牧野植物園の魅力
 今週のゲストは、高知県立牧野植物園学芸職員展示デザイナーの里見和彦さんです。
今日のテーマは「牧野植物園の魅力」についてお話を伺いします。
 牧野植物園は昭和33年に開園しました。私も小学校や中学や高校の遠足で行きました。成人して高知へ帰郷しても、県外の友人を必ず案内します。
私が子供の頃の牧野植物園と今とは大幅に展示や内容が変わっているようです。子どもの頃はガラス張りの温室が印象的であり、後はその下にある広場で弁当を食べることでした。化石かなにかを机の上に置いた展示館が植物園との関係がわかりませんでしたがあったようでしたが・・。恐竜館はどうなってのでしょうか?

 僕も小・中・高と、春の遠足はいつも牧野植物園でした。ふもとの護国神社から歩いて山を登った思い出があります。今でも温室や銅像のところに立つと遠い青春が甦ります。初恋の人とか・・。高知のみんなにそれぞれ思い出があるんじゃないでしょうか。


 化石館は昭和43年に寄贈を受けました平田茂留さんの化石標本の展示館で、今は資源植物研究センターになっています。化石は大切に保管して研究者の調査に対応しています。そのなかには今は絶滅した古代の植物の姿がそのまま保管されています。


 恐竜館というのはタルゴザウルスというコンクリートでこしらえた立体像があります。子供に人気のある恐竜の立体像はいまも同じ場所に立っています。

牧野植物園の温室です。
植物園では歩道の周辺も植物が植えられ、それ自体が展示になっているようです。内部の展示とは関連があるように植えられているのでしょうか?

 園地の植栽は園地スタッフの腕の見せ所です。普通、植物園やフラワーパークは植物を人に見せるために、つまり人間の都合で植えてます。うちは違うのです。植物に生きたまま園地に来てもらって、その植物が住みやすい場所に植えているんです。人間はそれを見せていただくというスタイルです。


人によってはバラ園がないとか、雑草園じゃないかとかいう方もいますが、極めて自然の姿に近いすれすれの演出をしているんです。これが僕たちの考える自然との共生の植栽なんです。ひとりで園地を歩くとほんとに心が落ち着きます。昆虫も野鳥もたくさんいます。
 写真には写らない美しさがあります。ちょっと心が疲れたかなという時は、牧野に遊びに来てほしいです。

牧野植物園の園内マップです。園内はなだらかなスロープですので、高齢者や障害者も移動には苦労しません。
 牧野植物園に勤務されている人たちはどのような仕事を分担されてしているのでしょうか?研究もされているのでしょうか?

 植物の研究スタッフ、園地の植物スタッフ、僕たちの企画教育関係スタッフ、そして総務(事務)のひとがいます。研究者たちは牧野博士が道を開いた分類学や、薬や食品などの資源になる植物の分析などをしています。ミャンマーや高知県全体の植物を調査して植物誌を作るプロジェクトも進んでいます。


 園地スタッフは一年中お日様の下で真っ黒になって植物の世話をしています。渇水の時は心配で夜も寝られないといっています。企画教育は展示会やイベントの企画運営、広報をやっています。
他にも図書室の司書やショップの運営スタッフ、受付のスタッフ、そして総務・経理の人たちが我々を縁の下から支えてくれてます。で、総勢40人くらいいます。とにかく忙しくてわいわい言いながら一年が過ぎます。

 今後牧野植物園を舞台にしたイベントはありますか?
  行事の紹介もお願いします。

 いま「関根雲停 植物画展」という企画展を開催してます。江戸〜明治の博物画の鬼才で、今にも動き出しそうないきいきとした作風がたまりません。東京ではかなり注目されてますが、植物の絵はすべて牧野博士が持っていましたので今回が日本初公開です。


 屋外には生の植物が、室内には神業的な植物画。両方を楽しんでほしいと思います。
 8月6日からは「夏の風物詩 朝顔展」普通の朝顔から江戸時代から受け継がれてきた奇妙な形をした変化咲きの朝顔までを一同に和室で展示します。で8月のビッグイベント「夜の植物園」についてはまた明日お話します。


 うちの企画以外では高知で活動する劇団「笛の会」による牧野富太郎の芝居が来年1月に上演されます。また「小学4年生」という雑誌の10月号では世界を変えた日本人たちシリーズで牧野富太郎が漫画化されます。没後50年を2年後に控えて、牧野博士、いま来てますよ。来てる来てる。

 牧野富太郎さんは小学生や学生との交流を大事にされていました。小山園長も小学生時代に牧野富太郎さんに会い影響を受けたと聞いています。現在の植物園にもその精神は継承されているのでしょうか?「総合学習」の時間に植物園は活用されていますか?
 はい、今は高須小学校の4年生の総合学習の時間で牧野植物園を舞台に、クイズやゲームを通して植物や自然に興味を持ってもらう授業をしています。また、最近出版した「まきのポケット」という本を県下の全小学5年生に配布しています。植物の不思議さや牧野さんのことがわかりやすくまとめられています。総合学習の時には教材として活用しています。
 記念館のショップで100円で販売していますので、興味のある方はお買い求め下さい。園内を散策する時のお供に最適です。
 「出前植物園講座」などはされているのでしょうか?「牧野富太郎博士が棲んでいる植物園」とのことですが、それはどのようなところなのでしょうか?

 小学校へ私たちが出かけていき、生徒と一緒に校庭の植物を採集して、標本を作ったり植物にまつわる話をしたりというのをよくやっています。高校生向けでは、学校の回りの植生調査を本格的におこない、3Dのイラストにパソコンで描き起こすなどの授業もやりました。牧野博士がおこなった植物指導の精神を受け継いで、自然の素晴らしさをみんなに伝えたいと思っています。
また「牧野富太郎博士が棲んでいる植物園」というのは、牧野博士は生前、自分は草木の精であるといっているんですが、植物園の中に牧野博士は今も妖精になって棲んでいるんじゃないだろうかということです。


 昔、比叡山の延暦寺へ行ったとき、山の登り口に「この山の一草一木に伝教大師が住まわれています」と書いてありましたが、牧野植物園もそんなふうに牧野博士が今も棲んでいると思えるようなところになればいいなあという願望のことです。

 
小冊子「まきのポケット」牧野博士のことや、植物についてわかりやすく解説してあります。100円で販売されています。
* 挿入しています写真は里見和彦さんの承諾を得まして、「牧野富太郎写真集」(編集・発行高知県立牧野植物園)より転載させていただきました。
*四季の園内ガイド 牧野植物園ホームページ

  http://www.makino.or.jp/dr_makino/frame/f_makino.html