住民力・市民力の向上は可能でしょうか?
 今週のゲストはくろしお地域研究所所長の吉田文彦さんです。今日のテーマは「住民力・市民力の向上は可能でしょうか?」でお話を伺います。
 国や県等が財政難になり、地域の住民活動に対する行政側の補助金などの支援措置が次々と打ち切られていたリ、減額されたりしています。地域住民が自分の力で、地域支援の活動が求められているようです。
吉田さんが調査されているなかで、「市民の発意による地域づくり」の実例はあるの でしょうか?事例がありましたら、おかまいない範囲でご紹介下さい。
 段階を問わなければ、いろんな芽は出てきていますし、いろんな事例はあると思います。最初に実際の仕組みとしてまとまった形でご紹介出来ますのは、埼玉県羽生市です。
 背景としましては厳しい財政事情があります。羽生市では市民や企業が行政に変わりまして、道路や公共施設の修繕などの工事を行っています。「協働による」ことですが、協は「協力の協」ですね。働は「働く」ということですね。
 「協働による地域づくり推進事業」を新しく今年度から開始すると聞いています。市のレベルでこのようなことで事業を行うのは全国的にも珍しいとされています。
 若手の職員により構成されるプロジェクト・チームにより企画・立案されたといわれています。財政難による市民生活基盤の遅れの解消と、それに関わる地域コミュニティの再生を兼ね合わて狙いとしている事業です。
 対象としていますのは、排水路や路肩などの整備、公園等の草花や樹木の剪定、他には道路や公共施設の清掃など。市民生活に関わる環境整備事業が組まれています。
 最初に地域の市民が計画発案をしたあとに、市が必要な資材の提供とか、機械器具の貸与をする。ということと合わせて、地元企業に対して、技術や資金の支援を行うことです。地元の市民が労力を提供し、手弁当で事業を完成する。ことなのです。つまり市民^企業ー行政の3者が協力し合う。行政が仲介の役割を果たしながら、協力企業に対しては、市の玄関ホールとか、市のホームページに企業名を掲載することにとりまして、企業の社会貢献活動を市民各位に知らしていくことになります。
 地域で出来ることは、地域の手で。を基本理念で、市民の発意による地域づくりを、行政と企業がサポートする新しい制度として、ひじょうに注目すべき動きであると思います。
吉田文彦さん  これらは厳しい財政状況ということが背景にありました。もともと今の時代は、環境廃棄物行政とか、福祉、教育、文化などいろんな分野で行政だけでは収まりきれない地域課題が沢山あります。そういう意味では財政難だけではなくて、もっと積極的な意味で、地域の人たちの力を活かしていく行政の姿勢が問われていると思います。
 地域の方々は市民。住民として自覚的に、行動していくことがこれからの課題になるのではないでしょうか。
 埼玉の羽生市の「住民自治」話は詳しい説明でよく理解できました。
田舎にいる私達は国や県の補助金がなくなったり、減額されますと「切り捨てられる」という被害者意識が出てくるのですが。そうではないという動きは見えてきているのでしょうか?
 そうですね。今いくつかそういう動きがいくつか出てこようとしています。私達も仕掛けようとしています。
 地域の再生につきましては、高知県もいくつか補助事業をしています。グリーン・ツーリズムとか、集落再生事業とかしています。そのような事業を行政単位より小さな、小学校校区とか言う単位で行動していくところがいくつかあります。
 プランは出来て行動しているところがいくつかあります。これからというところもあります。前半の部分で羽生市の例の話をしました。行政のほうもトイレはつくりました。その維持管理が上手く行かずに、海水浴シーズンにトイレが詰まったり苦情があったりします。
 公園が使えなかったりそういう状況もあります。それも集落単位で「受け皿」をこしらえることもこれからは大事です。行政に考えていただいたいの歯、そういう「受け皿」の執行権だけではなくて、財政的な裏付けをどう渡りをつけるのか。それが大事です。
 これからいろんな技術をもっている人達が、退職する時代に地域で活躍する場をこしらえる必要性があります。
住民参加のワークショップ。地位に関する情報の公開も必要です。
 
 という受け皿をこしらえるべきです。ですからいろんなプランをこしらえる場合には、行政の単位での会議だけでは駄目であると思います。なるだけ手間がかかるでしょうけれども小学校グループの単位で。ワークショップの形式などを活用しまして、みんなで一緒に地域の課題を考えて、もともと行政がカバーしてきたことを地域の側で受け止める。
 その受け皿を組織としてもつくっていくことを働きかけています。これはわたし達が関わっている以外でもそのような動きがありますので、まだまだ羽生市のような協働の形にはなってはいませんが、将来はそうなるでしょう。
 ですから行政側の職員の皆様がしっかり頑張ってほしいと思います。活動を進める場合に気になりますのは、行政の方は担当部署の職員の人たちしか会議には出てきてはいません。これは問題ですね。午後6時以降は行政の人も地域の住民なのですね。みんなで一緒に考えて活動が出来れば、もっと進むのではないかと思います。
グリーンツーリズム(農林水産省)      http://www.maff.go.jp/nouson/chiiki/gt/index.htm