地方公共交通の最大活用で高知のまちづくりを!
 
 筑波大学大学院生の野本靖さんに「けんちゃんのどこでもブログ」に出演していただきました。2007年8月6日に高知シティFMスタジオで収録。放送は9月でした。

 野本靖さんは都市計画をきちんと勉強されています。アメリカの都市計画の理論である「成長管理」や都市における公共の役割、交通のありかた。環境問題など系統的に勉強されています。

 もともとは私のブログへのコメントを頂いたことから交流が始まりました。やがて高知県香南市夜須町の出身と言うことがわかり、私自身ヨットを通じた交流も夜須の人たちとはしていますので、共通の知人も多く、いろんな話を電話でするようになりました。

 1989年猪始まった中学生の為のヨット教室。綿々と活動は引き継がれています。
 「ごめん・なはり線の土佐電鉄への直通運転」「宿毛までの直通運転は可能」だと言われても鉄道にさほど興味がなかったわたしには最初は理解不可能なところがありました。
 
 

しかし以前「けんちゃんのどこでもコミュニティ時代」に「土佐電鉄を愛する会」の浜田光男さんにも出演いただいたことがあり、各地の路面電車と鉄道のあり方を話していただいたことも思い出しながら電話で長時間野本さんとは話したことでした。

 出演いただいたときの浜田光男さん。今回の野本靖さんが出演いただいた番組対応のホームページにおきましても、浜田光男さんの所有されている路面電車はLRT関連の写真を使用させていただきました。

 
 夏休みに高知へ帰ると言うのであれば、ご自身の提案事項を整理し、「マニフェスト」にして橋本大二郎高知県知事に面談したらどうかと提案しました。そうこうするうちに橋本知事が引退し、選挙に出馬しない情報が2007年8月1日に判明しました。

 そうであるならば誰が知事になろうが、県民としての政策を提案するために「県民マニフェスト大会」を開催しようと言うことになりました。野本さんには8月6日に帰省したその日に高知シティFMでの収録しました。

 翌日の7日は「県民マニフェスト大会」の準備会をし、出席していただきパネラーになってもらうことにしました。夕方は提言書を持参して橋本知事に野本さんは面談しました。

 
 8月18日に「県民マニフェスト大会」が開催しました。それなりに反響がありました。報道いただきました新聞4紙に、後で情報交換するために訪問するように助言しますと野本さんは実行しました。土佐電鉄本社へも訪問されたように聞きました。

 今の時点では「絵空事」のお話かもしれません。でも高知県は、人口が海岸部の平地に集中し点在していて、すべて鉄道で結ばれています。高知市の中心部の再開発を考える場合はこの今ある鉄道と路面電車を使わない手段はないはずです。

 「アメリカのポートランド市は確か高速道路計画をとりやめ、市内中心部に路面電車を引きこみネットワーク化し街の再生に成功した。」と野本さんから話を聞きました。それは私自身高知青年会議所時代「都市再開発セミナー」を実施し、高知市のありかたを「快適都市」としていました。そこには地方公共交通の活用という観点が抜かっていました。

 4回にわたって野本靖さんの話を聞かせてもらいました。ラジオの放送とブログには内容を掲載していますが、htmlタイプのホームぺージに整理する必要があると思いました。少し労力がかかりますがまとめてみることにしました。ブログは作成も更新もとても簡単ではありますが、常に新しい情報が上に来て、古い情報が下に来て「埋もれて」しまう傾向がありますし。印刷する時もなんかブログはめんどうですし。そんな訳で従来型のホームページもこしらえることにしました。

 尚挿入写真は「土佐電鉄を愛する会」の浜田光男さんと、野本靖さんに提供いただきました。

 
(参考)野本靖さんのホームページとブログです。

 土佐の高知の鉄道

 土佐の高知の鉄道ブログ

 今日も自転車は走る

 
野本靖さんとの収録の様子
「車を捨てて街を元気に」
 
西村 「けんちゃんのどこでもブログ」今月のゲストは筑波大学大学院生の野本靖さんです。野本さんは香南市夜須町の出身です。大学では都市計画を勉強され、漁村の研究もされています。鉄道や自転車に興味をもたれています。
 ブログ「今日も自転車は走る」やサイト「土佐の高知の鉄道」なども開設されています。自転車の効用や鉄道や路面電車に大変興味を持たれています。

 今回のテーマは「車を捨てて街を元気に」ということでお話を伺います。

 野本さんは「車社会に地方都市が無自覚に依存しすぎると都市が拡散し、
特色のない都市になり衰退する。」「ファースト風土主体のロードサイド店舗は全国何処にもあるし都市としての魅力はない」
と言われています。高知市も野市あたりもそういう街になりつつあるのでしょうか?
 
野本 そうですね。高知でも香南市野市でも幹線道路沿いに、様々な店舗が立ち並んでいます。
巨大ショッピングセンター、ファストフード店、紳士服、サラ金、パチンコ、カラオケ、ファミレス、ラブホテル、レンタルビデオ店、コンビニ、果ては葬儀屋までと、色々あります。全国の、幹線道路を走るとお決まりのようにこの光景が繰り返し出現します。岩手だろうが、熊本だろうが、群馬だろうがどこでも同じような道路と、店舗群が見られます。本当に、ファストフードの一律のシステムのように、同じような光景です。
これでは、本当にここはどこかと思ってしまうくらいです。確認できるのは標識の地名だけですね。
余談ですが、ツーリングでは街中は旧道を走らないと、旅の意味すら失われてしまいます。

 さて、ここ10年ほどでその傾向に拍車がかかりました。中心市街地に活気があった高知市でも、西武が閉店、映画館もすべて閉館するなど中心市街地の衰退傾向が激しくなりました。かわりに、イオンを中心として北環状線沿いは、活況を呈しています。
今までに考えられなかった、ライフスタイルを享受することができるようになりました。

 しかし、それに迎合することは非常に危険です。自動車依存型の都市構造や店舗での照明や冷暖房の過剰使用にによるエネルギーの浪費、環境破壊もさることながら、中心市街地という地域の顔を失いかけています。
歴史のある街は、様々な人がいて、時代の積み重ねがあったりして、固有の文化を持っていました。


香南市野市町中心部。どこにもあるような風景です。
それを一挙に破壊してしまいます。そうなった地方都市は特色がなくなり、観光にも大打撃を与えます。
「街」の喪失は、個人の主体性も、人間的な空間も失います。地域から具体的な個人を消してしまったと言い換えてもいいでしょう。
自動車に乗れない高齢者の方々にとっては、非常に不便になるばかりか孤独感を強めます。
 また、多くが県外資本で、利益の大部分を直接県外に流出させてしまいますので、地域経済は衰退します。
ほとんどがパートやアルバイトであり低賃金の労働者を構造的に抱えてしまいます。安いといって喜んでばかりはいられません。
 そもそも、ロードサイド店はただの商業施設であり、永続的な街ではありません。
恒久的な街をどう構築し育てていくかが、今求められています。

 酒屋や米屋など個人の商店しかなかった頃には、コンビニにヤンキーがたむろし、ケンカすることは考えられませんでした。
地域の精神まで荒廃してしまうのがファスト風土化です。ファスト風土化は「下流社会」で有名な三浦展氏の造語です。

 
西村 野本さんは「中心市街地再開発と言いましても、駐車場を多く作っても街は活性化しない」とも言われています。
 そのあたり具体例で説明をお願いします。
 
野本 よく中心市街地の衰退問題で、「駐車場が足りないからダメなんだ。もっと駐車場を増やすべき。」という意見を聞きます。今でも帯屋町などの商店主はそう考えているようです。しかし、残念ながら駐車場で街は活性化しません。まず、いくら整備したところで郊外並みには自動車のアクセスは便利になりませんし、駐車場の収容能力もかないません。

 それに、道路を作れば作るほど、駐車場を増やせば増やすほど、街中が自動車のための空間に占拠されてしまいます。街並みは歯抜けになり、景観も損なわれます。商店の数自体も減るばかりか、街自体の、魅力を失いかえって衰退も招きかねません。


 一方で、自動車中心から発想転換した都市は、一回寂れた中心市街地を見事に甦らせて います。駐車場の供給ではなく、公共交通を重視し、トラムを整備する、繁華街で完全にクルマを閉め出し歩行者と公共交通のみの通行を許したトランジットモールを採用した都市もあります。ヒューマンスケールの歩いて楽しめる街にすることが、中心市街地活性化の秘訣です。

郊外部に膨大な駐車場を有するイオン。お陰で地方都市の中心商店街は全国何処もシャッター通りになりました。
 
西村 高知は車社会であると思います。しかし個人で車を所有しますと最近はガソリン代も値上がりし、税金や車検代金、保険代や駐車場代など維持費が馬鹿になりません。しかし車に乗れないと不便な高知県であると思いますが。
そのあたりはどう思われますか?
 

野本 クルマは金がかかりすぎます。だから、僕はバカらしくて持とうという気にはなれません。ただ、免許は持っています。
購入費、税金、保険代、車検代、駐車場代、ガソリン代、高速代、とにかくお金がかかります。
 すべてを勘案すると年間50万〜100万程度は、かかっているでしょう。 一回、どこかにぶつけて板金修理するだけでも、十数万かかりますし。

 クルマが趣味という人は、そんな負担も苦にはならないでしょうが、大多数の人は、維持費に汲々としていると思います。現実には、 家計を圧迫要因になっています。本来、個人で持つには、極めてコストパフォーマンスの悪い乗り物です。

 ガソリン代は上がって、ますます維持費はかかりますが、郊外化により、より自動車を走らせなければならない状況を生んでいます。


 これでは、ますます生活は苦しくなりますね。とはいっても、なかなか自動車利用を節減する発想にまで至らないのが現実です。 それだけ、自動車依存症になっているからでしょう。

 
西村 「車を捨てて」とありますが、具体的にはどうなるのでしょうか?旧高知市街地であれば(東は葛島から西は蛍橋付近までであれば、路面電車と路線バス、自転車で殆ど用事はたせるとと思います。
 ただ自転車で走行する場合は、自転車道路がないところや、あっても狭い箇所や自転車やバイクが駐輪していて走りづらい箇所もあります。そうすれば良いと思いますか?
 

野本 自転車は、「軽車両」に属する立派な車両です。そのため道交法では、車道の左側を通行することが原則になっています。
 歩道通行は、例外措置で標識のある歩道に限り、車道側を徐行して走るのがルールになっています。
しかし、それは有名無実で、自転車は歩道を走るのが当たり前になっています。


 それが自転車の本来持ちうるポテンシャルを大いに阻害しています。歩道走行では、舗装が悪くて継ぎはぎだらけだったり、障害物が多い、交差点ごとに段差、勾配があるなど自転車が快適に速く走るには全く適していません。

 それに歩行者にとっては脅威です。自転車にはねられて死亡すると事故も起きています。歩行者が快適に街を歩けるように繁華街の歩道からでも全面通行禁止にしてみては。まずは、アーケード街からでも徹底してやればいいのにと思いますが。常時カメラで録画して、違反者はオビパラやひろめ市場あたりの街頭に、写真を貼って晒すぐらいのことをしたら、 効果あるでしょう。
 ちょっと自動車が怖いかもしれませんが、出来るだけ車道を走ることをオススメします。舗装がしっかりしているので歩道を走るのとは、比べ物にならないくらい快適に走れますし、スピードも出ます。さすがに、郊外のバイパス道路は、厳しいかと思いますが・・・。
ある程度のスピードが出てこそ、自転車が都市交通手段としての地位を得るわけです。

 私事ですが、中学生のころから夜須〜高知の22kmをジャスト1時間で走ることも、自転車の高速化により実現しました。
土電バスより速い、しかもタダ。自転車のポテンシャルの高さをこの頃から認識するようになりました。

 自転車は、多くの人が思っている以上に快適な乗り物で、速度も出せ、20km程度は楽に走れる航続距離を有しています。 もし、自転車通勤するとしたら、半径15km程度までなら十分可能です。自転車ツーキニストを世に広めた疋田智さんはそうおっしゃられています。
それは、はりまや橋を起点にすれば、東は野市、西は日下、高岡あたりまでとかなりの範囲が通勤圏に入ります。
健康維持やガソリン代の節約に大いに有効であるし、地域のあらたな魅力発見もあるかもしれませんよ。

 
西村 野本さんは「車を捨てることが環境対策になる。高知はエコ宣言をすべき」とも言われています。地方生活者に入り込み、生活の一部にまでなっている自動車。捨てることは可能なのでしょうか?
 

野本「ここではクルマがないと生活できない」というのは、決まり文句のように言われています。


 「できない」という言い方が示唆することは、自動車の所有や使用が積極的に求められる行為ではなく、むしろ消極的な意味を含んでいます。かつては、自動車を持つことに大きな夢がありました。しかし、今では、生活必需品となってしまい運転したくなくてもせざるを得ないものになっています。


維持費がかかる、事故など起こしたら面倒だ、ストレスがたまるなど、できればないほうがいい、運転などしたくないという方は、結構いらっしゃると思います。

現状では、各家庭に1台はないとどうしても不便ですが、複数台所有することが果たして合理的なのか考え直してみるべきだと思います。
そのうち1台は、ほとんど3〜8kmほどの通勤にしか使ってないならば、
自転車で十分代替できます。遠くに行く場合でもたまになら公共交通の利用もたいした負担にはなりませんし。
現実に、約6〜7割の自動車での移動は、半径7km以内に収まっていると言われています。近距離は、自転車で対応し、公共交通で不便な遠距離を走る場合に、家族で融通をきかして1台の自動車を使うなどすれば良いでしょう。
自転車の移動能力を再認識することが、大きなカギになりそうです。
それでも必需品を手放すには勇気がいります。しかし、勇気出して手放した人は、なんでこんなものに乗っていたのだろうと不思議に思うとか。確かに、日々の維持費などを考える必要がなくなるので精神的に楽になるわけですね。
 
西村 中心街から車を締め出して(というか上手くコントロールして)活性化した都市の事例がありましたらご紹介くだしさい。
また国内での事例もありますか。
 
野本 様々な事例がありますが、一つだけ紹介します。米国オレゴン州ポートランドの例を簡単に説明します。
1 970年代より、バスを中心街では無料にするなど公共交通活用において先進的な取組みをしてきました。中心街と郊外を結ぶライトレールも20年前に開通し、現在でも路線を拡充中です。その他にも、駐車場の総量規制や公共交通整備とリンクした都市開発などで、自動車の氾濫を上手く抑えることに成功しました。その結果、人々が集い楽しめる都市空間を手に入れました。
 
 そういうこともあって、全米一住みやすい都市だと評価されています。
翻訳家でエッセイストの渡辺葉さんは、ニューヨークを離れポートランドに2年間暮らしていたようですが、
ポートランドを選んだ理由の一つに、「公共交通が発達していてクルマなしでも生活できる」ということが結構好意的に受け止められています。

 国内では、まだ本格的な実施例はありません。高知なら御免町や朝倉の旧道でトランジットモールを設定してもよさそうです。

 
西村 自転車の効用について。自転車を都市生活で上手に活用している事例はありませんか?あればご紹介ください。
 
野本 究極の自転車都市と言えば、ドイツのミュンスターが挙げられます。ここでは徹底しています。
まず、駅前からして洒落た自転車の駐輪場が設けられています。いや、ただの駐輪場ではなく、一見、美術館かと間違うような外観でデザインからして日本の駅前によく見られる駐輪場とは別物です。さらに、レンタサイクル、自転車の修理や洗車のサービス、パーツの販売など「自転車の総合ステーション」と言うべき施設です。

 そして、市内には自転車の通行空間がよく整備されています。かつては、中心街も氾濫する自動車に悩まされていたそうですが、今では、旧城壁内は自動車は原則締め出し、歩行者と自転車、バスなどの公的車両のみしか入れないようになっています。
 自転車の活用の結果、空気がきれいになる、交通事故も減る、渋滞も緩和するなど様々なメリットももたらしました。

 
 ヨーロッパでは、オランダとデンマークが最も自転車活用に取り組んでいます。特に、オランダでは、国土の大部分が干拓地であり地球温暖化に対して危機感をもっています。フランスやイギリスではそれほどでもないようで、ヨーロッパといえどもピンからきりまであります。
さきほど挙げたポートランドも全米で最も自転車交通が進んだ都市です。10年間で、自転車利用が3倍に増えたとか。
 ライトレール車両やバスにも持ち込み可能であるなど自転車を活用する仕組みが整っています。

写真は「土佐電鉄の電車とまちを愛する会」の浜田光男(てるお)さんに提供いただきました。

熊本電鉄の車両は自転車持込が認められています。