県庁改革と労働組合の役割について
 
今週のゲストは自治労高知県職員労働組合中央執行委員長の山崎秀一さんです。
今日のテーマは「県庁改革と労働組合の役割について」です。
歴史的には労働組合運動は、社会の民主化に大きな貢献をしてきました。しかし以前この番組で対談した橋本大二郎高知県知事は「県庁改革が進展しないのは、職員が地方公務員法で守られていることと、県職労ー自治労の存在があるからだ」と言われました。
この見解にどう思われますか?
知事は県職労が改革に反対する勢力だと思い込まれているのが残念です。また少し辛口に言わしていただきますと県政改革が進まない原因を職員もしくは、県職労におおいかぶせて「責任逃れを」しているのではないかと思います。
かつて県職労は、県庁へのIT機器導入に反対されていたのではないでしょうか?
その行為により県庁情報化が遅れたのではないでしょうか?また当時反対される理由はどのようなところにあったのでしょうか?
これは心外ですね。知事もそう思いこんでいます。OA機器やIT機器の導入に反対したことはありません。ただOA機器、IT機器を導入することによって「省力効果以上に、人減らしをする」と当局側が主張していました。そのことには反対しました。導入の際の条件はあると思います。また今は廃止されましたが、OA機器の使用ガイドラインも決めていました。1日4時間という規制をしていました。で私なども1日8時間使用することがありますが、明らかに健康問題にはよくありません。OA機器導入の際の条件や、使用の際の条件を詰めて交渉しただけです。そのために「県のIT化が組合のために遅れた」というのは心外ですね。
昨年11月に県庁で大規模ストライキが行われました。大量の処分者も出ました。
よく意義がわかりません。何のためのストライキであり、また県当局はなぜ処分をしたのでしょうか?

反対したのは県当局が「給与を4月に遡って減額します」という不利益遡及に対して反対しました。給与が減額されると言うことは今日の民間の状況を見ればある程度はしかたのない面はあると思います。不利益不遡及と言いますのは、法の原則です。刑法で泥棒なら罰が決まっています。ある日突然それを死刑に変えたとしたら、死刑を執行するのですか?たとえばある日消費税を上げると決めて、それをさかのぼって、徴税しますと言うことになったら、国民は納得するのでしょうか?

「「、l法の根幹に関わる問題でしたので、認めないのが私たちの言い分です。
今回の処分についてもストライキに関わる処分となっていますが、県当局の狙いは県職労つぶしにあったのではないかと思います。

県当局の狙いは県職労つぶしなのですか?
そのとうりです。
県民の立場から見ますと「元祖改革派知事」と「社会の民主化に貢献してきた労組」の対立する構造はよく理解できません。知事は「県庁改革の阻害物になっているのは、県職労ー自治労だ」と言っていました。主な主張の違いはどのあたりにあるのでしょうか?
県政改革を阻害しているという言い方の意味はわかりません。改革をするのであれば、ともにやりましょう。私たちは改革に反対したことはありません。
それ知事の言われている自治法、地方公務員法なのですが、公務員は地方公務員法で守られている訳ではありません。「仕事がなくなればクビですよ。」という条項までありますので。民間における「整理解雇」と同じようなものであると考えています。
また知事の得意な手法は「トップ・ダウン」です。私は「トップ・ダウン」を否定するものではありません。トップ・ダウンもあればボトム・アップもあるあるべきだと思います。
 大事なのは政策を決定するときに自由な意見交換が出来ることです。たとえば庁議で、知事だけが喋っていて部局長がメモを取っているだけで、こんなことで良いのかと思います。橋本知事になってから「上意下達」傾向が強まったと思います。もっと県庁内での自由闊達な意見の交換が必要であると思います。
 人事行政についてです。現状では特定の職場が優遇されています。また管理職の胸先三寸で人事考課(査定のようなもの)が行われています。また通常県職員は3年で職場を移動しますが、これでは専門知識を持った専門家は育ちません。「人を育てる人事行政」が必要であると思います。
高知県庁には国から多数の管理職出向者がいるように思います。いわゆる天下り人事が横行しているようなのですが、組合としてどう思われますか・
知事は国との人事交流を促進したいということを言われています。しかし実際には、県から国へ行くのは平職員で、国から県に来るのは管理職です。しかも財政課や総務部長など県行政の中心部分に権限を持ち座り続けています。このことが高知県の地方自治としての独立性を阻害していると思います。このような「天下り人事」はなくすべきであると思っています。
地方自治を貫徹する立場からすれば「天下り人事はやめていただきたい」と言うのでしょうか?
必要ないと思います。
県職労から提案する県庁改革案があればご披露ください。
2つあります。1つは、政治の本来の主人公は住民です。一番近い政府はといえば市町村です。ここに力をつけるというサポート役に県は軸足を置くべきだと思います。
その意味では税源委譲が大きな課題です。現在の「三位一体改革」などは論外です。
それからもうひとつは、知事が大変好んで使われる言葉で「走りながら考える」というのがあります。これは今の県庁のなかでは「朝令暮改」とか「事業の検証が不十分」なことがたくさんあります。
たとえば高知工科代がどれだけ効果を上げているのか検証しなおす必要性があります。

とくに問題なのは高知医療センターのPFIです。将来的に大きな禍根を残す可能性があります。医療法で禁止されているはずの営利企業への病院の「身売り」、そして「自由診療」(全額自己負担の診療)に繋がっていくのではないかと心配しています。