おじさんとして見た社会や若者について
今週のゲストは高知工科大学電子・光システム工学科の野中弘二先生です。今日のテーマは「おじさんとして見た社会や若者について」です。野中さんは大学で常時若者である学生とお付き合いがあります。社会観や、生活観に違いはあるのでしょうか?
野中さんは、若者達の現在興味をもっている事柄を追体験できますか?
ご自身の若者時代となにがどう異なっているのでしょうか?

違いは意識はしていません。若い人が興味があること、気になることにはなるほどなと思うことはあります。例えばDragon AshやM-floのようなライブには僕も行きます。最近の漫画もよく読みます。ファッションは時々理解できないことがありますが、いつの時代でもこれは世代間ギャップです。今に始まったことではないでしょう。

私にすれば、成人式で騒ぐ下らない若者はいても、イラク戦争に反対して街頭へ繰り出す若者がいないのは物足らないですね。

私の頃は社会問題に過敏で集会をしたり、ビラを配ったり、活動をしていましたが。今の若者は関心がないのでしょうか?

 
その辺は気にしています。興味があることではないのです。私が心配しているのは、興味がない、気にならないことが彼らに見えている部分が多いなと思います。モラルにしろ、学習意欲にしろ、社会参加にしろ気にならないことには深まりません。今少し考えていて好奇心一杯の人と、10分先のことしか考えない人とに分かれてきていると思います。
世代間ギャップなのですか?
いいえ違います。子は子供の鏡だといわれています。父兄と話していてもそれは感じます。子は親の世代の社会の雰囲気を「増幅」していると思います。親の世代が物事に関心がない傾向がありまして、子供の世代でより加速されて出てきているのではないでしょうか。私の好きな作家で宮本輝さんも同じようなことも書いています。
親の世代は地域社会が崩壊して、市民社会のはしりのようなことが、社会の隅々に出てきていた時代です、子供の世代はそれがより純化して出てきたのですね。得手勝手さ、自分勝手さが出てきたのでしょうか?
市民社会であれなんであれ、社会を意識しておればまだいいのです。作家の宮本輝さんは、40代、50代ですでに社会のモラルのようなものが崩れています。それが子供の世代で再生産されるとき、どんどん社会がまずい方向に行くのです。私もそう思います。
日本の未来は暗いのでしょうか?
そうではないと思います。若さの特典で倒れるまで考えてもらいたいですね。
社会に対して真剣に考えるのはとても大事です。ゲームでも学校の制度でも変だなと気づく。倒れるまで必死で頑張ってみる。それは若者の長所です。私たち大人がこしらえたどんよりとした社会の雰囲気で薄めないで生きてほしいと思います。
現在の若者気質はどうなのでしょうか?不景気もあって学生はまじめに勉強しているように聞いていますが?
これもさきほど申し上げたように「二極分解」しています。やらなければならないことがありますと、それについてはやりますというタイプ。将来を見越してこうやるのだというタイプとに分かれますね。
若者とか、おじさんとかの区別は関係ないと私は思っています。野中さんはどうでしょうか?
やはり若い世代のほうが感受性は高いと思います。若い人達は私たちの若いころもそうでしたが、「おじさん」という色眼鏡で見ています。それに対してわれわれが若いものに対して「今の若いものは」と色眼鏡で見ることには逆に敏感です。

若い人に対しても「気遣い」をされているのでしょうか?
 説教するときに、「近頃の若い者は」「おれたちの若い頃は」という言い方ではなくて、「お前の今の行動は、俺から見るとずれている」と言います。若い世代はどうのという言い方ではなく、「お前の今のやり方は変だぞ」という言い方をします。
人からで決め付けるのではなく、個人の立場で物をいうべきなのですね。
そうです。しかし実際には各学年100人はいますので、どうしても頭のなかでステレオタイプに分類してしまってまずいなと思うことがあります。
野中さんから見て現在の日本社会はどう思われますか?イラク問題や、続く不況、倒産など暗い話ばかりです。明るい話題は昨年の阪神のリーグ優勝ぐらいでしょうか?
別に日本に限ったことではありません。今まで後回しにしていた問題が出てきた難しさもあります。ただ今まで科学技術でもスポーツでも不可能とされてきたことが翻ったこともありました。石油資源もあと50年と言われていた事もそうですね。今は直面している問題が長いからあきらめた時点で破綻してしまいます。
あきらめた時点で敗北はありますね。あきらめなければ明るい社会はある。と思われますね。
私はそう思いますし。思いますね。あきらめて興味がなくなったことのほうが怖いと思います。
地方でもどこでもそうです。人それぞれのこだわりを持ったこどわりを持ち寄れば何とかなるのではないでしょうか。
個人個人が得意技でがんばれば何とかなるのでしょうか?
いやそれだけでは不十分ですね。他の人が他の分野で頑張っていることを応援しないと駄目ですね。NPOやNGOなんかがその種かもしれません。