安田純平さんイラク現地報告会(その2)
 イラクのなかにはああいったグループは今まではいませんでした。今回のグループ
はヨルダン人のザルカウエという人物が中心になっている外国人のグループであります。
 そういったグループは、もともとイラクの国内にはいませんでした。イラクというところは徹底的に監視体制が組まれていまして、アルカイダなんてものも入れなかぅたです。
 非常に厳しい、監視体制がくまれていましたので、秘密警察とか。そういう場所に戦争を仕掛けてしまったから、国境警備を全然しないものですから、人が入ってくるわけですね。
 今回の香田さんも、パスポート・コントロールが抜けて入っていったと報道されていますよね。彼でも入れるところですから、いくらでも入れるわけですよ。

 全然統治する気がないとしか思えませんね。もともとの地域の人々と、米軍との対立の発端は、米軍が一般市民に向けて銃を撃ったんですね。もっとも対立の激しい、ファルージャという街があります。

 そこでも1年前は、フセイン政権が崩壊した後、米軍が小学校を占拠していましたので、そこで地域住民が、「学校を返してほしい」とデモをしたら、(米軍が)水平射撃をして10数人が亡くなりました。 

 そこからです。対立が始まっているのは。それから1年以上に渡りまして徹底的に空爆をしている中で、地域からの抵抗も大きくなる。その混乱のなかで、外国人のグループも入ってくるわけです。

安田純平さん
 そういうわけで、(背景が)しっかりありますので、そこのところも踏まえてしっかり考えないといけません。
 と思うのですよね。今回の事件は許せないという気持ちはわかりますがそれだけで済ましちゃいけない。感情的に動いちゃいけないというものがありますので。そこのところを整理してやるべきかなと思います。
 そんな訳で、彼が拘束されている間も、現地の人間からもメールなんかも来まして、さすがに今回は厳しいという話はしていました。同時に今、ファルージァという町でまた、米軍が完全に街を包囲しまして、殲滅作戦を準備しています。

  (プロジェクターの画面での説明にはいります。イラクの地図が映し出しています)

 前回の3人の事件というのは、バクダッドの西にあるファルージャという町で、米軍が町を完全に包囲し、徹底的に空爆しました。1週間で600人くらい殺すという状況のなかでした。事実上の虐殺状態でした。

 場所の近くを通過しようとして捕まったのが前回の事件です。私らもその地域に入って行っているから捕まっているのですね。今回は、前回以上の空爆をするだろうと言われています。
 もう既に町は完全に包囲されているという状況です。徹底的に殺そうとしている。というなかで今回も起きたわけです。

 そういった現地の人から見ると、日本の広島や、長崎のうようになりかもしれないという心配もされています。そういう状況なので、それを続けるのならば、解放は厳しいのではないか。言うようなメールが来ていました。

 でも結局、彼が捕まっている最中も、ザルカウイの拠点があるだろうと言うことで空爆をしていました。そこにいるかもしれないのに空爆してたわけですよ。

そういうわけで、解放しろと言っても、状況を見れば応じないのは、流れとしてはそうなってしまうのかなと。そういうわけで、これからのイラクでは民間人が徹底的に殺されるですので、「民間人を殺すのは卑劣だ」と言うのであれば、まず徹底的に殺されているイラク人の民間人についても考えなければいけないわけです。

 今回は残念な結果になってしまいましたが、それで終らせてしまったら前回なんですね。
解放されたからそれで終り。というのが前回だったんで。
 今回のことをちゃんと総括するのは、今イラクでどうなっているのか。今ちゃんとやらないといけないんですよね。新聞とかテレビを見ても現地の報道はなかなか流れて来ません。

 いろんな方法で、現地の情報はとれますので、インターネットとかいろいろと流れていますので。是非関心を持って、議論を盛り上げていただきたいと思うわけです。
 ちょっと最初理屈ぽい話しになりましてけれど、今回の件はとても大事なんです。

 日本政府も先週というか、この間の日曜ぐらいで、話しを終りにしたかっようですね。事件が結局、亡くなられたとわかったのが、土曜日ですかね。政府としては日曜日までに終わらせたかった。要するにニュースがないからですね。

 それでは平日のニュース番組が拙いということで、月曜まで引っ張りましたけれど、もう終わりましたですよね。小泉首相が「テロには屈しない」と最初に言ったことが問題にされてましたけれど、当然日本政府は「自作自演」を疑っていましたので、公安があちこち動きまして、香田さんとテロリストの関係はないのかとみたいなことも調べていました。

 そういう動きをしながらの発言ですので、当然、「テロに屈しない」という発言のなかには、彼(香田さん)に対する疑いも含めて言っている訳ですよね。
 というわけで、はっきりと、(政府が)どれだけ、救出したかったのかは、疑問がありまして、諦めムードになりまして、いかにこれを政府への批判につなげないかというところを一生懸命やっていたようですよね。
 ご家族も殆どメディアの前へ出ていませんね。海外のメディアもアルジャジーラのみですね。その他のところは、アポが取れていましたが、ある日を境に、キャンセルということだそうです。
 いろんな力が周囲で働いた気配がありまして、そういうものですので、しっかりと状況を見て考えないと、いろんな情報統制をされていますので、気をつけないといけないかなと。
 そういうわけなんですけど、日本政府が戦争に参加している戦争なんで、始まる前から私はイラクに入っていまして、4回目で、3月中旬から入っていまして、1ヶ月ほどいて捕まったのです。

 現地で捕まったのは大きなものとしては2回目です。昨年の3月20日に開戦して、その後23日にイラクで捕まっています。それは街中で取材をしていまして、イラク軍に捕まったんですね。当時戦争が始まった段階では、フセイン政権がすべての外国人を一定の場所に集めて、報道陣もすべてあつめられちゃうわけです。

 取材は基本的に、フセイン政権が用意したバスに乗って、病院とか空爆の跡地を廻るという具合になっています。フセイン政権が見て良いというものしか見られないわけです。
 勿論病院なかへ行きますと、足のない人、腕のない人、遺体もありまして、米軍の空爆が民間人に被害を及ぼしているというように見える。

 しかしそれはフセイン政権に都合の良い部分でしかない。で、そこからなんとか抜けでして取材しないといけないわけですね。ツアーから抜けて街のなかを勝手に取材をしていますと、はじからどんどん捕まりまして、強制退去か、逮捕という具合で、日々どんどん人が減っていました。

 なんとかさんの部屋は、かえって来なくて荷物は置きっぱなし。そして誰もいなくなったような感じで人が減っていっていました。街中で写真を撮って捕まったんですね。
 イラク軍から「お前はこの写真をアメリカに送るのか」と言われまして、スパイ容疑ですよね。今回戦争と言うのは、日本政府がずっと(アメリカを)支持していまして、事実上参加しているのですよね。

 世界の主要国の中で日本ぐらいですから、戦争をやっている主体というのは、順序で言うと、アメリカ、イギリス、日本な訳ですよ。
 現地では当初から日本人ということだけで、スパイの容疑がかかるという状況なのですね。なんとか当時。いろんなごまかしをしながら許していただきました。フセイン政権が崩壊するまで現地にいたというのが当時の流れなんです

 米軍のほうに従軍していましても、ここしか見られない。戦争報道というのは、基本的にそういった統制のなかで、行われていると。都合の良いことばかり流れてきます。
 誰が、「何のために」「どういった効果を狙って」こういった情報を流しているのか。というところを見ながら、情報を受け止めていないと非常に危険なわけですね。
 今日ちょっと新聞をお持ちしようと思いましたが、ぼろぼろでどうしようもないので、
持って来れませんので。10月5日の読売新聞を是非帰られましたら見てください。
 説明しづらいのですが、一面の真ん中ほどで、「イラクで連続テロ」との記事があります。イラクにバクダットホテルというホテルの前で爆破がありました。「イラク軍関係者とホテルの外国人客を殺傷」という記事になっています。

 13人前後死亡と言う記事がありますので、是非見てください。写真があって、地図もありますので。で、すごくびっくりする記事でして、バクダッドのまあまあ有名なホテルで、私も戦争の前に何泊かしているんですけれども、そのホテルは、こんなホテルでして、繁華街の通りがあって、少しひっこんでいるんですよ。

 塀が建っています。高さ3メートルぐらいあります。40〜50メートルぐらいあります。なかに入るのには真っ直ぐ入れないですよね。左側のほうでしか入れなくなっています。

 そこはゲートが出来ていまして、武装した警備員が守っている。上にもいますよね。で裏側にもバリケードが何重にもあり警備員がいると。日によっては戦車が守っています。撮影禁止なんです。本当は。

 もちろん撮影禁止だからといって撮らなかったら仕事にならないので、撮るんですけれど。まあばれると捕まるんですけれど。

 怪しいホテルなんですね。どんなほうに使われているかと言うと、今現地では、CIAとか、政府関係者とか、情報機関がいるだろうと言われています。
 少なくとも、ホテルとしての営業はしていませんので、一般の人は宿泊していません。客と表現するのはいかがなものか。というのですね。
 

 読売新聞の別の人などに聞いていますと、さすがに客というものはどんなもんかな。政府関係者という表現をしてもいいのではないかというぐらいに言っていますので、現地へ行った人間なら見ていますので、これを客と表現するのは、というところですね。

 政府関係者でなく、客と言った段階で、なんか無差別だなという印象が出ますよね。要するにテロになるわけですよ。関係者、情報関係と軍関係者を狙った攻撃というもので、占領に対する抵抗とすれば、非常にスマートですよね。

 それを客と一言はいるだけで、全く印象が変ってしまう。そういうことでわざわざ、テロになっているわけですね。それが一面のなかの真ん中にあります。
 物がないので申し訳ないのですが、その日の一面のニュースは何であったかと言いますと、小泉首相の私的諮問機関である「安全保障と防衛力に関する懇談会」とかいう名前でしたがあります。「テロや弾道ミサイルなどの新たな脅威に対処するために自衛隊の機能を増やしましょう」という防衛大綱を変えましょうという報告書を出しているわけです。
入場される参加者の皆さん。講演開始30分前から人がどんどん来られました。
新たな脅威に対処するために、武器3原則の緩和とか、禁輸の緩和とか、国際協力を自衛隊の本来任務にしましょう。という報告書というニュースが一面のトップです。
 ようするに「抱き合わせ」のニュースですよ。イラクでは今、1日に100件ぐらい米軍に対する攻撃が行われています。というなかで、はっきり言いまして、この程度の爆破は普段ならニュースになりません。
 一面には入らない筈です。なぜ一面に入るのかと言いますと、新たな脅威に対するために自衛隊の任務を広めましょうというニュースと抱き合わせにすることに意味があるのです。そのためにわざわざ一面に載っける。

 「客」と一言入れて、テロらしくする。そういう風にニュースは出来ています。1個1個の記事が単独に存在するわけではありません。いろんな思惑があってニュースの位置づけがされるということです。気をつけて読まなくちゃいけないわけです。

 この戦争というのは、「超政治的」な場面なので、いろんなものが、政治的な思惑を持って流れてきますので、そのあたりの裏を読んで、やるけれども。今の時期にあんな時期に行っているお客は何者なのかといろいろ考えてみる。

 報道というものは、すべてを書いているわけではない。1日100件もあるなかで、わざわざこれをピックアップしたのはなぜなのかとか。書いていることはすべてなのかとか。出来れば、書いていない部分を探す。この情報は、書いていないのはなんだろうか。想像する作業が「情報を受け取る」姿勢です。本来の。

 それがすべてだと思わないこと。何が書いていないかということを想像して、自分で具体的に疑問が出れば、自分で調べれば言い訳なんで、これがすべてではない。思わない。という姿勢が大事です。

 そのところをしつこいですけれど、気をつけていっていただきたいと思います。そんなわけでいろんな統制がされるなかで、そこから抜け出して、物を見て廻ろうというのが、ジャーナリストの仕事になるわけです。

 そうすると当然、見せたくない人々はいろんな邪魔をしてくるわけです。捕まるというのは、普通に起きることです。1年前、フセイン政権が崩壊する寸前に、日本人のジァーナリストが現場で、秘密警察に捕まって、例のアググレイブ刑務所へ、米軍が、イラク人の拷問虐待をしていると言われている刑務所へ、イラク警察に放り込まれた日本人がおりまして、彼は死刑囚になっていまして死刑執行が決定していたらしいですね。

 それが、捕まりましたのが4月2日です。街中で写真を撮っていたら捕まりました。30分前まで私も一緒にいました。テレビ中継があるんで、1人でタクシーに乗って帰りましたら、途中にあったビルが、通信施設のビルが、横にでっかい穴が開いていまして、米軍の巡航ミサイルでやられたということで派手に壊れていました。

 それを写真を撮ったら捕まったという話なんです。4月2日に捕まって、死刑執行が決定していて、4月5日に米軍がバクダッドに侵攻しましたので、役人が彼を連れて逃げ回ったんですね。結局9日に政府が崩壊しましたので、役人は彼をほっぽり出して逃げた。なんとか助かったと。もう数日政権崩壊が遅れていたら、死刑執行されていたということです。

 当時それがニュースになったのかというとなっていないですね。日本政府も何もしていなないですね。邦人保護というのが、外務省が、政府とか警察に依頼して、邦人を保護してもらいのが実情です。当時相手はフセイン政権なので、「彼はジャーナリストなので、解放してくれ」と交渉すれば良いのですが、何もしていないわけですね。

 だから今回3人の件と今回政府が動いているのは、政府に対して動いているのは、政府が「当事者」になったので、何とかしないと政府の責任になるので、動いているというのが、事実上のところです。

 はっきり言って、現地で捕まりましても日本政府が何かをしてくれるわけではありません。海外旅行をする皆さんでは定説になっていますのは、海外でなにがあっても、日本大使館に相談しに行くと、だいたい冷たくあしわられて終り。というのが定説ですね。

 そんなものなのですよ。現地で何が出来るわけでもない。それでも従来は紛争地で取材中のジャーナリストが捕まっても何とかなりました。それが殆ど。人質なんかになってはいませんね。それはどうしてかと言いますと、捕まった段階で日本人だとわかれば、「お前関係ないから帰れ」と帰されたわけです。

 要するにこれまでどこの紛争には日本というとことは、参加していなかった。ということで、捕まった段階で、日本人。関係ないから帰れ。と。だから紛争に関わっていないということが、「最大唯一」の邦人保護だったのですよ。


 その部分が今回完全に放棄してしまっていて、かといって、現実になにかできるわけではないので、どうしようもない。どうしようもないなかで、本人が悪いという話しをするしかない。外務省の事情なわけですね。

 そんな事態になっていますので、やはり「戦争に参加する」というのは大変大きなリスクを負っています。今後イラクだけでなく、世界中どこかで何かに巻き込まれる恐れはありますので、すべての日本の市民がそのリスクを負っているということを考えるべきかなと。

 そんなわけで現地の様子を知らないといけないということで、現地へ行っていました。3月中旬からイラクへ行きまして、戦争開始から1周年ということで、街中が厳戒体制になっていますね。
 1周年攻撃をしてくるだろう。米軍も物凄く警備していましたし、実際にロケット砲なども打ち込まれていました。