生け花の未来について
 今週のゲストは、生け花草悦流家元の猪野伸一さんです。今日のテーマは「生け花の未来ついて」でお話をお聞きします。
猪野さんはフラワーショップ花樹を経営されるかたわら、家元活動や所属する華道協和会の活動もされご多忙な毎日です。
生け花の歴史や、日本人の自然観に根ざしている話をお聞きしました。
お訪ねしますが、今後の生け花はどのようになるのでしょうか?現代は情報化社会と言われています。関係はどうなのでしょうか?
 生け花の未来を述べるのは大変難しいものです。昨日お話しましたフラワーアレンジメントとの関わりを通じて考えてみました。フラワーアレンジメントの活け方。私たち生け花関係者の生け方。こうした垣根は将来的にはなくなると思います。これは日本社会の中で融合化していくと思います。
 ただ生け花界に身を置くものとして、日本人として生け花には長い発展過程があった訳です。
そういったことは常に心に留めながら、精進をしていきたいと思っています。
猪野伸一さん
現在は床の間の無い家も多いようです。生け花はどのようになるのでしょうか?
また最近は密室構造で空調の効いた部屋が多いようです。これは生け花にとって良いことなのでしょうか?
 現在では床の間のない家も多いようですね。花というものはその時々の生活空間であります人々の考え方に応じて発展をしてきました。将来も間違いなくその時々の状況に応じて発展していくものであると思います。
 岡倉天心ではありませんが、花が日本社会からなくなることは、わたしには考えられません。
日本の生け花は四季折々の季節感と、日本人の宗教観により時代の変遷に対応して成長してました。これからの時代に対応する生け花はどうあるべきなおでしょうか?
 岡倉天心さんの言葉の紹介もありましたが、どんな場合も花は滅びないということなのでしょうか?

 はいそうだと思います。禅に「融通無碍」(ゆうずうむげ)という言葉があります。時代や人々の考え方に応じまして、融通無碍に発展をしていくものだと私は思います

 江戸末期や、敗戦後は時代がめまぐるしく変化しました。そのときに、日本の生け花を外国 人が高く評価しました。経済がグローバル化するなかで、生け花はまた新しい活路があるの  ではないでしょうか?
写真は猪野伸一さん提供です。
 既に現時点での日本の生け花の大きな流派は外国に何千何百もの支部を持っています。日々生け花活動をしています。現在の時点でも生け花は充分にグローバル化しています。
 外国人の弟子も居られると思います。生け花に対して日本人とはまた違う心構えはあるので しょうか?
 残念ながらわたしの流には外国人の弟子はいません。仮にいればのお話をさせていただきます。私が日本の生け花を教えるとすれば、言葉のハンディはあるかもしれませんが、今まで述べてきました日本の生け花の成立過程をやはり最初に説明をしたいと思います。そして花に対する日本人の特殊な感情を理解していただきたいと思います。
 そしてそのことによって、彼や彼女達が日本の生け花を通しまして日本文化を学んで母国に帰っていただきます。これは大きな日本を紹介する力になると思います。それは彼ら、彼女らにとってもこの文化を理解することは、母国の文化と対比ができますので、大きな効用があると思います。
 その時点で彼ら、彼女らは立派な国際人になるのではないかと思います。
これからはアジアの時代と言われています。従来はカルチャーとして欧米の人たちが、日本の生け花文化を評価されてきました。最近急激に経済が発展しているアジア諸国ですが、そちらの方に生け花は広がるのでしょうか?
 アジアとの関連といいますと中国との関係は抜きに出来ません、過去におきましても中国の影響を日本が受ける立場でありました。中国は唐物という壷の大生産地です。
 そして16世紀ごろには、中国の「花伝書」が輸入されまして、江戸時代の(日本の)専門用語になりますが、「文人花」という活け方に大きな影響をあたえています。
 ただ現代は社会の体制、経済の体制も違いますので、なかなか日本の生け花がストレートに中国で受け入れられるのはどうかなと思います。

床の間があり、掛け軸があり、花瓶がある。生け花はこういう建築様式の中で発展してきました。

建物内部の条件が変化しても、花をいつくしむ心がある限り、生け花は表現形態を変えながらも存続していくことでしょう。