高知市の福祉政策の問題点について
  今週のゲストはOPEN HEART 代表の宇賀恵子さん,メンバーの松本和子さん山本由圭さんです。。今日のテーマは「高知市の福祉政策の問題点について」お話を伺います。
 福祉政策は各市町村で格差があり、市町村合併でも、大きな問題点になっています。また2000年から介護保険制度もスタートしました。高知市の福祉制度の水準はどの程度なのでしょうか?
OPEN HERTのパンフレット「このまちで生きていく」のなかで「あたりまえの思いをかなえるには今の高知では不可能だということがわかりました」とあります。どういうところが難しいと思われたのでしょうか?
宇賀 1日目にも申し上げました。わたし達の重複障害をもつ子供たちは24時間のケアが必要です。そういう人達にとっては、仕事ではなく成人社会人として、居場所が必要です。そういう子供たちの行き場が高知市内ではなかなかありません。
 養護学校で職場実習があります。職場実習をしたなかで、自分達の行き場がないことを実際、現実的にわかります。そこからみんなでなんとかしようとやっていこうということになりました。その活動がOPEN HEART になってきたのです。
養護学校時代は、きちんとしたケアやサポートはされていたのでしょうか?
宇賀 そうです。若草養護学校におきましては、「1対1」で、ケアしていただきました。またそれぞれの障害に応じて、プログラムがあり、それぞれの学習がされていました。
問題は養護学校を18歳で卒業された後だと思いました。わたしもホームヘルパー養成講座で学習しましたのは「ホームヘルパーの役目は、対象者の自立を促すこと」でした。18歳になって養護学校を卒業された方をサポートする仕組みが、高知市の場合はまだ十分ではないということですね。
宇賀 そうです。教育現場と福祉の現場の違いもあるでしょう。福祉になった場合は年齢差も様々です。中途障害の人、60歳近くの人、学校卒業して18歳の人から20歳の人達が一緒になります。本当に若い世代が少なく、同世代のお友達と関われるのがデイ・サービスのなかでもなかなかありません。
子供たちも「世代間格差」を感じるのではないでしょうか。
宇賀 そうですね。
福祉施設は、高知市の場合は高齢者を対象とした施設が殆どなのでしょうか?
宇賀  そう思います。
話も合わないし、感覚も違うから、通っている方同士の意思の疎通も難しい面もありますね。また養護学校を卒業された人の就労先はなかなかないものなのでしょうか?
宇賀 障害の程度も様々です。就労の可能な人もいます。重度重複障害の子供たちは、就労は難しいです。就職以前に社会のなかで、どう受け止められて生きていくというのが、一番の課題になってくると思います。
観点が少し異なりますが、都市問題で「ユニバーサル・デザインのまちづくり」とか、「高知広域都市計画マスタープラン」と言いましても、委員としているのは建築・土木関係の人ばかりです。福祉や医療や教育関係の人はいません。実際に障害をもっている人達も参加していませんし。
宇賀 福祉のほうもそうです。障害者同士も、障害別に別れています。自閉症は自閉症とグループはいっぱいあります。OPEN HEARRTのように様々な障害の人達が一緒に活動しているグループはたぶん少ないと思います。
 そのあたりが大変意義がありますね。
宇賀さんたちは大阪府吹田市や兵庫県西宮市、神奈川県横浜市に福祉施設の視察研修に行かれました。どういう点が優れていたのでしょうか?高知市にない福祉政策があったのでしょうか?関心されたところはどんなところだったのでしょうか?
宇賀 大阪府吹田市のあいほうぷ吹田、兵庫県西宮市の青葉園、神奈川県横浜市の「訪問の家ー朋(とも)」を見学してきました。3箇所へ行きました。共通して言えますのは、一つは、「地域のなかで繋がりが深く自然に溶け込んでいる。」ことでした。
 そして吹田市の施設も、西宮市の施設も街の中心街にありました。普通の生活が出来る状況にありました。学生ボランティアの協力もかなりありました。近くの大学生などが休日なんかには協力体制が出来ていました。
 そして横浜市は、朋の家ですが、横浜市独自の条例がありまして、サポート体制が出来ていました。そのあたりは違うなと感じました。
 青葉園(西宮市)のほうでは、タクシーが自宅まで出迎えてくれます。こちら(高知市)の場合は送迎バスなどですが、西宮市はタクシーで気軽に外出できました。
あいほーぷ吹田の施設の様子
温水プールもあり、予約すれば土日も利用可能です
山本 わたしは横浜市の朋の家を見学しました。ボランティアの方が活発に動かれていました。子供の障害によりまして、クラスやグループ別に分かれていました。それが細かく分かれています。静かにいたい子供や、音楽を楽しみたい子供もいます。その子供の気持ちを考えたクループわけをしています。そのことに関心しまして、いいなと思いました。
松本 うちの子供はしじゅう、朝から晩まで介護しています。西宮へ行ったときに雨の日は、雨が降るから休もうかなと思う時、青葉園(西宮市)ならタクシーで玄関先まで迎えに来てくれます。それに関心しました。
 それと青葉園は、親が都合の悪い時などは、ショートスティもしてくれます。そこの同じ施設のなかでしてくれます。スタッフも日常生活に関わって頂いている人が、ショートスティする時も一緒になってやっていただけます。
 うちの子などは、人見知りして泣いたりしますが、こんなところがあれば、そうはならないでしょうし、ひじょうに助かるなと思いました。今ショートスティやタイムスティに行っていますが、なかなか慣れずに泣いたりしています。わたしはこんな施設があればそんなこともないので、大変いいなと思いました。
100点満点で高知市の福祉政策は何点なのでしょうか?3つの見学された施設が100点だとしますと高知市の現状はいおかがでしょうか?
宇賀 点数はようつけませんね。少しずつですが、以前と異なり行政のほうも相談に行けば、一緒に考えようと声が出てきています。これからわたし達は出来ることを折り合いながらやっていきたいと思います。
見学した3つの施設は個々に応じた「日中活動」をそのまま実施されています。現状はショートスティをする場合に、「同じ場所、同じ人」ではありません。そこが大きな問題ですし、子供たちにとって負担です。
松本 うちの子供は特に慣れないのです。
宇賀 朋の家は訪問した時から、職員のみなさんの温かみが伝わってきました。
朋の家の施設
医療ケアも充実しています。
そのあたりは行政の人達に説明していかなければいけませんね。朋の家もそうなるまでには何年もかかっていますね。確か資料では1986年ごろからの取り組みと書いてありましたし。
宇賀 そうですね。いろんな施設が複合的にあります。親がいつまでも自宅から通うのではなく、グループホームもあります。ケアの必要な子供もそこで生活できます。4人ぐらいで障害をもった人達が住んでいました。ヘルパーさんもそこへ来られています。
 診療所も併設されていまして、その診療所は地域に開かれていますし。
なかなか横浜のようにいかないでしょうが、それに近づければと思います。現在わたし達のグループ16家族の内、8家族は医療ケアが必要です。24時間体制が必要です。
 理想はみんなが近くに住んでいて地域に溶け込み、病院や商店街も近くにあることなのでしょうか?
 
宇賀 はりまや橋商店街なんかもいいですね。車椅子で子供を連れて商店街へ行くことは今までありえませんでしたし。将来そういう施設や環境ができれば良いと思います。福祉関係の人達だけでなく、一般の人達とも関わりが出来るのがはりまや橋商店街であると思います。