ユニバーサルデザインは推進されているか?
 
 今週のゲストは福祉住環境コーディネーターで、建築士の笹岡和泉さんです。今日のテーマは「ユニバーサルデザインは推進されているか?」でお話を伺います。
 2004年1月16日に高知県政策総合研究所は、「これからの都市と観光」というテーマで第5回高知県ユニバーサルデザインシンポジウムが開催いたしました。笹岡和泉さんもパネラーとして参加されました。
 高知県政策総合研究所はここ数年「ユニバーサルデザイン」の推進がテーマになって
います。シンポジウムの前後にも関係者と話しをされたと思いますが、高知県ではユ  ニバーサルデザインは進展したと思われますか?
 そうですね。「よさこいピック」(障害者スポーツ大会)がきっかけで、取り組みが盛んにされるようになりました。それをきっかけにして障害をもたれている人が街中へどんどん出てくるようになりました。
 よさこいピックの時には、ハード面の改装だけでなく、ソフト面でも、聴覚障害者や視覚障害者や車椅子の方に対してどういった対応をするのか。街ぐるみで勉強したように聞きました。今はちょっと少し下火でしょうか。やはりこうしたことも継続していけば良いのかなと思います。
 やはり大型のスーパーなんかは商品の棚が少し低くなったり、入り口がフラット(平滑に)なっているとか、ユニバーサルデザインというのが、凄く広まりました。ビジネスの中でもサービスの一環として少しづつは浸透しているのかなと思います。

2002年に開催された「よさこいピック」(障害者スポーツ大会)高知県民ぐるみのサポート活動が展開されました。

高知空港に選手団を迎える女子学生たちです。

 介護保険制度も2000年4月にスタートしています。その前後からユニバーサルデザインへの取り組みを高知県政策総合研究所はされているとは思います。大きな意味で街も商業店舗なども変わって来たのだと思いますね。
 そうですね。トイレにしても、高齢の人も、一般の方で妊婦の方でも行きやすい多目的なトイレも大きい店舗であれば必ずあるようになりました。
 通路もフラットなところも増えていますし。
 あと「交通バリヤフリー法」も施行されています。低床式のバスや路面電車なんかも現れました。電停なども改良されましたね。
熊本市の低床式路面電車 LRTです。
土佐電鉄の路面電車 ハートラム

 前は危ないところがたくさんありましたが、少しづつ改善されていますね。
 でもユニバーサルデザインの推進という立場からしますとまだまだ改造度とか、人々の意識のなかの壁とかバリヤなどがあり、進展はまだまだなのでしょうか?

 そうですね。費用をかけて街を改善する必要な部分はあるとは思います。人と人との繋がりで声を掛け合って、段差があって車椅子が駆け上がれなかったら、すっと手を差し伸べていけるようになったりとか。棚にものを取ろうとして届かなかったら、声をかけたら取っていただけるとか。
 視覚障害の方で困っている人がいたら、誘導してあげるとか。やはり皆さんなかなか出来ないことだと思います。障害に対して知らないから、どうしてあげていいのか知らない部分があります。
 やはりお互いが、お互いのことを知ることで、声がかけやすくなり、「これを取って」とか、「ちょっと助けて」とかが言える様な関係をつくっていくことだと思います。そうしたことで高知の街が暖かくなり、そうした部分で私たちも出来ることがあればと思います。
 ユニバーサルデザインと言いますと、どうしても工業デザイン的になります。ペットボトルのキャップ蓋にぎざぎざを入れるとか、規格を統一するなどの話しになりがちです。大事な話しですが、高知には工業力が強くないから、今ひとつピンと来ません。
 私たちのレベルで出来るようなユニバーサルデザイン。あるいは笹岡さんがご存知の先進事例などがあれば、ご紹介下さい。
そうですね、私自身が行ったことはありませんので、聞いた話でいいなと思いましたのは、
山形県の飯豊町です。建築士を「リフォームヘルパー」として介護の現場に関わらせています。秋田県の鷹栖町で、北欧のデンマークをモデルに取り組んでいるような事例があるようです。
 私自身がいいなと思っているのは、大阪の豊中市にあるNPO法人「ユニバーサルデザイン推進協会」です。私はその「高知窓口」という形で活動をしています。
 「豊中未来会議」という組織があります。そこではNPOも行政も市民も同じ立場で一つのテーブルに座って、自分達の街を良くしよう、本気で変えていこうという会議体です。
 そこではいろんな立場が違いがあります。子育て、商店街、介護、行政の立場、など意見はあると思います。でもやはり「良い街にしたい」というのは同じ思いです。
 そのいろんな立場がある。価値観があることは一緒にどうしたらいいかという取り組みをしています。これは素晴らしいと思いました。
 それも豊中市のホームページで情報を一般に公開されています。会議をするたびに情報を流しています。参考になるなと思いました。「ユニバーサルデザインシンポジウム」でも橋本知事が「そういったいろんな価値観をふまえて議論はすることは大切ですが、なかなかうまく行っている前例はない。」と話されていました。豊中市未来会議はうまく行っています。数年前から準備段階から立ち上げて議論を積み上げてきたようです。昨年の12月に第一回の会議を始まりました。わたしも思わずこうした「思い」に感動しました。会議を大阪まで聞きに行ったりしました。
武川忠晴さんが推奨されている「ユニバーサルデザインシール」です。

 立場が違えば、普通は対立したりしますね。言っている事はわかるけれども、まとまらないのがよくある事例です。そこをうまく「コーディネート」する人が豊中市にはいたのでしょうか?
 そうですね。行政やNPOなどとの協働関係もうまく行っているから、出来るんもかなと思います。
 言うだけ言うてあとは知らんのではないようですね。信頼関係が行政と諸団体の皆さん方にあるようですね。
 同じ目線でみんなが話し合える場があります。キャッチフレーズが「変えようみんなで。変わろう本気で!」と言うテーマだったので、良いなと思いまして今でもその動向に注目しています。

低床式バスは最近普及してきています。

交通バリヤフリー法の効果もありました。