ユニバーサルな暮らしについて
  今週のゲストは杉本久典さんです。杉本さんは農業関係の技術者で高知県庁に勤務されています。今日のテーマは「ユニバーサルな暮らしについて」です。
 杉本さんはご自身のblog「身の回り新聞」のことで、高知市市民総合プラザかるぽーとのエレベーターや駐車場の不便さをコメントされていました。高知県総合政策研究所は数年前から「ユニバーサルデザインによる都市づくり」を提唱していますが・・。
高知県内の施設などは、バリヤフリー化が進展しているのでしょうか?また目標設定などはされているのでしょうか?
 自分のブログの名前のとおり、身のまわりのことしか知らないのですね。
うちの娘たちが全介助が必要とは言え、20キロ弱しかありませんから、いまのところ抱っこしてしまうことでバリヤをこえてしまいます。多くの情報は持っていませんが、
 新しくできた建物、施設など、例えば、イオン高知などはよく考えてつくられていると思います。車椅子の人たちにも逆使い勝手がよいので、養護学校の仲間なども休みはいつもイオン高知、学校の校外活動はイオン高知みたいになってるようです。
 夫婦で食べ歩きが好きなので、新しいお店ができるとよく行きますが、最近のお店は最初からスロープがついていてトイレも障害者用のところが増えているように思います。
 一方で、最近出来た大きな施設で、当然、バリヤフリーというかユニバーサルデザイ的な発想でつくられたと思っていた「かるぽーと」はそうでもなくて、ブログに書いたときも賛同のコメントをいただきました。
お一人は、松尾前市長にかるぽーとのことで質問したら、「あれは各分野の方に集まってもらって、ワークショップでああなったんですよ」ということだった。そのなかには障害者はいなかったのかなというご意見。
 また、子供さんがダンスをやっていて、それこそ、東京など高知以外の舞台、公演会場などもよくご存じの方なんですが、かるぽーとのつくりは利用者にとって本当にやさしくないとコメントされます。一方で県立美術館ホールは駐車場からのルートを含め、観客も舞台にたつほうも、非常に使いやすいとのことです。
高知市にある文化施設「かるぽーと」。利用者にとっては「使い勝手が良い」施設ではないようです。
 この春になくなってしまった県政策総研(高知県政策総合研究所)ではたしかにユニバーサルデザインを早くから提唱し99年からシンポジウムを何回か開催して、かなりすすんだ内容、提言をされているように思いますが、具体的な動きについは、まだまだというのが実感です。

 車椅子スロープとか障害者用トイレの整備やそれらに関する情報化というのはかなり進んできていて、県では、「優MAP(障害者のための高知県ガイドマップ)」を作ってますし、高知市は「高知市障害者ガイドマップ」を作ってます。民間でもたとえば福祉機器などを販売する会社が自社のHPにかなり詳しい情報を載せたりしています。高知市のものは市のHPから見ることができます。
 本格的な地図情報システムと連動した立派なものですがややデータが古いようです。県はもっと古い。こういったものは常に更新されていないと意味がないように思いますが、財政難が影響しているのでしょうね。それと高知市の障害者マップサイトは使う人には優しくないです。障害のある方はもっと使いづらいはずです。

 高知県は平成9年に「高知県ひとにやさしいまちづくり条例」を定めて、公共的施設を、障害者や高齢者などが安全で快適に利用できるものとするための県整備基準をつくってますね。既存施設には整備・改善に努めることを求め、平成10年からは一定規模等以上の公共的施設の新・改築にあたり事前・完成後の届出が必要となってます。
 僕に感じでは啓発や法的な環境整備は進みつつあり、具体策はこれからに期待したといったところです。
 また、重要なことは「バリヤフリーとユニバーサルデザイン」をいっしょにしないことだと思います。
 一般には「既存のものにスロープや手すりつけたり、グレーティングの目を細かくして、車椅子が通れるようにするがバリヤフリー」みたいな捉え方ではないでしょうか。 今あるものの基本的な構造、デザインはそのままにオプションで障害者用のものをくっつける、これは基本的には健常者主体のものの考え方であると思います。
 よく例に出されますが、バスや電車に車椅子用のリフトをつけるのではなくて、最初から床が低くて、健常者も車椅子の人も、ひざの弱ったお年よりも同じ乗車口から乗り降りできる車両に切り替えていくことが大事だと思っています。政策総研が早くから言っていたユニバーサルデザインによるまちづくりですね。
低床式のバス
低床式の路面電車「ハートラム」
 移動交通手段はいかがでしょうか?そのほうが問題のように思われますが・・。
 そのとおりですね。うちなどは私たちが車に乗りますし、子どもも小さいので一人で抱えて乗り降りさせられるくらいの体重ですから今のところなんとかなってます。大きなお子さんや大人の障害者の方はは大変です。
例えば最近、車椅子でそのまま乗れる福祉タクシーを見かけるようになりました。話を聞きますと、どんどん増えてきてるという状況ではないと聞きます。
 一方で有償ボランティアNPO組織が、病院や施設などへの送り迎えなどのサービスをやってます。うちも週に一回ですが、この移送サービスを使ってます。小学4年生の次女が半ドンのとき、このときは、いつも放課後お世話になっている高須の東部福祉センターまでスクールバスが行きません。桟橋まではきますので、ここから、高須まで「さわやか高知」に登録されている有償ボランティアのかたが送ってくれてます。
 また、電動車いすを使っている長女の同級生は同じサービスを利用して、ショッピングに行ったり、東宝シネマで映画を見たりと生活の場を広げていますね。
 話を聞きますとそのシネマは車椅子用の席があります。真ん中の最前列で、大変首が疲れるそうです。ありがたいのですが・・と言われました。
 NPO法人が運営する有償の移動サービスの車。車椅子での乗降が可能になっています。
 「特別扱い」はなるべくされたくはありません。「障害を持っているから。リフトに乗せてあげる」「障害を持っているから真中で映画を見せてあげる。」という特別あつかいされることで、障害者も家族も精神的な負担がかかります。「自分らは違うのだ」と感じています。
 
 うちは夫婦共働きで、両親も高齢ですのであてには出来ません。小さな障害児を全く知らない人にたった30分足らずとはいえ、最初は見も知らぬボランティアの人に車で送ってもらうことに抵抗があったのです。今まで特にトラブルもありません。
 一般に重度障害児の場合、お母さんが仕事もやめて、つきっきりの場合が多いです。移動は家族というのが多いと思います。親の負担軽減とたまにはリフレッシュのために、こういうサービスを積極的に利用するのも良いと思います。サービスを提供する側もいろんなニーズに答えて、逆サービスを充実させていけば、広がっていくと思います。
 以前番組に出演いただきましたOPEN HEARTの宇賀恵子さんたちは、備長炭の加工品の販売に加え、プラスみらいの製造したお弁当やパンの移動販売にも挑戦しています。「デーサービスより面白い」と子供さんも言われています。障害を持つ人 たちとのネットワークづくりとしては新しい試みであると思いますが・・。
 こういう活動の実態については、子供が小さいこともあってまだまだ不勉強ですし、実践というところまでは行っていませんが、最近、いろんな動きが出てきているようです。若草養護学校の関連でいえば、他にWAOクラブというやはり卒業生、在校生含めた保護者が中心に活動している組織があります。
 一口に障害児、者と言っても状態がホントに一人一人ちがいますから、ニーズもちがうわけで、それに保護者の家庭環境、経済状況もちがう。障害が重度重複化している若草養護の場合ですと、卒業後、進学、就職できるお子さんはごく少数で、福祉作業所にいける子も少ないです。ほとんどがデイサービスなどを利用しながら、基本的には家族と一緒にすごして行くしかないわけです。
 ですから、障害児を持つ親の最大の関心事は卒業後の居場所づくりです。そして、この子を残して先には死ねないという思いが必ずあります。宇賀さんたちは自分たちで資金づくりもしながら、理想的な子供たちの暮らす場をつくろうとしています。WAOクラブは共同保育的なこともしながら、署名活動などを活発に行い、行政等に働きかけをしています。今度、国立病院で医療的ケアの必要な重度の方も受け入れるデイサービスがはじまるとのことですが一定の成果があらわれきていると思います。
ワークスみらい高知が経営する喫茶cafe&lunchげんき
ワークスみらいプラスが運営する食品加工工場
 皆さんの共通していることは、何でも行政や既存の福祉施設にこれやって、あれやってとお願いばかりするのではなく、まず、自分たちでも出来ることからやってみよう、頑張ってもダメなところは行政などにお願いもしていくというスタンスだと思います。このような保護者、もちろん障害をもつ本人それに「ワークスみらい高知」のようなNP0や行政がさらにつながっていけば、状況は必ずよくなると信じています。
関連するホームページです

身の回り新聞            http://mangrove.cocolog-nifty.com/oopa/
ユニバーサルデザインシール     http://www.nc-21.co.jp/hoeru/universal1.html
 高知県政策総合研究所はここ数年「ユニバーサルデザイン」への取り組みをされていました。注目される事例だっただけに廃止されたのはザンネンです。
人にやさしい建築・住宅推進協議会    http://www.jaeic.or.jp/hyk/index.htm

バリヤフリーマップがのってます。         http://www.cocorosy.com/

内閣府のHP。バリヤフリーの項には情報満載です。 http://www.cao.go.jp/