三位一体改革のなかでの福祉政策は?
今週のゲストは、高知大学人文学部社会経済学科教授の田中きよむさんです。今日のテーマは「三位一体改革のなかでの福祉政策は?」です。
 国は最近三位一体改革と称し、地方への交付金の削減を打ち出しました。しかし権限や、税源の委譲は進んではいません。福祉のありかたはどう変わるのでしょうか?
おおよそ日本経済のなかで、福祉部門の経済規模はどれくらいあるのでしょうか?
またその規模は拡大しているのでしょうか?縮小しているのでしょうか?
福祉部門と言いますか、社会保障給付費といいますが、これは80兆円規模になります。これまでも増えてきましたし、今後も増えていきます。経済に占める規模で言いますと国民が得た所得、賃金とか利潤を国民全体でトータルしたもの。税金や社会保険料として負担している分が約4割です。そのうち帰ってくる分、社会保障として帰ってくる分が2割ちょっとですね。国民所得のうち4割を税金や保険料として負担しています。そのうちの半分が社会保障として帰ってきています。
国が三位一体改革とやらで地方への交付金を減らし続けた場合、地方の自治体は「倒産」するところもあるのではないでしょうか?税源が地方に委譲した場合、なにか活用する方策はありますか?
基本的には補助金のカットがあります。補助金とは使用目的がはっきりしてそれ以外に地方は使うことの出来ないお金ですね。それが削られました。それでその次に使い道をはっきりしないものとして地方交付税交付金があります。ところがこの地方交付税交付金もカットすると言われています。では地方に残されたものはなにかと言いますと、国の税源を地方に移すということになります。
地方の裁量が広まることになります。しかし地方はもともと所得が大きくない県などに税源が委譲されましても、そこからの税収はあまり大きく望めない。という問題があります。
民間企業に福祉は担えるのでしょうか?採算が合わないことはしないのでは?という疑念を国民は持っています。
民間企業は利潤を得ることが本質です。それが得られなければ事業規模を縮小し、撤退することになります。ただ民間企業のなかにも地域のために、地域の生活のためにはなにがなんでも営利だけを追求するのではないという企業家も現れてきています。コミュニティビジネスというものが現れてきています。そういったものもちゃんと視野に入れるべきではないかと思います。

大きく言えば高知シティFMも「コンミュ二ティ放送局」ですので、コミュニティビジネスのなかにはいるのではないでしょうか?

地域社会の中で経済活動をするということですので。

そうですよ。だから売れて利益を上げさて入れば良い。というものではありません。地域に貢献する。地域の生活の質を高めるとか、社会的な使命(ミッション)を持っているとのことです。
最近は「社会起業家」ということも言われていますが。コミュニティビジネスと同じようなものでしょうか?
同じですね。最近コミュニティビジネスを提唱した先生も、コミュニティビジネスは社会起業家と言っていますので同じでしょう。
各政党の福祉政策に大きな違いはありますか?福祉政策になりますと反対する人、政党はいないと思います。福祉は「小さな政府」でも担えるのでしょうか?
「大きな政府型」と「小さな政府型」の違いが政党でもあると思います。国が税金などを市民生活などに介入していくという考え方もあります。「大きな政府」の考え方ですね。国は関与せずに、個人や企業の自主性に任すという考え方もあります。「小さな政府」の考え方です。
福祉の先進国と言われている北欧ですが、国民負担のありかたはどうなっているのでしょうか?高福祉高負担だと言われていますが?具体的にはどうなっているのでしょうか?

私もスウェーデンやデンマークなどへ行ってきました。負担と言う点で言いますと、国民所得に対して、税金や保険料の負担はスウェーデンの場合ですと70%です。日本の場合は先ほども言いましたが40%です。社会保障給付費は、同じく国民所得に対して、スウェーデンの場合は50%です。日本は20%です。


 つまりスウェーデンの場合は70%負担はしますが、そのうち7分の5の50%は社会保障費として帰ってきます。日本の場合は40%負担して、20%は帰ってきます。だから差し引きがどちらも20%。スウェーデンは大きな負担はしますが、社会保障費として7分の5くらいは国民に帰ってきているのです。こういうことになります。
 スウェーデンは「国に貯金する」ことが税金を納める際の国民の意識です。日本の場合は税金を納めることは「どぶに捨てるようなもの」と言われることはあります。スウェーデンの場合は「国に貯金」して将来安心を買い取るようです。

 
国と国民との「信頼関係」がスウェーデンは強いのでしょうか?
特に具体的な福祉は「分権化」が進んでいます。地方レベルで市民のチェックが働くようになっています。
そうですね「オンブズマン制度」はスウェーデンから来ていますから、そのあたりは市民が行政機関を監視する仕組みはしっかりしていますね。社会としては成熟していますね。
福祉オンブズマンもいますね。
いますね。
日本型福祉というありかたはあるのでしょうか?
「自己責任社会」を標榜する米では福祉のありかたはどうなのでしょうか?
 日本は北欧型なのでしょうか?それとも米国型を志向していますか?
大きくは3つに別けられると思います。スウェーデンやデンマークのように税金で公的なサービスを充実させる社会。アメリカのように民間活力を活用するという考えかた。その中間で税金ではないですが、社会保険を中心にという考え方の社会もあります。ドイツや日本がそうです。
「税中心」「自己責任型」の間に「社会保険中心」とがありますね。日本は両方を向いています日本はどちも向いています。
 北欧型のほうも向いています。年金や介護なので、保健財政が上手き行かなかったこともあります。その場合は税金の投入も必要ではないかろいう議論があります。その場合は税のという投入も考えなければなりません。
 他方で民間活力も活用して行こう。という国の方針も出ています。両方に「目線がある」のが日本の福祉の現状ではないでしょうか。