共産党は何が変わったのでしょうか?
今週のゲストは日本共産党高知県委員会委員長の佐竹峰雄さんです。今日のテーマは「共産党は何が変わったのでしょうか?」でお話を伺います。佐竹峰雄さんは、このたび高知県委員会の委員長になりました。高知県でも20年ぶりの委員長交代だそうです。
 先般日本共産党は党大会を開き、大幅な綱領の改正や政策を変更したように伺いました。何がどのように変わったのでしょうか?
今度の党大会では、43年ぶりに党綱領を大幅に改定しました。何よりも国民の皆様によりわかりやすくしたというのが大きな特長です。それから43年間には日本と世界の情勢が変わりました。この間のいろんな研究にもとづいています。以前の綱領も「資本主義の枠内での民主主義革命」ということを言ってまいりました。その路線を引き継ぎながら、もっとわかりやすい形で国民の皆様に呼びかけていく旗印が出来たと考えています。
共産党で言えば「天皇制の存続」問題や、「日米安保条約」や「自衛隊の存続」も他の政党とは異なる見解を持たれていました。そのあたりの変化もありましたか?
これは少し誤解もあるようです。日米安保条約は日本を戦争の道に引きずり込むものです。私たちは日米安保条約を廃棄する立場です。このことが国の独立のために大事なことです。この点は変わってはいません。
 天皇制の問題と自衛隊の問題はちょっと性格が違います。天皇制は今の日本国憲法にも存在が明記されています。私たちは特定の人物や家族が国民のなかで特別扱いされる言うことは民主主義と相容れないと考えています。最終的にはなくしていく方向の展望を持っています。しかしあくまで国民の合意が必要ですので、今の憲法の下では天皇制を存続をし、憲法を守ると言うことを なによりも重視しています。
 次に、自衛隊の問題です。「違憲の存在」です。但し現実に存在しているのは事実です。民主的な政府が出来たら、その日から手順を踏んで国民の合意を形成しながら、自衛隊を具体的になくして行きたいと考えています。現在の段階では、海外に派兵したり、あるいは一層増強したり、そういう動き、あるいは有事法制の動きは食い止めて行かねばならないと考えています。

そのあたりの見解を聞いていますと共産党はかなり変わったなと思いました。

国会が開会する時に、天皇が読み上げる式を共産党の国会議員はずっと欠席されています。

今後も継続して欠席するのでしょうか?

(しんぶん赤旗)写真

憲法上で書かれている国事行為を厳密に守るいうことが必要であると考えています。天皇が国会の冒頭にそのお言葉を述べるということは日本国憲法に基づくものではありません。その点には私たちは厳密に反対している立場です。

新しい党綱領を制定されたように聞いています。従来の共産党は日本社会を革命して労働者の独裁政治を樹立するように書かれていました。その手段は選挙を通じて民主連合政府を樹立するとあったように思いましたが・・・。その方針が変化したのでしょうか?

かつて、私が高校生だった頃(1970年代)に、共産党は「民主連合政府」構想を打ち出していました。旧社会党が連立の対象であったと思います。
しかしその連立相手は消滅いたしました。共産党の方針では選挙で国民の支持を得て多数派になることでしょう。単独政権が望ましいでしょうが、連立政権もありえます。どのような政党や政治勢力と連合されるのでしょうか?

今までの民主連合政府の場合も旧社会党だけが連立の対象ではありません。日米安保条約に反対して国の独立を目指す。大企業本位の経済政策を改めて国民本位の経済政策をとる。議会制民主主義を守り日本国憲法を守る。という言う一致点での政治勢力が集まって連合政府をつくろうという考え方でした。
 現在もその考え方は変わっていません。これだけアメリカの言いなりの政治が酷い。大企業、財界本位の政治が酷いことですから、この政治に反対する国民の方々は客観的には多数派であるはずです。今は「支持政党なし」の人が多いですが、その人達とも共同していけば、やがて連合すべき新しい政党も生まれてくると思います。そういう展望を持っています。
「未来社会の展望」を党大会でも言われました。どのような未来社会を目指されるのでしょうか?共産主義社会なのでしょうか?
今度の綱領改定の目玉になった点が「未来社会の展望」です。今までは社会主義、共産主義の社会。低い段階が社会主義で、高い段階が共産主義という風に言ってきました。これはカール・マルクスの研究が進展してきた結果を踏まえて発展させました。「未来社会というのは生産手段の社会化を基礎にして、労働時間の大幅な短縮を図る」。つまり生産力が大いに発展して人間が僅かな労働時間で大きな富を得ることが出来ます。大幅な労働時間の短縮は現実に今の社会でも出来ることです。そうしたら人間が残った時間を文化やスポーツや様々な創造的な活動にしていくことができます。人間の能力が全面的に開花する社会。文字どうり自由と民主主義が人間の能力が開花する自由な共同社会。その社会が社会主義、共産主義の社会だということを打ち出しました。
 今も若い人達のなかに「社会主義、共産主義」はまずくて酷いものだというイメージがあります。ある意味衝撃的に受け取られているようです。
中国は先般全人代(全国人民代表者大会。日本の国会にあたるような機関)が開催されました。そのなかで、「私有財産を認める」ということを明確に打ち出しました。改革開放政策と、社会主義は矛盾しているように思います。そのあたりは日本共産党はどのように考えているのでしょうか?
全人代(全国人民代表者大会)が開催された人民大会堂での日本青年会議所と中国共産主義青年団との交流会(1986年) 北京天安門広場。1986年の様子。改革開放政策が取られていますが、まだ人民服が目立っていました。
   
私たちは中国やベトナムの今の進み方、つまり市場経済を尊重しながら、そのなかで、社会主義を目指していく考え方、その路線は大事であると考えています。まだ本格的にこの地上に社会主義は実現した国はないと考えています。
旧ソ連邦は社会主義は、社会主義とは縁もない人間抑圧の社会でした。それが今の私たちの評価です。私たちも私有財産は未来永劫に社会主義社会になっても認めていきます。生産手段の社会化に基づいて、計画的な経済運営を図っていく方向を目指します。それが私たちの社会主義論です。だからベトナムや中国の今の方向は新しい試みだし、世界に大きな影響力を持っている国ですから、資本主義を脱した体制で、「そういう」方向に進んでいく。試行錯誤もあり大変だと思いますが、これは非常に注目しているし、私たちも前進を期待しているところです。