高知工科大学は発展しているのか
今週のゲストは高知工科大学電子・光システム工学科の野中弘二先生です。今日のテーマは「高知工科大学は発展しているのか?」です。高知工科大学は、「公設民営」方式で設立されました。ユニークな技術に特化した工科系大学です。しかしその実情はよくわかりません。少子化のなかで受験生の確保はどうなっているのでしょうか?

高知県は特に高齢化・少子化が進行しています。先進県ですね。県内からの受験生も絶対数の減少傾向がはっきりしています。県内受験生は全体の3分の1ぐらいです。しかしここ数年の教育研究や就職活動が評価いただいていまして、四国3県からの受験生が増加し、高知県内の受験生の減少分を補っています。
卒業後の学生の就職率がこの不況にも関わらず良好であると聞いています。その理由はどういうところにあるのでしょうか?おかまいない範囲で、対策などをお話ください。
まずは企業出身の先生が多いことです。その先生たちは自分の得意とする分野で、「これは」という学生を送り込みたいと思っています。但し送り込んだ学生が信用を削るようになりますとまずいですね。出して恥ずかしくないようになるまで「鍛え上げよう」という意識が強いと思います。
それは学生を鍛え上げないと、バックアップしていただいている企業や、出身企業に対して、面目がたたないので「学生を仕込む」ということですね。
そうですね。
高知工科大学の年間授業料が120万円だと思いますが、「対費用効果」は何であると言えますか?高知工科大学の特色、電子・光工学科の特色を簡単にお話下さい。
対費用効果と言いますと「、学生の立場」、「父兄の立場」、設立母体である「県民の立場」があると思います。
 まず学生の立場から言いますと、受験も楽で、遊んで暮らしたいと思っていたのに、こんなはずではなかったと思うことも結構あります。それで私たちは出口のこともで考えて学生を鍛えます。遊んで4年間過ごしたいという学生にはちょっと辛いでしょう。
 逆に多少学力が今一歩でも学ぶ意欲や、好奇心がある学生の場合は、私たちもなんとか育てたいと思っていまので、幸せではないでしょうか。
 父兄の立場からしますと確実にお得です。高校時代に気持ちの上で「萎えて」いた学生も、良い意味で「化けた」学生が何人もいるからです。
 県民の立場から言いますと、最初200億円の初期費用を出していただいたのはかなりの負担と感じていらっしゃるでしょう。私たちもこれには感謝しています。しかしその後は「箱物」の場合ですと、何百億かけて建設して、運営費が年何億と言われています。毎年赤字を垂れ流すことがありますね。この大学に関しましては最初のうちは赤字補填はありました。だんだん減少しましてここ2年間のランニングコストの運営費の補助金は県からいただいていません。それで年間50億円の運営をまだ少しだけ赤字ですが、とんとんに近いところまでもってきています。
学生からの授業料で、高知工科大学の運営経費は賄えるようになっているのでしょうか?
研究開発や、企業の協力などの波及効果も良いように伺っていますが。
実は授業料だけでは、大学の運営経費は賄えません。6割5分ぐらいですね。残りは大学の研究業績を評価いただいた企業や国からの補助金で賄っています。それであわせてトータル50億円の収入がありまして、収支がとんとんになっているのです。しかも学生からの納付金ですが、学生の7割は県外から来ています。下宿代や生活支出、授業料や研究費用などを支払っていただいています。県の若年人口も2000人近く増えますので、県経済に対する経済波及効果はあると思っています。
県民の一部には、「まだ多数の県職員を工科大学に出向させている」とか、「公設民営の第3セクターを未だに県が面倒みているのはいかがなものか」という意見もあります。波及効果への疑問の意見もありました。でも先ほどの野中さんの話を伺いしますと、2000人の若者が高知県に来ていただいていること。政府や企業からの研究補助金で稼いでいることはよく理解できました。
他の県外の私立大学と比較し、高知工科大学が誇れるものはどういうところなのでしょうか?
さきほどお金の話がでました。県から派遣されている職員は優秀です。その給与等も含めてとんとんで賄っています。研究・開発に対する補助が県外から来るのもそれだけ成果を先方が認めていただいているからです。そこそこ情報発信とか、研究の成果とかは、県外の他大学に比べてアクティビティ(活動・活気)は高いのではないかと思います。
野中さんの電子・光工学学科は、外国の大学との提携はされているのでしょうか?
みなさんアメリカのことが好きなのでMIТ(マサチューセッツ工科大学)との提携をPRします。私自身はあまり交流はありません。アジアの優秀な学生をこちらに来てもらって学ばせたいと思っています。
1年半ほど前には、タイの王立タマサート大学に2ヶ月客員教授をしていました。この時の教え子が2人今、高知工科大学の大学院生で来ています。下手な英語の授業でもなんとか感動してくれたのではないかと思っています。まずは「国際化戦略」は成功したと思います。
高知工科大学では、教官も「起業」をされていると聞いています。野中さんもそうしたベンチャーの志向はあるのでしょうか?
私は企業出身ですが、起業にはあまり興味はありません。起業に興味があり、実行されている先生方は工科大学はかなり多いですね。大学での起業数では、全国ベスト5に入ると思います。