安田純平さんイラク現地講演会(その5)
 私達の場合は、行方不明なので、どうしようもないのがあるのかなと。事実現場はそんなものなのでしょうね。日本政府がなんかしたわけではない。ではどうして死なずに済んだかと言いますと、まず相手がよかったですよ。
 
 で民間人であると帰してくれました、また私は銃を持っていませんでした。銃がもっていましたら間違いなく死んでいすね。傭兵とかスパイと言われてしまいます。あのよくああいう地域に武装もしないで、警備員なども連れずに行くことが無謀であるという人もいます。
 あの地域で(完全武装の)米兵が80人位死んでいるのですよ。米兵がそれだけ死んでいるところで、どんな武装して、どんな警備員だったらいいのでしょうか。本当の激しい戦闘地域に武装してはいるのは論外ですね。もしみつかった場合、銃が見つかったら。なんとも言えばいいのか。護身用だと言っても、俺達を撃つのか言われてしまう。
 だから見つかった瞬間に、銃を持っていれば撃つしかないんですね。米兵が80人も死んでいますから、腕があればいいのか論外ですね。銃というのはアピールですね。こっちは銃を持つから危ないよ。相手も不信感を持つのですね。
 そうする武装競争ですね。ああいう場合は丸腰で行くしかないですね。殺す能力がないことを強調して座りますね、相手も座らせます。覆面でもして、相手も笑わせます。武装する暇があったら、相手を笑わすことを感がるべきですね。
 先日国境なき医師団がイラクから撤退するニュースがありました。まだいたんですね。彼らも絶対に武装はしないと言っていますね。激しい戦闘地域でも。1回でもやっちゃうと信頼が全部崩れるので、駄目でよね。銃を持っていないのはすごく大きいです。
 それからイラク人は親日感情が強いのですね。道路とか一杯造ったと。1980年ですか、イランーイラク戦争が始まって、ミサイルが来る、戦闘機が来るわけですね。
 欧米企業は帰りました。そういうなかで日本企業は残りました。当時の、イラクと日本の関係は深く債権が凄くあったんですね。帰るに帰れないと。言うわけでいろんな事情があって残ったんですね。
 日本企業が造った道路は、20年前なのに全然ひびなんかも入っていませんし。本当に評価は高いですね。要するに「日本人は約束守って、良い仕事をする」という訳で凄く信頼されたのですね。80年代は大きかったようですよ。

 そうした大きな遺産が残っていまして、日本政府に対してはすごく批判が広まっている一方で、もっと大きな意味で、日本とか、日本人とかに対する親しみを彼らは持っています。そういうものがあって、何とかなったんかなと。今それを「食いつぶす」方向に行っています。

 すごくもったいないなと思うわけですよ。日本政府は一応外交もやっていまして、歴史的な経過もあって、アラブともイスラエルとも敵をつくらない。要するに、中東に敵がいなかったんですよ日本は。世界の主要国のなかでも珍しいぐらいに中東に敵がいない。
 評価されている。そういうなかで民間の交流なんかもあって、信頼関係がつくられたと。
親日感情がつくられたと。

 軍事ではなく、外交とか、民間の交流でつくられたわけで、そういうものを生かす方法を考えるべきおだなと思うんです。
 今現在自衛隊を送っているのは、イラクのためにではなく、アメリカとの関係です。完全に。サマワというところに、70億円で自衛隊はでっかい基地をつくってやっていますが、ひきこもり状態ですね。

(地元新聞でも報道されました)

 1日に1億円近くの維持費を使って、浄水をしていますね。1日に70トンぐらいですか。1人頭で計算すると、1万6千人くらい。人口20万人以上いますので、殆どがもらえない。そのなかで、3月ぐらいにNGOに3900万円で補助金を出して、現地の浄水場の水を給水してもらう。1日600トンですね。
 そもそも今回の空爆なんかで壊したわけでもありませんし、そういう生活なんですよ現地では。別にあれをしないと(自衛隊による給水活動)生活できないわけではないので。
 浄水、給水をしているのは、現地へ入って、自衛隊の出来るものを探して、それぐらいかなといいうことで、(始まったようです)。
 それではすごく甘いので、ODAも少し援助も同時に出す。そういうわけで本当に現地の支援をするならば、ODA、援助ですよね、効果が高いと言うことを自ら言っているようなものです。
 イラクのためだけではなく、アメリカとの為だけである。それから復興支援もやっていますが、もうひとつ安全確保支援というものをやっています。

 法律を見ると一応並列して並んでいます。「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援に関する特別措置法」。要するに安全確保と人道支援は並んで入っています。
 というなかで安全確保とはなにかと言うと、米兵を運んでいますよね。空自(航空自衛隊)がやっていますよね。

 航空自衛隊は支援物資も運んでいますよね。支援物資を運ぶんだったら、復興支援で良いわけですよ。わざわざ別項目をたてて、安全確保支援が入っているのは、復興支援ではないからです。

全国紙の地方版でも講演会の様子が報道されました。

 復興支援と表現できないから入っているわけです。要するに治安維持の支援。米軍の軍事行動を支援することである。というわけです。本隊はそちらかなと思います。ああいう地域で軍事作戦に参加する。米兵を運んでいる空自(航空自衛隊)の映像、全然流れ泣きですね。安全確保の映像は流れていないですね。

 だから復興支援をしてイラクのためにやっているんだということを徹底的にする一方で、米兵を運んで軍事行動(アメリカの)を支援している。そのことは徹底して流さない。
 良い部分だけ流して、都合の悪い部分は流さない。操作、いわゆるプロパガンダですよね。

 政府も一杯流しています。気をつけて見なくちゃいけない。新聞なんか見ましても、「イラク復興支援特別措置法」と書いてあります。新聞の記事のなかで。それは日本政府が恐らく、発表資料のなかで、そのように書いているわけです。だけども安全確保と復興支援が両方並んで入っているわけで、復興支援だけ残すのはおかしいんです。

 省略しているのに。「イラク復興支援特措法」と言っているのはおかしいのです。それが普通に流れていますので、それは気をつけないといけないですね。
 そういうわけで、アメリカとの関係でやっているというのは、現地でも見えてきちゃっているところですね。

 非常にもったいないですね。アラブとの付き合いはこんな風にやるんだとか、実績とか経験とかあるわけで、それをもっと生かすような方法。僕はアメリカのやっている内容はあまりにも酷いので、本当に治める気があるのかというぐらいどうしようもない。あれではどうしようもないと、ちゃんと言えるような関係であるところが、すごく大事なんですよね。

 そういう「実績や経験を生かす」ことが、実際はイラクにとっても、アメリカにとっても、日本にとってもいいんじゃないかと。そのへんをもっとすべきかなと、それは民間の交流ですね。日本が(戦争に)参加し破壊してしまいましたので。ちゃんと日本の市民として出来るものはないかなと、民間交流があると。

 旅行保険もききますんで。(会場 笑)。やはり1人とか3人ではなく、50人だとかでは絶対捕まりませんので。ようするに現地にちゃんとルートをつくって大人数で入れば捕まりませんし。

 日本で100人とか、千人とかでデモとかやっても全然効果がありません。しかも警察の道路使用許可をもらって、「手のひらの上」でやっても全然効果はありません。ま、10万とか100万とか集まれば、なんかあるかも知れません
 イラクで100人でやれば、効果絶大です。もう人数全然集まらないのだから、もう(イラクへ)行ってしまうというのはどうでしょうか。まあなんとかなると思うんですね。捕まることはないし。せいぜいロケット砲を打ち込まれて全滅するぎらいでしょうか。(会場 笑)
 まあ現地にルートをこしらえさえすれば、大丈夫ですので、いかがかなと思うんですけど。ちょっと長くなっちゃんですけど。写真を出せなかったんであまり。
 
 急いで何枚かだけ、電気を暗めに出来ますか。(写真の説明に入ります)

 遺体ですね。今時のメディアは流さないですから。人が一杯死んでますので。見なくちゃいけないかなと。死後数日経っていまして、腐って倍ぐらいになっています。
 臭いが凄いんですね。奥の人は顔を抑えていますよね。気を抜くと吐きますね。
 戦争報道とか戦争映画とは、派手な映像とか、音がする一方で、臭いがしませんね。臭いがしたら皆さんたぶん見に行かない。映画館げろげろ状態になりますので。
 臭いはすごく訴えますよね。本能に。地面とガードレールに(遺体が)挟まって、取れない状況になっていますね。
 これは昨年の4月です。
 車のなかも遺体が残っていまして、銃の後ですね。あちこち残っています。米軍が動いている車を全部撃つわけです。

 息子さんがお父さんの遺体を回収に来ています。頭と腹を打ち抜かれています。お父さんはもともとタクシーの運転手。空爆の噂を聞くと、怪我した人を乗せて、病院とか家へ送ることをやっていたそうです。

 亡くなられたお父さん。お母さんです。たまたま実家に帰っていたので、ついでに迎えにいこうと。4月7日でした。米軍が大統領宮殿を占拠していましたので、街中に米軍がいて、動いている車をはしから撃つ状況でした。

 こちらは車のドアですね。後ろの左側のドア、左ハンドルなので、穴開いているのは全部銃の後ですね。蜂の巣状態ですね。56発撃ち込まれたということです。
 
 このお父さん実は、フセイン政権に批判的だったそうです。サダムの批判をすると秘密警察がすぐにやってきて、一家皆殺しだ。イランーイラク戦争をやって、湾岸戦争をやって、粛清して一体何万人のイラク人を殺したのか。そういうわけで、アメリカがやってくると良くなるに違いないと言っていたそうです。

 そういうお父さんも米軍に撃ち殺されて死んでしまう。息子さんなんかは、1年経ってみて、親父が期待したような社会になったいない。治安がすごく悪い。以前は夜中12時過ぎて歩いても全然問題はなかった。私も歩いていました。戦争前には。治安は良かったです。

 それが今となっては夕方以降歩こうものなら、強盗や誘拐やら大変です。最近もっと酷いようです。それから米軍なんかも空爆するし。また反米武装勢力というのがロケットを打ち込んでくるし。凄く生活は不安である。物価も戦前の3倍になっています。こんなんだったら前の方がましだった。

 民主主義なんか全くなかったけれども、サダムの批判さえしなければ、生活はしやすかったと。だから、こんなんだったら、前のほうがましだった。そういう人が今では殆どかなということですね。

 聞いていて、殆どが「究極の選択」みたいな話になっています。戦争なかったら平和でしたねというのも言わないですね。あまり。戦争だけが人を殺すわけではないので、戦争は論外ですよね。戦争だけが殺すわけではないので。なんていうのか、目の前の戦争の段階で、イラク人は大変なんだと訴えても、現地から見ると、これまでも大変だったということも言われてしまう。

 戦争だけが人権を侵害するのではない。もっと広い目で見ないと、現地の人との意識のずれが出来てしまう。現地の人が戦争を待っていたと言ったらお終いで、それまでになにか出来なかったのかというのじゃないかなと。

講演会終了後、安田純平さんは高知大学生が主催するワークショップに出席されました。そこでも安田純平さんは、情報の重要性を強調されていました。
 一緒に遺体の回収をしているお父さんも、アメリカよくやったと言うんですよね。なんだそれは言ったら、以前は酷かった。これで良くなるだろうと。そういう感覚のずれはありました。政権崩壊直後は、お祭りムードがありました。これで良くなるに違いない。

 戦争は彼らから見ると、地震とか台風みたいなもので、どうしようもないところで勝手に発生して、巻き込まれるんだと。そこでいかに生き残って、肯定的に生きるしかないわけで、政権崩壊した後はすごく歓迎ムードがありました。

 半年も経ちますと、全然復興なんかしないし、あいかわらず空爆なんかもするし、人は沢山死んでいるし、なんなんだと。反米感情がだんだんと広がるというもんですね。
 半年後歓迎していたお父さんがなんていうのかなと会いに行きました。米兵に撃たれて死んでいるんですね。
 朝出勤しようとしとしていたら、そこの地区にイラク兵らしい人間が逃げ込んだということで、表にいる人間を全部はじから殺すんです。そういう訳で近所の人とあわせて5〜6人まとめて死亡したということです。しょせ
 でこちらは6歳の女の子です。9歳ぐらいのお姉ちゃんですね。親戚のうちに居候になっています。イラクの全人口の4割ぐらいが15歳未満です。同年代が多いのですごく元気でやっていますけれど、(お父さんが)、急に死んでしまったので、下の子にはお父さんが死んだことを話はしていないそうです。下の子はお父さんは親戚の家に言っていることになっているそうです。
 お兄さんが2人いまして、居候中なんで学校を辞めて働きはじめたと。将来は建築士とか医師を目指していたらしいのですが。あきらめたそうです。自分は以前はアメリカを歓迎した。だけども親父も死んでしまって、生活も厳しいし、仕事もきついし、今となってはそういう風に思えないと言っていますね。

 歓迎できるのは自分がまず生きている。家族も生きているから言えるわけです。家族もどんどん死んでいるのでそういう人は歓迎できない。

 そういう被害者はどんどん増えていく中で、当然アメリカへの評価も下がっていく。それもすごくわかりやすい。

 
 そんなようなものでして、その後も続いていますね。
 クラスター爆弾ですね。今でもイラクのなかで使っていますね。
 大きなロケットのなかに小さな爆弾が一杯入っています。それが上空でばら撒かれまかれ、広範囲で破壊する。M26ロケット弾のなかにこちらの、M77小爆弾が入っていまして、だいたい直径7〜8センチ。小さな爆弾です。
 これが1個で10センチぐらいの鉄板を破る威力があります。これがこちらのロケット
に644個入っている。それが上空で撒くと、凄く広範囲で、どかん、どかんとやるわけです。

 で、これ銀玉がついてますよね。こちらはばら撒きに失敗して落ちた奴です。見えますよね、蜂の子みたいに。銀玉がついてますので、爆発すると飛び散りささります。

 こちらの少年股間付近が点々が一杯ついていますね。レントゲン写真です。刺さっているんですよ。取れないんです。その爆発する殺す、破壊する一方で、こういった破片が刺さって殺さないまでも、治療も大変で、病院も一杯になる。

 一発で殺してしまうと。後は逃げますよね。もしくは仲間が復讐しますよね。怪我してうなっているので、皆で運ぶしかないですね。戦争中でこういうのを使うと、一発で殺せば、マイナス1ですが、仲間2人で運ぶのでマイナス3になるわけですね。

 殺すよりは、殺さないで苦しめるのが良い。そんななかでいかに苦しみが長く続くかと、一生懸命に考えた爆弾ですよね。まあそういうわけで、病院が一杯になります。病院中が血の臭いとか、膿んでいる臭いがして、凄惨な感じです。

 644発もあるので、1割か2割が不発して残るんですね。そうすると今度は地雷になります。道路ならいいですが、畑とか林に落ちると見えません。そこで爆発して死んだり、怪我したりします。どかんと爆発して殺す部分と、突き刺して怪我させる、後は、不発弾が残ってのちのち殺す。

 しかも不発弾があるので、そこの畑はもう使えない。二重三重に苦しめる爆弾ですね。国連では非人道的な兵器であると、人道小委員会で、決議されまして、アメリカは拒否し、日本は棄権しました。大量破壊兵器があると、(イラク戦争を)始めて、実際はありませんでした。一方で非人道的な兵器を使用していると。今の戦争です。

 なんのこっちゃという戦争です。時間がないのでもう終わります。

 戦争前の八百屋さんです。1年前ですね。結構ものはありました。同じお店。物は近隣から入ります。物価は3倍ぐらいになっています。そうは言いましてもイラクは1990年代から、配給制度がありまして毎月1人頭、小麦9キロ、米3キロ、砂糖1k、お茶、油も出るというがあります。それが今でも続いています。

 そういう関係で基礎食料をみんな持っています。勿論ガスなんかも必要ですし、家賃なかも払わねばならないので、現金収入が必要です。一応飢えて死んでいるのではないのは認識する必要があります。一部の地域では電化製品山積み状態で、携帯なんかも普及しています。

現代人文社刊「囚われのイラク」克明にイラクの市民の様子が書かれています。

 もう近隣から(物資が)バンバン入っていまして、商人はすごく儲かっていますね。あと公務員には給料が昨年の10月以降でていますので、裕福な人は儲かっている。その一方で失業者は凄く出ています。貧富の差が出ている。

 そういうなかで仕事を失って生活が厳しいと言う人が、反米闘争なんかも入っていくので、そうした経済的な事情が、影響をもたらしています。どうして失業するかといいますと国営工場なかを閉鎖しています。

 戦争というものは爆発するだけでなく、すべての制度を破壊するのです。関税がないので、輸入品に負けてしまって、民間企業が潰れる。そういって職を奪われる。
 民主化の一方で自由競争になりました。自由競争になると体力のないイラクの産業は潰れていくと。職を失う。頭にきて反米闘争をやると、テロリストだと言われ、ミサイルをうちこまれてしまう。
 まあそういう流れになっています。グローバル化というのは、そういう関税をとっ払って自由な競争をしましょうということなのですが、こうなるとわかりやすいかな。
 ということです。
 時間がオーバーしましたので、こんなところで、どうもありがとうございました。
(安田純平さん講演会は終了。会場参加者との質疑応答に入ります。  次へ
その6へ続く