言論の自由は大丈夫なのでしょうか?
 今週のゲストは朝日新聞高知総局の篠塚健一さんです。今日のテーマは「言論の自由は大丈夫なのでしょうか?」です。
 1987年兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局に押し入った男が、散弾銃を乱射、小尻知博記者(当時29歳)が殺害されました。当時赤報隊の犯行とされていました。
 言論機関を暴力行為で威嚇すれば「言論の自由」は危うくなります。現代の日本は大丈夫なのでしょうか?
実際に篠塚さんが取材されていまして、身の危険を感じたことはありますか?
 身の危険と言いますか、高知へ来てからもですがある集会を取材していますと「朝日新聞に記事を書かせるな」と言われて拍手が起こる様なことがありました。そんな集会もありました。いろんな形の評価があることは知っています。
 それは例えば、高知県庁、高知市役所、高知県警などは大きな部署ですが、記者会見の時などに、質問をさせないような態度に出ることはありましたか?県警などは「預かり金」問題の対応などいろいろ言われたりしていましたが・・・。
高知県庁
高知市役所
 県警と高知市役所は担当していませんのでなんとも言えません。高知県政に関しては、みなさん丁寧に答えていただいています。こちらの県庁の方はひじょうに対応が良いなと私は思っています。
 参議院選挙の時も、マッドアマノ氏が小泉純一郎首相をパロッたキャラクターをこしらえていました。それをインターネットのホームページなどなどで公開したことに対して、厳重な抗議を自民党側がしてきました。
 かなり執拗にしていました。これなんかも危ういように思いましたのですが・・・・・。
 過敏になっていたのだと(自民党側が)思います。危機感もあった裏返しもあったのではないかと思いますね。

 パロディにはパロディで返したら良いと思いますのですが。
 政府側に余裕がない証拠だとご指摘もありました。

私などは皮膚感覚で危険な状況ではないかと思います。篠塚さんは取材現場で、先ほども伺いましたが感じられることは他にありましたか。


 特にこれはという変化を、この9年間で感じられましたでしょうか?

(マッド・アマノ氏の作品「小泉鈍一郎」)2004年7月

 
 変化ですか。目に見えることは正直ありません。かなり健全に取材できていると思います。メディアを見る眼も厳しくなっています。そういう意味で緊張感はありますね。よりしっかり取材しなければならないなと思います。
 メディアもそれほど弱くはありません。不当なことがあれば、それは不当のことだと言っていますし。そのあたりの緊張関係はあるので、地方の現場のなかでは、そこまで感じることはありません。それが私自身の本音ですね。
 最近企業や官公庁の内部告発を奨励する法律にしましても、国の案では「行政機関に言っては良いが、報道機関などに言うことは認めない」という具合になっているように以前番組に出演いただきました弁護士の小松英雄さんに伺いました。そういうふうな法律が成立したのいでしょうか?
 公益通報者保護法案というものです。成立しました。(2006年4月に施行されます。)。かなり問題点があるということで、弁護士の方も含めて批判したのにも関わらず成立しました。
 しかしメディアに言ったらおかしいという法律はおかしいですね。国の機関が公正中立であるという幻想にとらわれているのでしょうか。そういう意識はあるのでしょうか。
 そうですね。正当にやっている分は良いのでしょうが、身内意識というものが何度かやっていれば生じます。円滑に機能するかどうかですね。
 
 言論の自由と言うことですが、大きな企業や行政の中で内部告発する大変な勇気が必要ですし、告発者本人の身分保障も必要です。なかなかそうでなければ不正を暴くことはできませんね。
 三菱自動車はなぜあんな事態になってしまったのか。東京電力でも施設の点検のときに不正工作をしていたと外国人の人が内部告発していました。それで初めてわかり、全体の利益になりました。もっと保障される仕組みがないと言論の自由は大丈夫ではないと思いますね。
 メディアとしては、ひとついえるのは、「ニュースソースを徹底して守る」ということです。その姿勢をもう一度確認しなければと思います。
 だからニュースソースが守られていれば、言っていただいても、守られるわけです。ということですね。自分たちの持っている仕事の根幹を足元を崩さないように、ちゃんと自覚して仕事をしなければいけないなとメディアに携わっている人間として思います。
 言論の自由の問題もあります。その場合によく政治家や地位のある人の
プライバシーの問題も良く出てきます。そのあたりはどのように考えて折られますか?
 公人ですから、出来る限り公開することは当たり前です。高知県で橋本知事に限って言えば、条例を越えるような形で、ご自身で公開されています。そういうことも政治家の人は可能なのですね。
 そのあたりの度量を見せていただきたいと思います。
橋本大二郎高知県知事自身の公人としての情報公開度は、かなり評価できるものがあります。
 私もコミュニティFMのこの番組や、インターネットなどもしていますが、それほど言論の自由が制約されることは感じません。篠塚さんの場合はどういう感じを受けられていますか?
 根本的には変わってはいないと思います。漠然とした不安は感じますね。それも自分の取材活動というより、社会全体のなかに内包しているようなものです。何かものが言いづらくなるのではないか。なんかある種のなんでしょうか、それを圧力と言うのでしょうか、幅が狭くなって来ているようですね。
 許容量ですね。この間の3人の日本人が現地武装勢力に拘束された事件がありました。そのときも「非国民」だとか「自己責任」などとネットの掲示板に書き込んだ連中がたくさんいると言うことも、言論の自由は大丈夫かなと思いました。
 難しいところですね。逆に言えば言論の自由だから書けるところもありますね。わたしが直接取材したわけではないですけれども、メディアとしてどう向き合うかと考えればやはり当時一番心痛されていたのはご家族でしょう。
 ご家族自身が心理的に参っているところに「自己責任」とか言われることがあまりにも辛いものだったのでしょう。私自身であれば、あのタイミングで書くことはないと思います。
8月番組に戻ります