映画文化の街にするために
 今週のゲストは四国文映社の田辺高英さんです。映画についていろんな角度からお聞きしようと思います。今日のテーマは「映画文化の街にするために」でお話をお聞きします。
 高知市の現状は他の地方都市同様に中心街の映画館が次々に閉館し、郊外量販店に併設されたシネコンに映画館が移転しています。その傾向は良いことなのでしょうか?
私が子供の頃育った伊野町にも複数映画館がありました。それが今は見る影もなく、高知市中心街からも映画の灯が消えようとしています。田辺さんのお立場から見てどうしてそうなってしまったと思われるのでしょうか?
 他のメディアが発達し、ビデオ、DVD,ネットで映画を見ることが広まったことが一因です。それは地方都市でも楽しめますね。でもその情況はとなりの韓国も同じで、その韓国は映画産業盛んです。映画文化に対する国の支援政策がしっかりしているからだと思います。
 世界的に映画が駄目になっているのではなく、映画の「可能性」はあると私は思っています。
映画文化に対して、国の政策がしっかりしている国、例えば韓国やフランスでは映画が盛んです。日本もその点、政府は考え方を改めていただきたいと思います。
日本もやっとここ数年、映画振興政策が位置づけられ、国も支援に動き出しました。製作者の経済的な支援、ロケ地などの物理的支援、また、できた作品の鑑賞機会の支援など行われています。
今、メジャーの作品だけでなく、独立プロの製作する映画も元気がでてきていると思います。
閉館した中心街の老舗映画館(沖縄県那覇市牧志)
郊外量販店内のシネコン(那覇市天久地区)
シネコンはヒットする映画を「五月雨式」に上映しているにすぎないのではないでしょうか?映画の上映本数はむしろ作品数は少なくなるのではないでしょうか?
 シネコンと言うのは一つの場所に、映画のスクリーンを複数持っていることを言います。例えば高知県では東宝シネマズでは、スクリーンが9あります。数年前までは各地のシネコンでは殆どハリウッド作品の上映が大部分でした。8対2ぐらいでした。
 それに対し既存の映画館は6対4くらいの割合でした。確かにヒットする作品が映画館で上映されます。同じ作品が長期間上映されまして、あまり人気のない作品はシネコンで上映されません。
  スクリーン数が増えても、ヒット作品がスクリーンを長時間占拠しますし、シネコンでは系列に関係なく他館で上映されているヒット作が上映されるので、全体として上映本数が増えることはありません。とここまでは2ヶ月前の状況で、全国の動きと同じですが、今だけ見ると少し違うのです。
  高知ではシネコンオープンから1年で、東映、松竹が撤退してしまいました。観客が交通の便など、条件の良い劇場を選ぶのは当然ですから(シネコンで上映されました東映系、松竹系の作品とも鑑賞者数は増えています、)、仕方のないことですが、街中から映画館がなくなるのは別の意味で映画鑑賞の機会が減るわけですので、寂しいです。

 高知のシネコンがオープンするまでは、高知市の許可がおりるまでだいぶ時間がかかりました。その間に、高知では「こんなシネコンになってほしい」などの意見が、新聞などで紹介され、またそれに応えて、劇場側からも単館系映画の上映もプログラムに加えるなど、他県と少し違った形でオープンしました。

 それに加え、現在、松竹の直営館はなくなりましたが、その支配人が独立して個人経営の映画館を引き続き始められたことで、高知市中心街にミニ、シアターが誕生した形になっています。よって今高知県には、シネコンのメジャー系、街中の高知シネプラザ、ポポロ東宝、あたご劇場の単館系、美術館やシネマサークルの上映会、それに四国文映社の移動上映や、数は減りつつありますが、各地域の文化ホールの自主事業など、上映作品は増えていると思います。
 
 ただ個人経営や、サークルの上映会は、いい作品をやっても運営がアップ、アップの状態ではあります。
 このいろんな映画が見れるという今の状況が、過渡期の一時的な現象ではなく、上映作品やファンの層の棲み分けが進んで,高知の独自の状況として定着すればいいと思います。

田辺さんがモデルとする「映画の街」はありますか?日本でも外国の事情でもかまいません。ご紹介いただけないでしょうか?
 わかりません。高崎なんかがそうなんでしょが、高知市も地方都市としては、映画活動の盛んなところです、映画サークルが定期的な映画会を行い、また、数年前はそのサークルが集まってフィルム・フェスティバルをやってました。また、四国文映社が劇場以外での上映会を県下の市町村で行っています。 田辺高英さん
 街で映画の撮影が行なわれ、映像作家なども街に住んでいる。そういう街になればよいのでしょうか?高知は可能性があるのでしょうか?
 旭ワンコインシネマの「赤ぱっち」に代表されるように、もうそうした動きはあり
ます。8月にも高知の映像作家の上映会がありましたが、そうした活動と、昨年11月に発足したフィルムコミッションの大手を呼び込む活動がつながれば、面白いと思っています。
 また、映画制作についても、高知で作って、高知で稼ぐというのもありだと思っています。
 以前番組ゲストで出演いただきました大西みちるさん。高知コミュニティシネマで活動されています。連携などはされないのでしょうか?

 お互い協力しながらやっています。
 目指す方向は同じですので、できるだけ支えていきたいと思っています。今までの既存の映画館と違い、一方的に映画を上映するのでなく、市民とともに映画会を作っていくという形で、根付くといいです。

 良い映画をみんなで見たい。高知県民に届けたい。という想いは同じです。お互い納得しながら活動できればいいなと思います。今までも高知コミュニティシネマのみなさんとは、いろんな形で意見をかわし、活動もしてきました。
 良い映画を届けるという目指す方向は同じです。四国文映社としていろんな面で協力したいと思います。今までの既存の映画館と異なり、一方的に映画を上映するのではなくて、市民と共に、映画会をつくっていくようなりたいものですね。
 コミュニティシネマさんの映画だから見たいという風になれば良いと思います。

高知コミュニティシネマは高知市帯屋町公演で野外映画会を開催しました。
 田辺さんのお話の中で、フランスや韓国は国策で、ハリウッド映画の上映を制約し、自国の映画人を養成することをしていますね。
 韓国などは映画の文化を輸出することにより、韓国製品に対するイメージアップに活用しています。ひいては自動車やIT関連製品も全世界に販売しようという国の政策のようですね。それが上手くいっているように思います。
 日本の場合は民間任せで、映画館では殆どハリウッド映画ばかりを上映。私も映画については良くわかりませんが、拙い現象ではないかと思います。そのあたりはどう考えられますか?
 今の日本の女性達が韓国映画に夢中になり、韓国への旅行者も増えました。韓国へのイメージも凄くよくなりました。日本は今韓国一色みたいになっています。韓国やフランスが国として文化を世界に輸出して、工業製品もまた輸出しています。当然のことだと思います。
 日本はその面は遅れています。日本は「映画は娯楽興行の形態」として、それぞれの映画会社、配給会社に任せる形です。国が支援することはあまりありませんでした。
 ただここ数年ようやく国が気がついて、遅ればせながら映画振興を、国の文化政策として位置づけ、支援がはじまりました。今後映画をつくる側、見せる側、見る側それぞれにとって環境が整備されれば良いと思います。
安芸市での「釣りバカ日誌14」の上映会の様子
大月町での「釣りバカ日誌14」の上映会の様子

 映画「あした元気にな〜れ」

2005年9月23日〜9月30日まで、高知市掘詰高知シネプラザ。(掘詰バス停すぐ南)にて「あした元気にな〜れ」を上映いたします。

 前売り券 大人 1200円(当日1800円)

       子ども 800円(当日1000円)

 主催  ユナイテッド・パワーシステム

      四国文映社(電話088−822−7466)

9月番組に戻ります