情報格差を埋める方法は?
 今週のゲストは高知工科大学工学部(フロンティア工学コース)大学院生の石井勇太さんです。今日のテーマは「情報格差を埋める方法は?」でお話しを伺います。
 ブロードバンドの時代とは言いましても高知県のIT事情は進んでいるとはとても言えません。郡部へ行けば、未だにISDN回線やダイアルアップ回線があるようなのですが・・。今後その「情報格差」は縮小するのでしょうか?
石井さんはJAしまんと地域振興班のホームページなども作成されています。
その地域のインターネット事情はどんなものなのでしょうか?

 JAしまんとさんのホームページを作成した経緯をお話します。JAしまんとが主催されている「これが仁井田米応援団」があります。もうひとつ「大豆トラスト」というものもあります。
 その2つの事業に昨年度参加していました。地域の人たちに話を聞きたいと思い、話を聞きました。「今は新聞の人にお願いして広告を出しています。ゆくゆくはインターネットで自分達の情報を発信したい。」というものでした。


 それら2つの事業もそうですが、高知県にはあまり認知されていない事業やイベントといった物がたくさんあります。例えば新聞の地域欄である地域でこんなイベントがありましたという記事があって、初めてその開催を知ったという事はよくあると思います。
 自分でなにかお役に立てることがあればということで、ホームページを作成させていただきました。


 地域におけるインターネットを用いた情報配信はまだ始まったばかりです。都市部では当たり前になった事が、今地方部にまで広がろうとしています。JAしまんとが存在する窪川町、そして幡多地域もそういった活動が始まったばかりの状態だと思います。

石井勇太さん
 JAしまんとのホームページを作成され、「これど仁井田米」「大豆トラスト」ですがそのページですね。地域の人たちは、ホームページを作成した経験があったのでしょうか?それとも詳しい人がいない状態で石井さんが作成され、指導されたのでしょうか?

 JAしまんとのホームページを作成され、「これど仁井田米」「大豆トラスト」ですがそのページですね。地域の人たちは、ホームページを作成した経験があったのでしょうか?それとも詳しい人がいない状態で石井さんが作成され、指導されたのでしょうか?

 ホームページ作成経験はおそらくなかったのではないかと思います。昔は業者任せでホームページをつくらていたこともあったのでしょう。
 職員の人達が自分で更新できる仕組みを考えましてこしらえました。具体的には携帯電話のメール機能を用いてすべての更新が出来るようにしました。
 例えば「これど仁井田米」という事業がありますが、イベントで撮影した写真をその場でリアルタイムで更新する。今日は仕事にいけなかった人もすぐにホームページを見て、「こんなことをしているのか」と見ていただくもの。
 できるだけ簡単なものにして、ホームページのツールを作成しました。


石井勇太さんが作成されたJAしまんと地域振興班のホームページ

http://www.kochistyle.com/40010/?

その昔(2001年ごろ)、インターネット中継すると言えば、莫大な費用と労力がかかりました。インパクなどは大変だったそうですね。
 技術革新もありますが、ソフトウエア的にも、携帯電話にカメラ機能や、ビデオ機能もついています。そういう意味で自分達の身近なものとして、IT技術が入り込んでいることは素晴らしいことであると思います。
 写真だけでなく、携帯電話で撮ったビデオを送信することも出来ますね。美しい画像でなくても臨場感溢れる画像の配信は出来ると思います。
 そういうものを地域から発信できることはとても素晴らしいことで、僕たちはエンジニアの卵である学生達が地域に入り、またち地域のかたも「こんなことができないだろうか」と学生達に上手く伝えるような関係も必要ですね。
地域のリーダーである首長や自治体議員の皆さんはこうした「情報化」には関心がないのでしょうか?

 これからは情報化社会になりますので、全く理解はないということはありえません。高知県でも沢山の市町村や、団体でホームページを持たれています。ホームページで利益を得ようとしたり、利益が金銭的なものであったり、認知度や集客であったりしますと、ホームページはなかなか硬化が現れにくいものです。
 サーバーの管理費や、専門の人員の配置や、更新も頻繁にしなければなりません。そうしなければ沢山の人は見に来てくれません。つまり「信頼度の低い情報には人は集まりません。」
 信頼性を上げようと思えば、収穫の上がらない状態でも継続することが必要です。今高齢化社会と言われています。市町村合併や、医療・介護問題など沢山の問題がかかえている市町村には役割を求めるには難しいのではないかと思います。
 情報格差というよりも、情報技術の素晴らしさが伝わっていないのが問題であると思います。インターネットは世界に繋がっています。世界中に情報を発信できます。
 新聞や雑誌に広告を出すより低コストでできる場合があります。自分達でやればコストダウンもできます。広告媒体では出来ない映像コンテンツの発信もできます。「自由度」が格段にできます。
 そういうことは認識はされてはいますが、自分達の街にそれを持ってきたときに何が出来るのか。どういう効果があるのか。どういう利益があるのかということが、地域の人にうまく伝わっていないことがあります。更に手法を知っていましても使う人材がいない。人材が地域に行かない理由になります。
 地域のなかからの要求がなかなか出てきません。
 私なども自分で会社のホームページを自分で作成し、自分で更新しています。その場合、検索エンジンでも上に来ていまして、アクセスログ解析でもいろんな人が見に来てくれています。アクセス数も増えました。でもそれが注文にはなかなか繋がりません。
 お店の前は沢山人が通り、お店の中にも来ます。でもそれが購買に繋がりません。それがどうしてなのか誰も教えてくれませんね。
 ホームページもblogもすぐには反応は出にくいものです。ただホームページ上で商売をされ、成功されている人にも沢山会いました。「そこでやめるか続けるか」であると思います。インターネット上で情報配信をすることで何かしらの利益を得ようとする場合、定期的にアクセスしてくれる人を増やし、信頼を獲得していくまでに、粘り強く新しく質の高い情報を配信する事が必要となります。

 高知県のは沢山のコンテンツがあると思います。プロモーションとか,マーケチングでかなりうまく行っていませんね。またkochistyale.comというホームページのなかで、「まちづくりプロジェクト 「KICK」 開始 !」とありますが、具体的に何をされているのでしょうか?
 
 お恥ずかしいですが、具体的に示せることはまだできていません。ただこの考えは今の自分の活動の指針になっています。元は昨年度まで開催されていた高知県主催ヤングベンチャーコンテスト(龍馬発掘大作戦)で提案したものがベースとなっているのですが、実際に高知県の人々、文化、自然に触れる中で、考えが変わってきました。
 以前会った方から「ビジネスプランは常に環境に合わせて変化すべき。」という言葉を頂きました。前は自分が先頭に立って何でもやる事が必要なんだと考えていたのですが、様々な経験の中で自分は他人のサポートが一番合っていると感じるようになりました。
提案した事は形がどうであれ実現させていきたいと思います。このプロジェクトは何かチャレンジしている人に対して、自分の持つ能力を活かしてのサポートや、必要としている人材のマッチング等を通して今も続けられています。もちろん、これからも最適な形を探していきます。
高知の地域各所には伝統的な祭りも保存されています。

地域活動において石井さんが果たす役割は,なんであるとご自身では考えら れますか?
 情報システム工学を専攻するものとして、高知県という地域に果たせる事はたくさんあると思います。地域情報をブログで配信していくというのも一つの地域への貢献だとは思いますが、『誰もが簡単に利活用できる』情報基盤を構築する事が、私の大学院で行う研究での目標です。
 ここでいう情報基盤とは、機械的なものではなくブログサービスのようなものです。ブログはとても優れたツールだと思いますが、操作性や情報の取り扱いにはまだまだ課題があります。第1回目に取り上げられたXoopsも同じです。私の地域社会に対するアプローチとしては、地域社会に特化したサービスを提供することで、誰もが扱いやすい情報配信サービスを構築していくことです。ちなみにここで言う地域社会とは、いわゆる田舎だけではありません。その結果、地域に住む方々が自立的に魅力的なコンテンツを他の地域と配信・共有できるようになれば、これからの情報社会でも高知県は対応できると思います。
 地域の人たちはblogには関心がないのでしょうか?例えばその地域の住民全員が、1人1人blogを作成し、自分の事や、地域のことで情報を発信すれば大変な「情報量になる」と思いますが、そのあたりの試みは現在されていないのでしょうか?
 住民全員が1つずつブログをという例は無いと思います。現在の主流は1つのブログを複数の記者、つまり複数の住民が行うという方法です。これなら管理が楽ですし、なにより情報が集約され外部からのアクセスを多く見込むことが出来ます。
 例えば、ある地域に100人いるとして、100個のブログを毎日読みに行くというのは読み手に対して多大な付加を掛けてしまうでしょう。しかし、その方式は欠点ばかりではありません。その手法については現在研究で検討をしています。
 さきほどの質問に関連しまして「四万十川」流域の人達が、blogやxoopsで気軽に情報発信すれば、今でも「四万十川」は有名ですのでより地域の情報発信力がつくのではないのでしょうか?
 ブログやxoopsを『気軽』に扱えるようになるまでが大変ですね。第1回目の話題にあったように情報リテラシを学んで頂かなくてはなりません。また、仕事や学校もありますし、更新を負担に思わせないような『仕掛け』も必要になるでしょう。