住宅改造のコツについて
 今週のゲストは福祉住環境コーディネーターで、建築士でもある笹岡和泉さんです。
今日のテーマは「住宅改造のコツについて」でお話を伺います。
 高齢者社会の進展や、自身が障害者になった場合は、自宅の改造が必要です。障害の程度も異なりますし、住宅の様式も個別によって異なっています。
 まず笹岡さんが住宅改造の仕事を依頼された場合は、どのように対応されますか?市民が住宅改造を依頼する場合、お構いない範囲でその手順を教えてください。どこの窓口へ、どのように相談をすれば良いのでしょうか?
 そうですね。介護認定をうけていらっしゃる方でしたら、たいがいケアマネージャーがいます。障害者手帳を持っている人は、障害者福祉センターに専門の担当者がいます。大概その担当の方を通じて住宅改造の依頼がまいります。
 まずその繋がりのない場合は、多いのは高知市の元気いきがい課であるとか、介護保険課とかになると思います。
 私たちのNPOの動きもまだ活発ではありません。障害者福祉センターで出している冊子で「在宅福祉サービスガイド」があります。相談窓口やこういったものがありますよと情報提供いただいています。一般の方から電話をいただき、御宅に伺って相談をする場合があります。NPOのほうではコーディネート業務は、自分達の街を良くしたいという思いのがありますから、無償でアドバイスをさせていただいています。決まっている知り合いの大工さんに、工務店さんに「通訳」として繋がせていただいてお話をします。
 全くどこに頼ん良いかわからない事例もありますので、今後は信頼できる施工業者さんのネットワークをつくりたいなと思っています。

トイレの改修前

トイレの改修後
 住宅改造が難しいのは、多くの家屋で建設時の設計図面が残っていないことでしょう。どういう材料を使用して、どういう工法で建てられてのか。手摺をこの位置につけたら良いと思い、壁に穴をあけますと大事になるなんていうこともあるのではないでしょうか?
 そうですね。風呂場のタイルの壁に手摺をつけようとしたら、水道管を破ってしまったとか。壁を取り除いたら、下地がなくてぼろぼろだったとか。床下が腐っていたとか。
工事をしてみないとわからない部分はありますね。
 建築でも新築時と改造時のやりかた、知識も違いますよね。また福祉の観点で住宅改造しますので、異なった観点からの知識も要求されますね。
 そうですね。今までの大工さん、工務店さんの知識でやってきたことを「覆す」ようなことをこちらが依頼する場合もあります。敷居を削りますとか。手摺を壁につける場合も、下地があるところへ付けています。本当に利用者に適切な高さにつけられていない場合もありました。
 所定の位置に取り付けをお願いします。と言いましたら「そんなところへは取り付け出来ない」と言われたりしたこともありました。この手摺は、そうしてもこの位置に取り付けていただきたいので、その場合は下地を入れて取り付けてください。とお話したりします。
家の段差を無くす方法はいろいろあるようです。
 新築よりリフォーム(改修工事)が難しいのは、お住まいになっている人がいますことですね。在宅でいらっしゃるかたは女性が多いですし。会話の苦手な職人さんもいますね。 まして福祉の要素も入るわけですから、お互い大変でありますね。
 最初は意見の違いがありました。「どうしてもお願いします」と言いましたら、大工さんも工夫をされて手摺などを取り付けてくれるようになりました。やはり信頼関係だと思います。
 高知市内の住宅環境はと言いますと、持ち家率が低く、賃貸アパートなどに居住されている方が多いようです。共同住宅の場合は改造は可能なのでしょうか?また賃貸アパートの場合は家主の協力が必要ですが、現状はどうなのでしょうか?
 私も改修に関わるのかで、アパートに住んでいる方の相談もありました。介護保険の住宅改造の制度を使用するにも、家主の許可が要ります。たいていの家主の方は協力的です。
 手摺の取り付けや、トイレを和式から洋式にしたり、たいていの家主の方がOKしていたでけます。もちろん出るときは現状復帰が原則ですが。
 最近家を建てる時、「二世帯共同住宅」とか「3世代同居住宅」なんかがありますね。その場合、施主の意識とかは昔と異なり変わって来たように思われますか?
 そうですね。2世帯、3世帯が一緒に暮らすとなりますと、高齢者の人が傷害を持つようになったりします。夫婦や子供たちで生活様式が異なります。どうしてもおばあちゃんが車椅子やから我慢しなさい。という風におばあちゃんの生活を優先になるでしょうが、障害当事者だけの改修を優先させますと、後々心のしこりが残ります。気兼ねしてしまいます。他の人が「使い勝手が悪い」という事態も生じます。
 みんなが住み家なので1人1人がどういう風に生活するか、どうしたら生活しやすいかの意見を取り入れて、みんなの意見を聞いて配慮します。子供さんがその部屋を頻繁にしようするのいであれば、他の部屋に車椅子の通路を設けるとか。みんなが使いやすい工夫を配慮したいことになります。それはまちづくりも同じではないかと思います。
 まちづくりの話も出ました。住宅だけではなく商店街や飲食店なども改造や協力も必要であると思いますが。そのあたりの動きや、実績はどのようになっていますか?
 これからの課題であると思います。1月に高知県政策総合研究所の「ユニバーサルデザイン・シンポジウム」に出席させていただきました。そこで意見を言わしたりしていただきました。
 「よさこいピック」の時は盛り上がって「街のバリヤフリー」への取り組みはソフトもハードも活発でした。今は少し下火になっています。そういうところで、大掛かりな障害者や高齢者のための改修をというのは言われますが、私は少し意見が異なります。
 家もそうですが「障害者のため」「高齢者のため」に使いやすい街を作るのではなくて、街に来られる買い物客も商店主も使い勝手の良い、商売しやすい街をこしらえることでしょう。
 ベンチがなくて、街を歩いても座るところがないからと言いますと、じゃあ椅子こしらえてそこへ設置しればどうかと言いましたら、商店主の方は、そんな何箇所も椅子を置かれたら商売が出来ん。と言われました。みんなの意見を聞くと、じゃあ折りたたみの椅子を構えたり、声がけして椅子を貸してくださいと言えば、快く貸していただく。障害に対する理解を広めていくことがあります。障害者や高齢者のためだけに大掛かりな工事を進めるだけが方法ではないと思います。

 

高知県政策総合研究所は数年前から「ユニバーサルデザイン」テーマに研究活動をしています。 今年1月16日のシンポジウムに笹岡和泉さんもパネラーとして登壇されました。
 はりまや橋サロンに、OPEN HEARTの宇賀さんたちが気軽に出かけれるようになったのも、商店街の人達やサロンに集う人達の気遣いや気持ちもありました。どうしても「出不精に」なりがちです。自分達だけで孤立しがちですが、あそこはそうではない。
 いろんな人達との出会いや交流が大切なのです。
  はりまや橋サロンに誘い出していただいて出て行かれると、こんなところが坂なんやとか、この店は入り口が入れんねとかみんなが宇賀さんたちの動作を見て、どうやって見ているか、感じ取っていただいて、次来た時は直していただくとか。そういうことで自分達のことをわかってくれた人が出始めたので、いろんな人が感じていただくことは良い事ですね。

毎週金曜日に開催される「はりまや橋商店街サロン」土佐備長炭の加工品販売や昼食サロンにも参加されています。

 
 確かに金曜のはりまや橋商店街には、車椅子で来られる人も増えましたね。そういう流れをつくらないかんということを商店街も気がついてきたのだと思いますね