木質バイオマス地域循環計画が地球を救う  
(佐川町にある木質バイオマス地域循環システムのプラント)
西村 今月の「けんちゃんの今すぐ実行まちづくり」のゲストはNPO土佐の森救援隊で間伐作業をされている中嶋健造さんです。
 今回のテーマは「木質バイオマス地域循環計画が地球を救う」でお話をお聞きします。

 大きな話しになりましたが、この「木質バイオマス」という言葉ですが、最近はあちらこちらで耳にします。中嶋さんたちが提唱し実践している以外にもいろんなところで耳にします。
 ところがそのしくみが異なるようです。

 中嶋さんたちは地域の人たちの「全員参加型」であります。山を所有している人。間伐ボランティの人。地域の個人商店のひと。あるいは女性や子供たちまで関わります。当然企業もです。多くの人にメリットがあり損をする人は誰もいないしくみのようです。

 どうもそうではない。「木質バイオマス」のシステムがあるようにも聞きました。そのあたり本物とまがい物の見分け方はどのあたりにあるのでしょうか?

仁淀川町の木質バイオマス地域循環システム 見事に地域循環になり環境保全に役立っています。
中嶋 見分け方ですか・・。
 木質バイオマス地域循環システムでボトル・ネックになっていましたのは、「林地残材を収集運搬するしくみづくり」でした。大手の林業経営会社や森林組合では林地残材を収集し運搬するコストが引き合わないとされてきました。

 それを克服することは無理ではないかと多くの林業関係者や専門家に言われたものでした。

 ですのであちらこちらで実験はしますが、なかなか上手く稼動しないようです。

 そうしますと林業関係、森林の活用で環境を守ろうということでの補助事業はたくさんあります。目的を違えた形で補助を受けよう。利用しようというようなことがあるのではないか。。

 例えば、関係する団体が設備投資のために、機械を導入することが目的になっている団体などもあるようです。本当はそれは「手段」のはずですが。
 機械を導入するだけでその団体は「得をする」わけですね。

 補助を貰うことが目的になってしまって、導入した機械がうまく機能するシステムをきちんと構築することができていない団体などもあるようです。結構そういう事例を聞きます。

(木質バイオマスペレットを活用したイチゴハウス。熱源と冷房施設に活用されています。)
西村 よく聞きますのは、行政の補助金で「箱物」を建築したら、箱物で大赤字を出してしまったとか。ホテルを建てたものの、お客が来なかった。
 機械を導入したけれども動かなかった(稼動しなかった。)

 そういう事例をイヤと言うほど見聞しています。そういう悪しき事例になるような「木質バイオマス」計画もあるのでしょうか?

 
中嶋 そういうのがこれまでは多かったようではないでしょうか。
 仁淀川町は「どうしてもこの木質バイオマス地域循環システムを成功させる。」という強い意志があります。一致団結しています。やっとここまでたどり着けることが出来ました。

 特に林地残材の収集運搬のしくみを、きちんと稼動させ、無理なくきちんとまわるしくみを構築しつつあります。

 
西村 そのなかで整理したいと思います。
 木質バイオマス地域循環システムが成功する条件をいくつかあげてください。
(間伐材はチップ化されバイオマス・プラントに運ばれてきます。ここで熱源になり木質ペレットに加工されます。)
中嶋 成功する条件を申し上げます。

1)地域住民の全員が参加できるしくみでなければならない。ある特定の団体だけがシステムを担うのではなく地域全体で循環する仕組みでないといけないと思います。地域住民全員を巻き込んでさらに地域の外の住民まで巻き込んでいくような「地域システム」にすべきです。

2)エネルギーを活用する施設や企業をきちんと最初に決めておかないといけません。「エネルギーの地産地消」はとても大事です。


3)木質バイオマス地域循環システムですから、木質バイオマスも循環させますし、地域の経済も循環させます。そういう仕組みをこしらえるべきであると思います。そこにディカップリング政策による地域通貨券などを活用することにより、地域の商店まで参画していただく。

 他CO2の排出権取引により最大限の付加価値をこしらえること。

 その3つの事柄を実行できるシステムが本当の「木質バイオマス地域循環システム」であると私は思います。

間伐して気軽に持ち込めるしくみ。間伐される人たちに励みになるしくみづくりは重要です。
西村 そういえば全然その話と別の話しです。つい50年ほど前は、山間部にも、地方都市にも。大都会にも同程度のお金持ちがいました。山間部は山師と言われ、地方都市には旦那衆がいました。昔は地方都市にも歓楽街があり料亭もありましたし。
 大都会には銀座がありました。それが田舎や地方都市は疲弊し、見る影もありませんね。

 中嶋さんの構想、今成功している仁淀川町を中心とする木質バイオマス地域循環システムは、「昔の夢をもう一度」まではいかないでしょうが、中山間部や地方都市を元気にする方策になりますね。

 格差社会をはてしなく生み出す「新自由主義」とは全く異なるシステムになるでしょうし、日本の環境保全やCO2の削減に大きな役割を果たすと思いますね。今まで放置されていた森林が活用されますから。
 実際に山の持ち主も元気になったという動きはありますか?

 
中嶋 実は木質バイオマス地域循環システムは山林所有者に今までなかった新たな収入源を提供することになっています。
 いままで山の所有者でありながら山に無関心で捨てていた人2人が稼動林業家になると宣言したようです。いままでは休眠林業家でしたし。これは凄いですね
 
西村 それは凄いことではありませんか。木質バイオマス地域循環システムが成功しつつある事例であると思います。
 以前の番組「けんちゃんにどこでもコミュニティ/」に出演いただきましたときに、「焼畑の効用」をお話いただきました。
 間伐と焼畑の実施は山のためにはいいことであるとも言われていました。そのあたりの関連性はどうなのでしょうか?
焼畑の効用が見直されています。
中嶋 焼畑が絶対に必要であるというわけではありません。山に住んでいる方が林業だけで活用するのではなく、山をいろんな形で活用する。それと連携されていくことです。
 林業と焼畑は昔から連携されています。「焼畑林業」という言葉もありますし。セットで実施されていたようです。
 そういうやり方をしていくことも今後の木質バイオマス地域循環システムの発展過程のなかで視野に入れていく必要性がありますね。
 
西村 木質バイオマス地域循環システムと言うものと、今流行しているエコツーリズムグリーンツーリズムという言葉がありますが、これらと連携は可能であると思いますが。
 
中嶋 十分可能です。実際に土佐の森救援隊では、林地残材を収集運搬する作業に都市部から人を呼んで体験していただいています。また実際に林地残材を出した人には地域通貨券を渡しています。

 実は「C材で晩酌を」という事業です。
 ようするにC材と言うのは商品価値のない「ざっとした」(粗末な)材のことです。

 C材を収集運搬をして晩酌代を稼ぎましょう。ということで地域通貨券を渡します。地域通貨券を貰った人はこれを活用していただいて地域内で買い物をしていただく。

 都市の人たちはグリーン・ツーリズムとして来ていただきます。こういうように都市部の人たちとの交流は増やすことは可能です。

 都市と中山間部とのネットワークづくりとは?(中嶋健造さん)

 また都市の人にアルバイトをしていただいて、アルバイト代を地域で使っていただく。いうような面白いグリーツーリズムが現在展開しています。

実際に個人や小規模林業主、間伐ボランティアによるC材(商品にならない間伐材)も持込が増加しています。
西村 木質バイオマス地域循環計画の話を聞いた方からこういうことも言われました。
 「今まで地域で働けない人達が、働ける場が出来るかもしれない。例えば障害があったり、仕事が事情があってできない人たちも働けるようになり雇用の場ができるかもしれない。

 そういう立場のひとたちに希望を与える可能性があるとも言われています。その可能性についてはいかがでしょう?

 
中嶋 大いに可能性はありますね。用材(建築用材木)のように3メートルや4メートルに切る必要はありません。林地残材は手に持てるところまで切って短くして搬出すればいいのです。
 非常に単純な作業であります。でもいい空気のなか、森林のなかで自然と接触しながら作業をするのでたいへん気持ちのいいものです。

 小学生でも実際に作業が出来ました。多少障害があるひとでも仕事としてやれます。新たね雇用をあらゆるところに生むことが可能ではないのでしょうか。

 
西村 さきほど「癒し」の効用があるようにも言われました。森林浴としての。
 そういえば大昔ですがわたしなど小学生の時に「林間学校」があり体験学習として森林体験をしたことがありました。それは木質バイオマス地域循環計画のような間伐体験などではありませんでしたが。

 山道を歩き、植物や樹木を観察し、川で泳いだり、飯ごう炊飯をしたりしました。

 確かに雇用の機会の今までなかった人達の雇用の場の提供にもなりそうですね。またなにかとストレスなどでお疲れになっている都市部の人たちに癒しの効果もあります。
 多様な面がありますね。

森林と関わることで教育方面でも効果はあるようです。
中嶋 森林環境教育として小中学生に体験していただく。グリーンツーリズムとして都市部の人たちに体験いただくことも想定しています。都市部の人達との交流事業などいろんな形ができると思います。

 例えば都市部のサーファーの人達がサーフォンの合間に山で仕事ができる。サーフィンができない時に山へ入る。そういうことが出来るのではないかと思いますね。

 
西村 それは東洋町はうってつけ。木質バイオマス地域循環システムの適地ではありますね。海で波がいつもたつわけではありません。波待ちは結構ありますね。風が吹きすぎますとサーフィンはできませんし。

 私もヨットしていますから海の条件は理解できますね。サーファーは体力がありますから、山へ入り林地残材を収集し運搬することによって木質バイオマス地域循環システムの一翼を担うことになりますね。

 白浜海岸に将来は温浴設備をこしらえたい。という計画も現在海の駅東洋町の仮設店舗の発展形態として東洋町から聞いていますし。その熱源として木質バイオマスを活用したボイラーがあれば、最高ですね。

 参考ブログ記事「充実する海の駅東洋町

 
中嶋 地域に開かれた木質バイオマス地域循環システムであれば、そうした地域外のサーファーの人たちとの交流もまたより深まりますね。決して一部の団体だけが担うという閉ざされたしくみでは発展性がありませんし、地域循環にはなりません。

 それが最終的には「地球環境保全」になるのです。