なのでしょうか。
 お金持ちの男性と結婚して高級住宅地に住んでいるカリスマ主婦でしょうか。子どもを慶応幼稚舎あたりに入らせて、将来は社交界へデビューでもさせるのでしょうか?。あまり関係のない世界ですね。
話は変わりますが、ことさら「女性」を強調する裏には何があると考えられますか?西森さんのメディアの調査の結果、判明したことがありましたらお構いない範囲でご披露下さい。

 やはり、男が基準、という前提があると思います。「会社員」という言葉が新聞の見出しに載っていました、男性・女性のどちらだと思いますかの問いには、アンケート調査でも8割近くの方が「男性」と回答してくれました。


 「冠詞がついていないものは、一般的に男性」だという考えがあります。そこへ、女性が進出してくると、異例、珍しさ、とく異例として、女性が強調されるのだと思います。

西森美菜子さん
 最近言われています「少子高齢化」の原因が、「女性の高学歴化と就労率の上昇にある。」という識者もいます。また日本では未婚の女性に対する圧力が強いのではないでしょうか?子どもを生まないかは女性自身です。
 かつてフランスなども出生率が低下した時代がありました。社会が離婚した女性達や、事情があって結婚できずに出産された女性達を認めたため出生率が上昇したとも言われています。日本はまだまだ結婚して子どもを生むという形態が普通と言う意識が強いように思われますが・・。
 最近では「できちゃった婚」とも言われるように、日本では、子供ができたら結婚しなくてはいけないというような、風潮があります。世間体を気にしてしまうと思います。家庭にいて当たり前、社会で働く女性の出産に対して十分な対応ができていないように思います。
 家庭にいる女性の割合が高い国ほど少子化が進んでいるというデータもあります。日本より先に少子高齢化を経験した、西欧社会では、仕事と家庭の両立、短い時間で生産性をあげ、家庭や地域での生活が十分送れる社会の仕組みができているようです。例えば、男一人で10時間労働より、男女で6時間働くと、短い時間で終わり、合計12時間で経済的にも豊かになります。
 なるほどそれこそ「ワークシェアリング」ですね。
 「高知女子大」と大学名にも「女子」とついています。その名称についてはどのように思われますか?確かに「〇〇男子校」という学校名は聞いたことがありませんが
 やはり、女性が特異例として表現されていると思います。同じようなものに「女子高生」とは一般的によく使われますが、「男子高生」は聞きなれません。伝統的なものだと思います。
 いまや、学生は男女ともにいるのが当たり前ですが、むかしは「学生=男性」というイメージがあったのでしょう。女性が高学歴になったというのは、最近になってよく聞くようになりましたし、大学という言葉自体で意味は通じるものですが、あえて、それに女子とつけるのは、特別な要素を含んでいると思います。
大学では男女ともに当たり前にいます。学部や学科を問わずそういう傾向になりつつあります。