四国文映社の仕事とは?
 今週のゲストは四国文映社の田辺高英さんです。映画についていろんな角度からお聞きしようと思います。今日のテーマは「四国文映社の仕事とは?」でお話をお聞きします。
 映画「日本国憲法」などシネコンなどで上映しない映画を配給されているようです。
映画配給会社がありますが、そのネットワークとは別のしくみで活動されているのでしょうか?


 四国文映社は、映画を高知県に普及することを仕事にしています。四国文映社で上映している作品が劇場で上映される配給のシステムと違った仕組みで上映されているわけではありません。


 映画館と同じ映画普及の仕事ですが、映画館という箱(場所)を持ちませんので県下の公共のホールや学校体育館などに映写機材を持ち込んで移動上映をしています。劇場と一番違うのは、映画会をその地域の人たちと一緒に作り上げていくという点です。

田辺高英さん

 現在年間600本くらいの映画が日本国内で上映されていますが、高知県のような地方では映画館で上映される作品はその4分の1ぐらいです。しかし、残りの4分の3の作品中には、優れた作品がたくさんあります。(昨年のキネマ旬報ベストテンに選ばれた邦画10本、洋画10本のあわせて20本のうち、高知県で劇場以外で上映されたのは5本でした。)


 そのような優れた作品をいろんな地域で上映したいとする制作者や配給者と、高知県のさまざまな地域で、そんな作品を「地元で観たい。」「観させたい」という人たちを結びつけ、事業として上映・普及活動をしています。

 全国各地に「映画センター」という組織がありますが、関係があるのでしょうか?
「すぐれた映画を全国でくまなく上映することを目的に」活動しているようなのですが・・・・

 映画センター全国連絡会議は四国文映社のような活動をしている全国の組織が集まって、1972年に結成されました。
 各地域の映画の普及を、(文化)運動と位置づけ、「映画センター運動は、国民が求めるよい映画を、職場、地域、学園と結びついた事業活動を通じて、すべての市や町村にまで、普及できることをめざしています。」(映画センターの指針)
 1970年代、日本映画界はおおきくかわりました。(1971年大映倒産、日活ロマンポルノ路線など)大手映画会社は製作を縮小し、配給と興行が中心になり、アメリカ映画中心の洋画優位が進みました。そんな中、日本の良質な映画製作を、その映画の全国的な上映普及の面で支えていく組織として活動してきました。
 大手のように全国的な配給・上映のネットワークをもたない独立プロの作品を観客届ける全国組織です。現在全国の4分の3の都道府県にありますが、文化の多様化やメディアの変化になど、映画業界がかかえる状況はわれわれも同じで、問題も多いです。
子供の頃小学校の体育館などで映画を見たことがありました。映画館以外での映画上映をされているのでしょうか?またその映画は良質の教育映画が多いのでしょうか?

ある小学校の体育館での映画会の準備の様子。壇上にスクリーンを設置。カーテンを閉め、暗くして映画を上映します。

子ども達は映画となると授業以上に集中して鑑賞するようです。

 

 学校の鑑賞授業として学校の体育館などで映画会をしています。四国文映社は、創業46年になりますので、学校で四国文映社の上映する映画を鑑賞いただいた方々が高知県内たくさんいらっしゃると思います。


 高知県では、総見といいます。授業として鑑賞していただくので、人権・平和・障害者理解などテーマももった作品をご紹介し上映しています。(ただ、啓発のみが先にたつのでなく、映画としても優れている心に残る作品を紹介しています。)
 学校で映画を上映した後、「いい映画をありがとう」と先生や生徒達に言われることが、上映活動をしていて嬉しいことですね。
 また、PTAの文化活動として、「PTAおやこ映画会」を各PTAに提案に、開催していただいています。  

 

   熊本県で長年鑑賞教育の担当をされてきた上田精一先生は、映画の持つ力として、3つ上げておられます。

    1.いつもとは違った空間で、映像と音・・・記憶が鮮明がのこる。

    2.人間的感情―思いやり・優しさ・正義感・連帯感―が育つ

    3.追体験(戦争体験など)、実際に体験できないが、映画を通じて体験。

  この映画の持つ力を教育に生かしていきたいと思っています。


 平和運動をされている団体が上映されている映画にも関わりがあるのでしょうか?
四国文映社の名前を時折聞いたことがあります。
映写技師をされる田辺高英さん
野外映画界でのスクリーンの組み立て風景です。
 
 上記にありますように、平和運動をしている団体に限らず、県内のさまざまな団体や個人の映画や、映像を使った活動やイベントなどに四国文映社が関わっています。
 映写の仕事は特殊ですし、また興行的なことも含め、市民団体がつくる上映実行委員会に参加したり、お手伝いしたりしています。
 また、四国文映社が積極的に上映実行委員会を呼びかけ上映会を行うこともあります。
 会社ですので、事業としての面をもっていますが…。
 野外の映画会などを商店街や町内会などで企画したいと考えています。おおまかな 予算などおかまいない範囲で教えてください。以前出演された大西みちるさんですが、帯屋町公園で野外映画界を上映したように聞きましたのですが・・・・。
高知コミュニティシネマ主催の野外映画会の様子です。
 上映会の料金は、映画のフィルム代と映写技師料を合わせたものになります。
 フィルム代は、作品によって違って、人気のあるもの、最新のものは高いですし、また、上映会の規模によっても違います。
 映写技師料も、機材によって違います。大会場の大きな機材だと15万円から、それ以上かかります。

 イベントの上映会では、ご予算に合わせてその予算に合った作品を紹介させていただいています。
 1回上映なら、あわせて20万円から35万円くらいが多いです。
  規模の小さい上映会なら、10万円くらいで開催しています。

 映写基材はトラックなどに積載し、会場で組み立て設置します。
*写真は田辺高英さんに提供いただきました。